村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

neon-light-363609_1920


吉村洋文大阪府知事にはびっくりです。
うがい薬を使ってうがいをすることで「コロナの陽性者が減っていく。薬事法上、効能を言うわけにはいきませんが、コロナに効くのではないかという研究が出ました」「このコロナに、ある意味、打ち勝てるんじゃないかというふうにすら思っています」と大々的に発表したからです。

殺菌作用のあるうがい薬で何度もうがいをすれば、口中のウイルスが減少するのは当然です。しかし、それだけで「コロナに効く」とか「コロナに打ち勝てる」とはいえないはずです。

吉村知事の発表でうがい薬が店頭からなくなり、ヨード系のうがい薬を多用すると甲状腺機能障害の危険性があると医療関係者から指摘されるなど、世の中が混乱しました。

吉村知事はなぜこんな愚かな発表をしたのでしょうか。
私なりに調べてみました。


このうがい薬による“実験”をしたのは、大阪はびきの医療センターの松山晃文次世代創薬創生センター長です。被験者は41人で、論文にもなっておらず、ずさんな実験だと批判されています。

その実験というのは、41人を2群に分け、1日4回、ポビドンヨードを含むうがい薬でうがいを毎日実施した群と、うがいを実施しなかった群を比較し、毎日、唾液によるPCR検査をおこなったところ、4日目にはうがいを実施しなかった群の陽性率は40%だったのに対して、ポビドンヨードを含むうがい薬を使った群は陽性率が9.5%に低下したというものです。
しかし、この実験ではポビドンヨードを含むうがい薬の効果は立証されません。水うがいでも同じ効果が出るかもしれないからです。

松山センター長もそのことは認めて、『「うがい薬でコロナウイルス減少?」 大阪はびきの医療センター・研究責任者に直撃』という記事で次のように語っています。

「水うがい」「塩うがい」でも口の中のウイルスの濃度を減らすことができると思います。
ポビドンヨードだとのどを痛めたり、副作用がありますけれども、「水うがい」「塩うがい」は日本古来からありますし、お勧めできると思います。
   ※
1回のうがいでは数時間しか効果が持ちません。2時間後、3時間後ではウイルスは再度陽性になってきますので、うがいを継続的にした人は「陰性」になるということはあると思います。


やはり口中のウイルスを一時的にへらすだけのことだと松山センター長も認めています。しかも、うがい薬を使わずに水うがいでも同じような効果がある可能性があります。

では、この実験結果にどんな意味があるのかというと、松山センター長は、唾液中のウイルスがへれば人に移すリスクがへることと、軽症者の場合、唾液を肺に吸い込んで肺炎になるリスクがへることを挙げています。
しかし、陽性者はすでに隔離され、マスクをするなどして人に移さないように心がけていますし、口腔中のウイルスはへっても肺に直結する鼻腔中のウイルスはへらないので、肺炎になるリスクはそれほど変わらないとも思えます。

ただ、松山センター長は、実験はずさんだったとしても、そんなにでたらめなことは言っていません。
問題は、そんな実験結果に食いついて、「うがいでコロナに打ち勝てる」などと誇大妄想的な発表をした吉村知事です。

私は最初、吉村知事はニセ科学による詐欺にひっかかったのかと思いました。
しかし、実際は一人相撲ならぬ“一人詐欺事件”とでもいうのか、松山センター長はだます気がないのに吉村知事が勝手にだまされてしまったのです。
吉村知事は口腔中のウイルスがへって検査結果が「陰性になる」ということを、勝手に「コロナが治る」と脳内変換したに違いありません。
そして、それをマスコミに発表する自分の姿を想像して酔いしれ、正常な判断力を失ってしまったのです。


これまでメディアは吉村知事をひたすら持ち上げてきました。
政府のコロナ対策はでたらめで、安倍首相も西村コロナ担当相も加藤厚労相も自分の言葉で説明することができないので、メディアは各知事に注目し、中でも歯切れのいいしゃべりのできる吉村知事は連日テレビに顔出ししてきました。
そのため吉村知事は自分が日本のコロナ対策の中心であると勘違いをするようになったのではないでしょうか。

そして、吉村知事が力を入れたのが、大阪府、大阪市、大阪大学、大阪市立大学、医療機関、民間会社などオール大阪で取り組む“大阪ワクチン”の開発です。
世界中でワクチン開発を競っている中で、“大阪ワクチン”がどの程度有力なのかよくわかりませんが、「やってる感」を出すのにこれ以上のものはありません。
マスコミも食いつきがよく、吉村知事が「6月30日から臨床試験を始め、市大病院の医療従事者からワクチンを接種してもらう」などと発表するたびに大きく取り上げてきました。


そうしたところに松山センター長の実験結果が知らされ、吉村知事は「大阪発のコロナ対策」というところに食いついたのでしょう。
しかも、ポビドンヨード含有のうがい薬の代表的存在であるイソジンは、大阪の塩野義製薬の製品です。塩野義製薬は“大阪ワクチン”の開発に深く関わり、大阪万博のスポンサー企業でもあります。吉村知事の「うがい薬がコロナに効く」発言で塩野義製薬の株価が急騰し、インサイダー疑惑もささやかれ、吉村知事は“イソジン吉村”と揶揄されました。

インサイダー疑惑については『吉村知事「ヨードうがい薬」会見を『ミヤネ屋』に事前漏洩! 出演者のテリー伊藤が「会見の1時間半前に知った」「インサイダー取引できた」』という記事があります。


吉村知事は、コロナ対策をするときに「大阪」にこだわったのが失敗です。
科学では客観性がだいじで、自己中心的とか身びいきとかお友だち優遇とかは科学の敵です。

それは安倍首相においても同じです。
安倍首相は緊急事態宣言解除のときに「『日本モデル』の力を示した」と言って胸を張ったために、感染再拡大の事態ではなにも言えなくなりました(吉村知事が先に「大阪モデル」という言葉を使っていて、「日本モデル」はそのパクリでしょう)。
安倍首相はまた、富士フイルム富山化学の抗インフルエンザ薬「アビガン」を新型コロナ治療薬として強く推し、2020年度補正予算案に139億円を計上し、承認を急がせました。日本発の薬だということのほかに、富士フイルムHDの古森重隆会長が安倍首相を囲む財界人「四季の会」の中心メンバーであること、つまりお友だち優遇ということもありそうです。
しかし、臨床試験ではいまだに有効性が立証できず、一時は5月中の承認を目指していた安倍首相も、最近はアビガンに言及することもなくなりました。


吉村知事は、ポピドンヨード含有のうがい薬について「治療薬ではない」「予防効果があるとは一言もいっていない」と弁解しましたが、訂正や謝罪はしていません。
大阪のメディアがみんな大阪維新の会のお友だち化して、吉村知事を追及することもないので、それで通っているのでしょう。

pearl-harbor-67756_1920

8月6日の広島原爆投下の日に『日本に「大きな責任」求める 駐日大使指名ワインスタイン氏―米上院委』というニュースがあったので、アメリカはまだ原爆投下の責任を日本になすりつけようとしているのかと思いましたが、それは私の勘違いで、次期駐日大使のワインスタイン氏が日本に同盟国としてのより大きな責任を求めると米上院で証言したというニュースでした。

原爆投下の責任でなくても、アメリカが日本に責任を求めることに変わりはなく、米軍駐留経費の負担や兵器の購入などで日本はさらに出費を求められそうです。


アメリカは日本に原爆投下を謝罪することもありませんし、日本がアメリカに謝罪を求めることもありません。
もっとも、日本がアメリカに原爆投下の謝罪を求めると、アメリカは「日本はパールハーバーの謝罪をしろ」と言ってきそうです。
日本も真珠湾攻撃の問題をうやむやにしてきました。


アメリカ人は真珠湾攻撃を「卑怯なだまし討ち」と思っています。
真珠湾攻撃のとき、日本政府の宣戦布告が攻撃開始から1時間遅れました。
もともと宣戦布告ないし最後通牒ののちに開戦するという国際慣習がありましたが、1907年の「開戦に関する条約」の第1条に「締約国は理由を付したる開戦宣言の形式、または条件付開戦宣言を含む最後通牒の形式を有する、明瞭かつ事前の通告なくして、其の相互間に戦争を開始すべからざることを承認す」とあるので、明白な国際法違反です。

ただ、自衛戦争の場合は宣戦布告の必要はありません。
靖国神社の遊就館には、大東亜戦争は「自存自衛」の戦争だったという展示がされています。
おそらく日本の保守派は自衛戦争だと見なして宣戦布告の遅れを無視してきたのかもしれませんが、「真珠湾攻撃は日本の自衛戦争だった」という理屈が、アメリカに対してもどこに対しても通じるわけがありません。

結局、日本は「卑怯なだまし討ち」をしたのに謝罪しない国ということになっています。

安倍首相は2015年4月29日、日本の総理大臣として初めて米国上下両院の合同会議でスピーチを行いました。
このときなど真珠湾攻撃について謝罪する絶好のチャンスでしたが、「私たちの同盟を希望の同盟と呼びましょう」などと空疎な言葉を述べただけでした。



宣戦布告の遅れの問題は誰でも知っていますが、もうひとつ、先制攻撃の問題はあまり認識されていないのではないでしょうか。

第一次世界大戦の反省から1928年に成立したパリ不戦条約では、戦争は禁止され、違法行為となりました。ただ、自衛戦争は合法であるという抜け道があり、制裁の規定もありませんでした。
日本が上海事変、満州事変と言って、「戦争」の言葉を使わなかったのは、このパリ不戦条約があったからです。
ドイツがポーランドに侵攻したときも、ポーランドが先に攻撃してきたという理由をつけました。
ただ、これに対してイギリス、フランスなどがドイツに宣戦布告したのは、パリ不戦条約からはありえないことで、このときにパリ不戦条約は有名無実化したのかもしれません。
さらにドイツが相互不可侵条約を破ってソ連に侵攻し、世界は無法状態になりました。

しかし、どんな無法の世界でも基本的な倫理というのは不変です。
それは、「喧嘩は先に手を出したほうが悪い」というものです。

決闘は、どちらが先に手を出してもかまわないというルールですが、たとえば西部劇のヒーローは、自分から先に銃を抜くことはありません。先に手を出すのは悪いという共通認識があるからです。

太平洋戦争は、日本が先に手を出した戦争ですから、日本が悪いに決まっています。パリ不戦条約があるので、法的にも違法です。
侵略か自衛かでいえば、日本が侵略、アメリカは自衛です。

アメリカ人も、宣戦布告の遅れなどは大して問題にしていなくて、先に手を出したことと不意討ちだったことで怒っているのです。

ですから、日本はむしろ宣戦布告の遅れよりも先制攻撃を謝罪しなければなりません。
そうすれば日本は原爆投下や都市無差別爆撃などでアメリカに謝罪を要求することができますし、さかのぼって黒船による砲艦外交で不平等条約を押し付けられたことも問題にできます。



ところで最近、敵基地攻撃能力の議論があって、その中に先制攻撃論もあります。
敵がわが国を攻撃することが明らかなときは敵基地を先制攻撃しようという議論です。
しかし、敵がわが国を攻撃するか否かを事前に察知することは至難の技で、それは真珠湾攻撃を振り返ってもわかります。

海軍航空隊は真珠湾攻撃の場合に備えて、地形のよく似た鹿児島湾を真珠湾に見立てて訓練をしていました。もしアメリカのスパイがそのことを察知すれば、日本にアメリカ攻撃の意志ありと判断したでしょう。
そして、南雲中将率いる機動部隊が出撃したことを察知すれば、攻撃行動に出たと判断して、もし可能ならアメリカ軍が機動部隊に対して先制攻撃をしたかもしれません。
しかし、実際は日本政府もぎりぎりまで日米交渉の妥結を目指していて、妥結すれば機動部隊は途中から引き返すことになっていました。艦隊が真珠湾に向かっているからといって、確実に攻撃するというわけではありません。

日本が敵国に攻撃の意志ありと判断して先制攻撃をしたところ、敵国は攻撃する意志も準備もなかったということが明らかになったとします。その場合、日本は敵国に対して謝罪して、先制攻撃で与えた損害の賠償をするのが筋ですが、そこまで考えているでしょうか(もっとも、アメリカは大量破壊兵器があると言ってイラクを攻撃し、大量破壊兵器がないことが明らかになっても、謝罪も損害賠償もしていませんが)。

ともかく、真珠湾攻撃を思い出せば、先制攻撃論の危うさがわかります。


ところで、なぜ今敵基地攻撃能力が議論されるかというと、イージス・アショアの配備が中止になって、代わりにアメリカからなにか高額な兵器を買わなければならないからです。
もちろんイージス・アショアの代わりになにかを買う義務はないのですが、日本は「卑怯なだまし討ち」をしたことを大目に見てもらっているという負い目があるので、対等な交渉ができません。
そういう意味でも真珠湾攻撃の謝罪をすることは重要です。


もっとも、日本がアメリカに真珠湾攻撃の謝罪をすると、中国や韓国やその他のアジア諸国も日本に謝罪を求めてきて、パンドラの箱を開けたみたいなことになりそうです。
確固とした歴史認識がないとできないことではあります。

caricature-5266210_1920
子どもがよく嘘をつく。どうしつけたらよいか――というのは、子育てでよくある悩みです。
ネットで調べてみると、簡単にいくつも見つかります。
【相談内容】子供の嘘がどんどんエスカレート
『最近、小学3年生の息子がすぐに嘘をつきます。昔に比べて嘘の内容がどんどん巧妙になってきており、性格に問題があるのではないかと心配です。宿題をやったか、ゲーム時間や門限を守ったのか聞いても嘘ばかり。それを叱ると屁理屈ばかり言ってプチ逆切れの状態になり、ほとほと困ってしまいます。

ワーキングマザーのため、放課後は子供と一緒にいてあげることが出来ません。それが悪影響なのでしょうか? また、嘘をついた場合、厳しく叱ったり罰したりしたほうがいいのでしょうか?』
(相談者:神奈川県 40代 NANA)
https://allabout.co.jp/gm/gc/462867/
嘘をつく子供へのしつけ
2018/04/12 13:58
4年生の娘がいます。
嘘、隠し事が多すぎて困っています。
これまでも優しく諭してみたり、がっかりしたことを伝えてみたり、キツくしかってみたり、罰を与えてみたりといろいろ試しましたが、その場は反省したように見えても、結局治っていません。癖になってしまっているようです。
嘘の内容は家のルールを破ったことを隠す程度で、誰かを傷つけるようなものではないと思ってますが…
真顔で嘘をつき、隠し事にも後ろめたさがないような感じで、とても心配です。
バレなければルールは破ってもいいと認識してしまっているようにも見えます。
こう育てたのは親の責任でもあると重々承知なのですが…一度根本的なところを諭したい、ルールを破るより嘘をつく方がいけない事だと理解させたいです。口では何度か伝えましたが変わらず…いいアイデアはないでしょうか?また、みなさんはどうしますか?
https://okwave.jp/qa/q9487766.html


「嘘をついてはいけない」というのは、もっとも基本的な道徳だと思われているかもしれません。
しかし、それは間違いです。

ちなみに「嘘をついてはいけない」という法律はありません。
偽証罪があるではないかと思われるかもしれませんが、偽証罪というのは法廷や国会の証人喚問において宣誓した証人が嘘をついた場合にのみ適用されるものです。
詐欺罪はありますが、これは相手をだまして財物や財産上の利益を得た場合に適用され、単に相手をだましただけでは罪になりません。

逆に法律では「ほんとうのことでも言わなくていい」という規定があります。
日本国憲法第三十八条には「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」とありますし、刑事訴訟法第311条1項には「被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる」とあります。
つまり黙秘権です。

しかし、黙秘権が認められない状況もあります。
たとえば、フランスのレジスタンスがナチスのゲシュタポに捕まって、「仲間の居場所を知っているだろう。白状しろ」と迫られ、黙秘すると拷問されるとします。
そんな場合、「知らない」と言ったり、虚偽の居場所を教えたりするのは嘘ですが、道徳的に許される嘘です。


日常生活では、「黙秘します」と言うと、それが答えになることがあります。

妻「浮気したでしょう」
夫「黙秘します」

芸能記者「彼氏はいますか」
アイドル「黙秘します」

こんな場合は、黙秘する代わりに「浮気はしていない」「彼氏はいません」と嘘をつくしかありません。
つまり日常生活では、自己に不利な供述を拒むためには、黙秘権だけではなく、嘘をつく権利も必要なのです。

基本的人権として、黙秘権がある以上、嘘をつく権利もあるということを理解しなければいけません。



子どもが嘘をつくことで悩んでいる親は、子どもには嘘をつく権利があると思えば、そんなに悩まなくなるでしょう。
そして、自分がゲシュタポ化しているのではないかという反省も生まれるはずです。

悩み相談には子どもがどんな状況で嘘をつくのかは具体的に書いてありませんが、容易に想像はつきます。

「宿題やった?」
「やってない」
「だめじゃない! 何回言ったらわかるの。ゲームばっかりやってないで、早くやりなさい」

子どもがほんとうのことを言うと叱られるということが繰り返されると、子どもは嘘をついて、叱られることを回避しようとします。
嘘はいずれバレるとしても、とりあえず叱られる苦痛から逃げることができます。
嘘をついてはいけないと叱っても同じです。子どもはより巧妙な嘘をつこうとして、逆効果になります。

子どもが嘘をつくというとき、親は自分が取調官のようになっているのではないか、叱りすぎる親になっているのではないかと反省する必要があります。


アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンが子どものころ、父親がたいせつにしていた桜の木を誤って切ってしまい、父親に「この木を切ったのは誰か」と聞かれたとき、正直に「僕が切りました」と答えたところ、父親は叱らずにその正直さをほめたという話があります(これは史実ではないとされています)。
この話は、子どもに正直のたいせつさを教える話としてもっぱら利用されています。正直になると将来ワシントンのような偉大な人物になるかもしれないということです。
しかし、この話はむしろ親に対して、正直な子どもに育てるにはどうすればいいかを教える話として利用するのが正しい利用法です。
世の親がみんなジョージ・ワシントンの父親のようになれば、嘘をつく子どもはほとんどいなくなります。




嘘には大別して、利他的な嘘と利己的な嘘があります。

利他的な嘘というのは、相手を傷つけないための嘘です。
たとえば、昔は医者が患者にガンを発見したとき、とりあえず嘘をつくのが一般的でした。
「いくつに見えますか」と聞かれたとき、思った年齢より若く言うとか、最近趣味で始めたという油絵を見せられたとき、「下手ですね」と言わないようにするとか、相手を傷つけないための嘘は日常的に存在して、これらは肯定される嘘です。
ですから、「嘘をついてはいけない」というのは根本的に間違っています。

ただ、利他的な嘘というのは少なくて、ほとんどの嘘は利己的な嘘です。
利己的な嘘というのは、相手をだまして利益を得るための嘘です。
悪質なものは詐欺ということになりますが、ハッタリの嘘、虚栄の嘘、自慢の嘘など、利己的な嘘はあらゆる場面にあります。
よいことと悪いことがあるとき、よいことだけを言うというのも、広い意味での嘘かもしれません。
就活や婚活のとき、誰でも嘘を駆使して自分をよく見せようとします。

人間の生活は嘘まみれです。
そのことを理解すれば、子どもに対して「嘘をついてはいけない」などと言わなくなり、寛容な親になれるはずです。

菅官房長官
首相官邸HPより

内政で行き詰まると国民の目を外にそらせるというのは、どこの国の政府もよくやることです。

感染の第二波の到来に対してまったく無策で、逆に「Go Toトラベル」キャンペーンを推進するという政府に対して、国民の批判が高まっています。
こうした状況で菅義偉官房長官は国民の目を韓国に向けさせようとしたのでしょうか。


そもそもの発端は、韓国平昌の韓国自生植物園という民間植物園の中に「永遠の贖罪」と題した造形物が設置され、8月10日に除幕式を行うと発表されたことです。
韓国の新聞は「この造形物は、座っている1・5mの慰安婦少女像の前で、1・8mの安倍首相の銅像がひざまずいて謝罪をしている姿だ」と報じました。
これを私費でつくった金昌烈園長は「罪滅ぼしの対象をはっきり形作る必要があり、少女像が向き合うものは安倍に象徴させて造成した」と述べました。
ただ、造形物に「安倍」の文字はないようです。

スクリーンショット (27)
FNNプライムオンラインより

こうした報道に対して、菅官房長官は7月28日の記者会見で次のように述べました。

事実かどうかは確認しておりませんけど、そのようなことは国際儀礼上許されないと思います。かりに報道が事実であるとすれば、日韓関係に決定的な影響を与えることになる。いずれにせよ、慰安婦問題については、韓国側に対し、慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意の着実な実施を引き続き強く求めていく、そうした考え方に変わりはありません。

「日韓関係に決定的な影響を与えることになる」とは強い言葉です。
しかし、そもそも官房長官が言及するようなことでしょうか。

韓国の一民間人が自分の施設の中にどんなものをつくろうと自由です。誰も止められません。
あの像が安倍首相だとすれば、「国際儀礼上許されない」ということは言えるでしょうが、安倍首相だとは特定されていませんし、やはり民間人の設置したものについて、日本の政府高官が言及するものではありません。

なお、そもそも慰安婦像が問題になったのは、ソウルの日本大使館前の歩道に行政の許可なく像が設置されたからです。
ウィーン条約に「公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する」とあるのに違反しているとして、日本政府は撤去を求めました。

そのときと今回はぜんぜん事情が違います。
「国際儀礼上許されない」とか「日韓関係に決定的な影響を与える」とかは、まるで韓国政府に対して言っているようですが、言う根拠がありません。
民間人に対して言っているとしても、おかしなことです。

菅長官が言及する前にも、韓国内でこの像について賛否両論があって、「なんの利益になるのか」とか「幼稚すぎる」といった批判がありました。
放っておけば、落ち着くところに落ち着いたでしょう。


菅長官は定例記者会見において、TBS記者の質問に対して答えたのですが、菅長官は「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意」という言葉を手元の資料を見ながら言いました。ということは、この質問があることがあらかじめわかっていて、答えも用意されていたのです(質疑応答自体がなれ合いです)。

菅長官は「日韓関係に決定的な影響を与える」という強い言葉を使って、この問題を炎上させようとしたのでしょう。

しかし、金園長は騒ぎが大きくなって8月10日の除幕式は中止するつもりのようですが、「造形物を撤去するつもりはまったくない」「造形物の代わりに私を撤去しろ」と強気です。
こう言われると、それ以上どうにもなりません。
菅長官の“炎上商法”は不発に終わりました。

いや、不発どころではありません。
「リテラ」は『“首相謝罪”像が意外な展開! 嫌韓より「安倍が日本国民に謝ったんじゃないのか」のツッコミが続出、「謝罪像ほしい」の声も!』という記事で日本国内の反応を伝えています。

ツイッターで「首相謝罪」がトレンドワードになると、安倍首相が日本国民に謝罪したと誤解した人が続出したそうです。

〈首相謝罪、てっきり今までのコロナ対策の怠慢や無策を国民に詫びるとかだと思ったら違った。〉
〈コロナ対応や水害の被災者支援についての対応遅れについてかと思ったらちゃうのね〉
〈首相謝罪?って、私は首相が布マスク配布やGOTOトラベルで無策で迷惑かけているのでてっきり国民に謝罪する件なんだとおもったんだが。〉

「首相謝罪」の意味が、韓国に設置された首相の謝罪像のことだとわかっても、韓国非難の声は盛り上がらず、やはり安倍首相に対して謝罪を求める声のほうが強いということです。

〈トレンドに「首相謝罪」ってあるけど、コロナ対策もロクにしてないし、まずお前が謝罪しろ。〉
〈首相謝罪?韓国に謝罪はいらんよ。安倍は日本国民に謝罪してくれよ。〉
〈#首相謝罪 また使えないマスク8000枚配るバカはマジで国民に土下座しろ〉
〈首相謝罪像の頭を日本国民の方に向けて設置するべきなのでは〉
〈日本にも一体送ってくれんかな〉
〈「首相謝罪の像」、日本にも何個か設置したいと思いませんか? 例えば福島とか、森友小学校跡地とかに。〉

かつては嫌韓ネタを投下すると、世論が盛り上がったものですが、今回はまったく違います。
官房長官が一韓国国民に文句をつけるという愚かなことをした上に、もともと安倍首相に対する怒りが充満していたからです。

いまだにコロナ対応よりも世論操作のことを考えている安倍政権に国民があきれるのは当然です。

dna-3778639_1920

最近、優生思想に関する出来事が目につきます。

7月23日、ALSの女性患者に薬物を投与したとして2人の医師が逮捕されましたが、2人はツイッターや電子書籍で「高齢者や障害者は死んだほうがいい」と主張していました。
衆院選に立候補したこともある「れいわ新選組」の大西つねき氏は、自身のYouTubeチャンネルで「命、選別しないとだめだと思いますよ」「もちろん高齢の方から逝ってもらうしかないです」などと発言し、党から除籍されました。
7月26日は、4年前に津久井やまゆり園で19人が殺害された事件のあった日で、新聞などが事件を回顧する記事を載せましたが、死刑が確定した犯人は「意志疎通のできない重度の障害者は安楽死させるべきだ」という考えの持主でした。
そして、RADWIMPSのボーカル・野田洋次郎氏が7月16日、ツイッターに「大谷翔平選手や藤井聡太棋士や芦田愛菜さんみたいなお化け遺伝子を持つ人たちの配偶者はもう国家プロジェクトとして国が専門家を集めて選定するべきなんじゃないかと思ってる」と投稿して、批判されました。

こうした優生思想は、批判される一方で、つねに一定の賛同者が現れます。
とくに野田洋次郎氏のツイートには、人を殺せと主張しているのでないこともあって、「なにが問題かわからない」とか「ほめてるんだからいいだろう」という意見がけっこうあるようです。

このような賛同者が出るのは、批判する側が「これはナチスの優生思想と同じだ」という批判しかしないこともひとつの理由です。
こうした紋切り型の批判は、優生思想の賛同者に効果がないのはもちろん、優生思想について知らない人にも効果がありません。

紋切り型にならずに、それがなぜだめなのかをわからせるような批判をすることも必要です。
野田氏のツイートを材料にして、そうした批判をしてみたいと思います。


野田氏のツイートを改めて示しておきます。

野田ツイート

このツイートに批判が殺到すると、野田氏は「めちゃめちゃ真面目に返信してくださる人いますが冗談で言っています、あしからず」とツイートしましたが、「冗談」でごまかしたことがさらに批判を招きました。

なお、野田氏の所属するRADWIMPSは、アニメ「君の名は」の主題歌「前前前世」などで知られる人気バンドです。


おそらく野田氏は、「お化け遺伝子」という言葉を思いついて、その言葉をもとに(たいして深い考えもなしに)ツイートしたのでしょう。
しかし、「お化け遺伝子」とはずいぶんと失礼な言葉です。
「お化け遺伝子」を持った人間は「お化け」ということになるからです。

「お化け遺伝子」を「天才遺伝子」と言い換えても同じです。
藤井聡太棋聖が将棋が強くなったのは、遺伝子のせいだけではなく、本人の努力と、師匠や両親やさまざまな環境の影響があったからです。
藤井棋聖に対して「天才遺伝子を持っているからそんなに将棋が強いんですね」と言うのは失礼です。
というか、誰に対しても「あなたが成功したのは遺伝のおかげですね」というのは失礼です。

「配偶者は国が選定するべき」というのは、誰が考えてもむちゃな話です。「婚姻の自由」の侵害です。
これについては「なんで結婚相手を国に決められなきゃいけないんだ」という批判で十分でしょう。

それから、野田氏の説では、「お化け遺伝子」を持った人の子どもも親と同じ道に進むことになっているようです。
もし藤井棋聖が国家プロジェクトにより誰か一流女性棋士と結婚して、子どもをつくったとして、その子どもが棋士の道に進まなかったら、「君の誕生には国費が投入されてるんだぞ。自分勝手な人生を歩むことは許されん」という非難が浴びせられるでしょう。
つまり子どもの「職業選択の自由」も無視されているのです。

野田氏の“お化け遺伝子結婚国家プロジェクト”案は、本人の人権も子どもの人権も無視したトンデモ案です。
優生思想という言葉を持ち出さずとも十分に批判できます。

なお、スポーツや囲碁将棋のような実力の世界では、親が一流で子どもも一流というケースはひじょうにまれです。
世襲制が機能しているのは、むしろ政治や実業のような社会的文化的要素の強い世界です。


野田氏が「お化け遺伝子」というおかしなことを考えて、それに賛同する人もいるのは、マスコミが大谷翔平選手や藤井聡太棋聖のことをあまりにも持ち上げすぎて、「自分たちと違う特殊な人間」というイメージをつくりあげたからではないでしょうか。
マスコミは凶悪犯罪があったとき、犯人を猛烈に批判して、やはり「自分たちと違う特殊な人間」というイメージをつくるので、一般の人が平気で「死刑にしろ」などと言いますが、それとベクトルが逆なだけです。

野田氏の説については、スポーツや将棋は国家のためにすることなのかという批判ももちろんあります。


天才的な人や凶悪犯や重度の障害者や難病患者などもすべて自分と同じ人間です。
「自分たちと違う特殊な人間」というのは偏見です。
偏見がなければ優生思想もありません。

このページのトップヘ