army-60751_1920

アフガニスタンから米軍が撤退し、タリバン政権が復活する過程を見ていると、報道があまりにもアメリカ寄りなのにあきれます。

報道や論評の中で「民族自決(権)」という言葉を見たことがありません。
2001年に米軍がアフガンに侵攻し、タリバン政権を崩壊させ、カルザイ政権を成立させたのは、明白な民族自決権の侵害です。
したがって、米軍撤退とともにタリバン政権が復活したのは、本来の姿に戻ったことになります。
アメリカが20年にわたって多額の戦費を使い、約2500人の人的損害を出しながら、なにひとつ得るものがなかったのも、民族自決権を侵害した当然の報いです。

もっとも、アメリカがアフガンに侵攻したのは、9.11テロで痛手をこうむって、なにかの報復をしないではいられないという国民感情があるところに、タリバン政権が9.11テロの首謀者とされたオサマ・ビンラディンをかくまったので、タリバン政権が格好の標的になったからです。

世界もテロ被害にあったアメリカに同情していたので、民族自決権の侵害には目をつむったところがあります。
しかし、民族自決権の尊重は国際社会の大原則です。
大原則を破ったため、アメリカ人もアフガニスタン人も大損害をこうむりました。


それから、宗教に関する報道がほぼ皆無なのにも驚きます。
そもそもこれはキリスト教国であるアメリカがイスラム教国であるアフガニスタンを侵略し、支配したという出来事です。
2001年から2014年までアメリカとともにアフガンに駐留した国際治安支援部隊には43か国が参加しましたが、そのうちイスラム教国と見なせるのはトルコとアラブ首長国連邦だけです。
キリスト教とイスラム教の対立は根深いにもかかわらず、宗教対立という観点からの報道や論評を見たことがありません。

アメリカがアフガンに侵攻したとき、十字軍的意識がなかったとはいえないでしょう。
侵攻後、ビンラディンの捜索をまともにやろうとしなかったのは、ビンラディン逮捕は単なる侵攻の名目だったからではないでしょうか(ビンラディンは2011年に米軍特殊部隊が殺害)。
アメリカが2003年にイラクに侵攻したときも、イラクが大量破壊兵器を所有し、アルカイダと連携しているという理由がつけられましたが、どちらもアメリカのでっち上げでした。

つまりアフガン戦争もイラク戦争も、アメリカの侵攻の理由はいい加減です。
ということは、アメリカの侵攻の真の理由は、キリスト教国であるアメリカがイスラム教国を打ち負かし、支配するという十字軍意識によるものではないかということになります。
ただ、これについてはアメリカ人自身も半ば無意識かもしれません。
しかし、アフガン人やイラク人は意識しています。そのためにアフガン統治もイラク統治もうまくいきません。
米軍撤退とともに、あっという間にアフガン政府が崩壊したのも当然です。

しかし、ほとんどのマスメディアは、こうした宗教問題も民族自決権のことも取り上げないので、なぜアフガン政府があっという間に崩壊したのかさっぱりわかりません。


「かいらい政権」という言葉もメディアは使いません。
アメリカに忖度しすぎでしょう。

現在、アフガンから海外逃亡を目指す人が空港に押し寄せて混乱が起きていますが、今のところ混乱は限定的です(南ベトナム政権が崩壊したときはインドシナ三国から144万人の難民が出たとされ、一部はボートピープルになりました)。
かいらい政権が倒れるときはいつも起こることであり、フランスがナチスドイツから解放されたときはナチス協力者がひどい迫害を受けました。


新たなタリバン政権は、女子教育を認めないのではないかと懸念されています。
しかし、多くのイスラム教国ではイスラム法を理由に性差別政策を行っています。
サウジアラビアでは、女性は外出時はアバヤという顔をおおう服を義務づけられ、就労もきわめて制限され、自動車の運転はやっと最近認められてニュースになりました。それに、国王がすべてを支配する絶対君主制の国です。
しかし、サウジアラビアは親米国なので、こうしたことはあまり問題にされず、タリバン政権のことばかり問題にされます。

今後、タリバン政権が女子教育や女性就労の禁止などを行うとすれば、大いに問題ですが、これはアフガン国民が解決するべき問題です。外国が武力でなんとかする問題ではありません(タリバンが過激なイスラム原理主義になったのにもそれなりの理由があり、時間をかければ解決可能です)。



アメリカではアフガン政権崩壊を見て、米軍撤退が性急すぎたのではないかとバイデン政権への批判が起きています。
しかし、これは米軍撤退が早いか遅いかの問題ではなく、米軍が撤退するとすぐに崩壊するような政権しかつくれなかったという問題ですから、バイデン政権を批判しても始まりません。
アメリカ人自身もなにもわかっていないようです。