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「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首がマツコ・デラックスさんを攻撃しているのが意外な大騒ぎになっています。

そもそもは、『5時に夢中!』(MXテレビ)7月29日放送でマツコさんがN国や立花党首について、「気持ち悪い」「ふざけて(票を)入れている人も相当数いるんだろうな」と発言したことに立花党首がかみつき、「僕をバカにするのはかまいません。でも僕についてきてくれる100万人の有権者をバカにするのだけは許せない」と言って、同番組の生放送中にMXテレビの前に押しかけて抗議活動をしたことが始まりです。
言論で批判されたことに対してテレビ局に押しかけて実力行使するとは前代未聞です。政治家ではなく街宣右翼のやり方です。

これは言論の自由の危機ですが、立花党首の実力行使は批判されても、その主張はほとんど批判されていません。
というのは、「私を批判するのはいいが、私を支持する有権者を批判するのは許せない」という立花党首の論理を批判できる人がいないようなのです。

立花党首の論理について、メンタリストのDaiGo氏がスポニチの記事で次のような指摘をしています。


DaiGoは「強者が弱者を叩くことは絶対やっちゃいけないこと」と、マツコの行動に対して警鐘を鳴らす。その理由として「強い人が弱い人を叩く時には支持率が低下してしまうんですよ。強い人は“弱い人を救いたい”というモチベーションを持って叩くようにしないと、“お前は地位が高いから好きなように言ってんだろ”ってなっちゃうんです」と説明。DaiGoはマツコに対し「やっちゃったな」という印象を持ったという。

 マツコは7月29日に放送されたTOKYO MX「5時に夢中!」で、N国について「気持ち悪い人たち」「ふざけて入れた人も相当いると思う」との意見を述べていた。この行動にDaiGoは、「大衆は常に弱者ですから。こういう(投票した)人たちに対して叩くことを言っちゃった」と、大きなミスがあったと説明。逆に「これをうまく拾ったのは立花さんなんですよ。彼はこう言ってるんですね『僕をバカにするのは構いません。でもボクについてきてくれる100万人の有権者をバカにするのだけは許せない』。こうなっちゃうと彼が正しくなっちゃうんですよ」と力説した。

 立花党首は100万人の支持者のために戦う「怒れるリーダー」として“得票数を得られる状況”を作り出すことに成功。“マツコvs立花”という1対1の構図ではなく“マツコvs100万人の有権者”という1対大多数の構図に持ち込んだ立花党首に対してDaiGoは「逆に生粋の政治家なんじゃないの」と驚きを隠せなかった。
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2019/08/13/kiji/20190813s00041000387000c.html

DaiGo氏は強者と弱者の関係で説明していますが、有権者は弱者ではないので、この説明はあまり適切ではありません。
私は、身内や家族との関係で説明するのがいいと思います。
つまり立花党首の「私を批判するのはいいが、私を支持する有権者を批判するのは許せない」という論理は、「私を批判するのはいいが、私の家族を批判するのは許せない」という論理と似ているので、批判しにくいのです。

しかし、ちょっと考えればわかりますが、このふたつの論理は別物です。
政治の世界では、有権者は自立していて、自分の判断に責任を持たねばなりません。だめな政党に投票して、国がだめになったら、投票者にも責任があります。
「あんな政党に投票する有権者はバカだ」という批判は普通に成り立ちます。

ただ、「政治の世界」と「政治家の世界」は違います。
「政治家の世界」は有権者の存在によって成り立っているので、「政治家の世界」で有権者批判はタブーです。
野党の政治家が「与党を支持する有権者はバカだ」と言ったら、大問題になります。
安倍首相が選挙演説で聴衆に向かって「こんな人たちに負けるわけにいかない」と言ったことは、与党の政治家からも擁護されませんでした。

同様に「テレビの世界」は視聴者によって成り立っているので、出演者やテレビ局が視聴者批判をするのはタブーです。民放ではスポンサー批判もタブーです。

しかし、それらはその世界だけで成り立つ内輪の論理です。一般の人は「テレビがバカな番組ばかりになったのは視聴者がバカだからだ」と視聴者批判をしてもかまいませんし、「日本の政治がだめになったのは有権者がバカだからだ」と有権者批判をしてもかまいません。

ですから、マツコさんも「N国みたいな気持ち悪い党に投票した人もおかしい」と堂々と主張すればいいのです。

立花党首は政治家内輪の論理で、外部にいるマツコさんを批判するという間違いを犯しました。
しかし、その間違いがまったく批判されません。

立花党首は「5時に夢中!」の生放送のあった19日にもMXテレビの前に現れて抗議活動をし、デイリースポーツの記事によると、『立花氏はマツコを「権力の犬であることがよく分った」「しかし立場もあるのだろう。今度はワンワン鳴かなくなった」と酷評したうえで、「これ以上やるといじめになる」とマツコ攻撃をやめると宣言した』ということです。
まるで勝利宣言です。

立花党首の屁理屈がまかり通るとは、それこそ言論の危機です。