遠藤周作の狐狸庵シリーズのエッセイに、女性にプロポーズしようとするとオナラが出てしまい、プロポーズする雰囲気にならなくて、結局ふられてしまう男性の話があります。私はこれを読んだとき、いくらおもしろエッセイとはいえ、こんないかにも嘘とわかってしまう話を書いてはいかんなあと思いました。
 
ところが、私がある女性に決定的な告白をしようと待ち合わせ場所に向かっているときです。急にひどい便意に襲われました。下痢です。私はあわてて駅の便所に戻ってことなきをえましたが、待ち合わせに遅刻し、結局その女性にはふられました(遅刻したのがふられた原因ではありませんが)。その経験から、あのエッセイはほんとのことかもしれないと思いました。
女性に告白するときは緊張します。緊張のために胃腸が変調をきたすことは十分ありうることでしょう。
文庫本の解説に、遠藤周作は自分のことを他人の話として書くことがあると書かれていたので、私はあのオナラ男は遠藤周作自身に違いないと思いました。
 
次は、いわば逆の話です。
私は学生時代は名古屋ですごしましたが、春休み、夏休み、冬休みは必ず京都の実家に帰っていました。就職してからは主に東京にいましたが、やはり正月とお盆は必ず実家に帰っていました。しかし、30歳近くになったとき、今年のお盆は実家に帰るのをやめようと思いました。要するに、もうそろそろ親離れしなければいけないと思ったのです。
そのような決意を固めたとき、便秘になりました。便秘といっても出ないのは3日間だけなのですが、お腹が突っ張って苦しくてなりません。薬局へ行って便秘薬を買いましたが、勧められたのは、飲めば翌朝出るというもの。私としては飲んですぐ出るものを期待していたのですが。それぐらい苦しかったのです。
結局、便秘は一過性のものでした。私はだいたい下痢体質で、便秘で苦しんだのはそのときだけです。
 
異性に接近しようとすると下痢になり、親から離れようとすると便秘になる。どうやら法則があるのかもしれません。
 
多くの人は中学、高校時代に男女交際を経験しますが、私はいわゆるオクテで、初めて女性と交際したのは20代後半です。元祖草食系男子というところでしょうか。
 しかし、男女交際の方法を学ぶのは、幼児が言葉を学ぶのと同じで、年齢がいくと急速にむずかしくなります。その苦闘の中で、下痢だの便秘だのを経験したわけです(私がオクテである背後には親の過保護・過干渉がありました)
つまり男女交際というのは、頭で理解することではなくて全身の神経系にかかわることなのですね。
 
今の草食系の人も私と同じような苦労を経験するのでしょうか。私は40歳すぎて結婚しました。健闘を祈ります。