一般に「教育」というのはよいこととされていますが、それは大いなる誤解です。人間は生まれつき学習意欲や好奇心が備わっており、それ以上に教育すると害が出ます。
学習環境が劣悪な途上国で学校をつくるのはもちろんよいことで、こういう場合は教育もよいことになりますが、今の日本ではもうすでに教育が過剰になっていますから、これ以上教育しようとすると害が拡大するだけです。
「しつけ」についても同じようなことが言えます。子どもが発達とともに身につけていくべきことを、親が発達よりも早くしつけようとすると当然害が生じます。
過剰教育や過剰しつけの害はいたるところに見られます。たとえば、次に紹介するのは、掲示板「発言小町」にあったもので、若い女性が婚約中の男性についての愚痴を書いたものです。
関白宣言…な彼に…(愚痴) ナスカ 2012年11月8日 12:15
一年後に結婚予定のナスカと申します。
彼は5歳年上。
大人の魅力に溢れた素敵な人でした。
ところが、結婚が決まった瞬間から、関白宣言さながらの俺様ぶり。
何か意見など言おうものなら、「はいって言えばいいんだ」…と怒涛の如く怒鳴り「これまで甘やかしてきたのがいけなかった、俺の責任でもある」などと言い私を教育してます。
先日は怒られ中に辟易してしまい、どこか遠いところを眺めてしまっていたのですが…「聞きたくないなら、それで構わない。今すぐここから出ていきなさい」「聞けるようになったら、来なさい」などと言われてしまいました。
近頃は反抗し、休みの日に会わずにいたりしていますが、「浮気をしたら別れる。お前がその気にならない限りそういう間違いは起きないのだから」と持論を展開。
結婚前にこんな関白宣言。予定外でした。
彼は、どこらへんまで突っ走るんだろうか…。
と…不安です。
長~い愚痴に付き合っていただきましてありがとうございました。
この書き込みに対するレスは圧倒的に「別れなさい」と助言するものです。そのうちDVに変わるだろうという意見も多くあります。
それにしても、結婚が決まったとたんに豹変するというのも困ったものです。私は、ある女性が2年ほど同棲して結婚したら男がDV男に豹変したという話を聞いたことがあります。結婚する前に相手をよく見きわめなさいといっても、そうなるとどうしようもありません。
この男性は、婚約するまでは礼儀ということを心がけていたのでしょう。婚約したとたんに、もう身内だから礼儀はいらないとなって、ほんとうの姿が出てしまったわけです。
ともかく、「私を教育してます」という言葉があるように、本来対等であるべき男女関係に「教育」が入り込んでしまったので、この男女関係は誰が見てもだめなものになってしまいました(もちろんこういう関係からみずから抜け出そうとしない女性のほうにも大いに問題があります)。
これは男女関係に「教育」が入り込むとだめになるといういい例だと思いますが、では、親子関係ではどうでしょうか。
同じ「発言小町」の掲示板に、子どもを教育・しつけしようとして悩む親の書き込みがありました。
何度同じことを注意させるのか。疲労コンパニオンの母です あおざかな 2012年9月24日 9:07
小学2年生の息子です。親がどんなに注意しても、いっこうに直そうとしません。見てて思うに、とにかく、テキトーな性格&物事を感覚でこなしてしまい、人の話を聞いてないといった感じで、注意しても、我流を通してしまいます。生活面では挨拶です。とにかく、挨拶をしません。いったい何万回「挨拶をしないさい」といったことか。。言うと、頑なに挨拶をしなくなってしまったので、今は、ひたすら、親の私が、挨拶をする姿を見せています。いつか、子供が「挨拶は大事なコミニケーションの一つなんだ」と気が付いてくれるのをひたすら待つしかないと思っています。
勉強についても、たとえば、漢字の書き順。。注意した、その瞬間から、間違った書き順を書き始めます。楽器の習い事をしていますが、先生からも注意をされています。「なぜ、この練習をしているか考えながらやりなさい。何を注意されたの?」っと。。。家では、先生に注意されたことを本人の口で説明させてから、練習させます。ゆっくり練習させて、何度も音階を練習し、さて、曲をやらせると・・・。はぁ・・・。まったく、直ってません。。(超脱力です)いつも、この繰り返し。。主人に言わせると、「注意されたことをすぐにできる子供なんていない。やろうとしてる気持ちはあってもできないんだよ。あれぐらいの年齢の男なんて何も考えてないんだから。」といいます。いったいどうしたらいいのかわかりません。習い事も勉強も、こっちが放り投げ当てしまえば、どれだけ親子喧嘩が減ることか。親は細かいことをイチイチ言わず、子供にまかせて、それがたとえ我流を通す事になっても、将来的に自己肯定感に結びつき、自信をもって人生を歩んでいけることになるのでしょうか?今朝はあまりに同じことの繰り返しで、頭をひっぱたいてしまいました。
なんで、直そうしないんだろう・・何も考えないんだろう。。。
この書き込みに対するレスは、ほとんどがもっと肩の力を抜いてとか、息子さんのだめなところばかり見ずいいところを見てあげてくださいといったものですが、うちも同じだというものもあります。
とにかく、これが過剰教育・過剰しつけの典型的な例だと思います。子どもの発達よりも親の期待が先に行きすぎてしまっているのです。
言い換えれば、この親は子どもに合わせるということができなくて、子どもを自分に合わせようとしているのです。
こうしたことは広く行われていると思います。
ところで、掲示板のふたつの書き込みを並べて紹介したのは、このようにして教育・しつけされた男の子が将来、婚約者に対して強圧的な態度で教育するような男性になるのではないかということを示したかったからです。
「疲労コンパニオン」の母親は、息子に必死であいさつをさせようとしていますが、あいさつや礼儀ができるようになってもよい人間になるわけではありません。そもそもあいさつや礼儀は他人とのつきあいに有効なだけで、恋愛関係や夫婦関係をうまくやっていくにはあまり役に立ちません。いや、逆にあいさつを強要するようなやり方が恋愛関係や夫婦関係に出てきてしまって、マイナスになります。
つまり子どもへの過剰教育が、婚約者を教育するような人間をつくるというわけです。
いい親子關係が築ければ、その子は将来いろんな人といい関係を築けるようになるはずです。
教育・しつけが親子関係を阻害しているのでは、本末転倒もいいところです。