民主党はどうすれば再生できるのでしょうか。
それには民主党政権の失敗について分析することが先決ですが、私の見るところ、まともな議論は行われていません。
民主党なんかどうでもいいという人もいるでしょうが、日本維新の会やみんなの党や共産党に期待するにしても、民主党政権の失敗の理由を理解しておくことは必要です。
なぜ民主党政権の失敗の分析が行われないかというと、鳩山由紀夫氏や菅直人議員の個人の言動についての議論が現在進行形で行われていて、それがじゃましているからです。こうした議論ももしかして誰かに操作されているのかもしれません。
たとえば、鳩山由紀夫氏が中国で尖閣諸島について「盗んだものは返すのが当然」と発言したような報道がありましたが、これについては「日本報道検証機構Gohoo」が「注意報」を出しています。
鳩山氏「盗んだものは返すのが当然」見出し要注意
《注意報1》 2013/7/7 07:30
時事通信は、6月27日付で「尖閣『盗んだものは返すのが当然』=鳩山元首相、中国でも発言」の見出しをつけ、鳩山由紀夫元首相が27日、中国の清華大学主催のフォーラムに出席した際の尖閣諸島に関する発言を報じました。この見出しだけを見ると、「盗んだものは返す」という表現がカイロ宣言の引用であることが伝わらない上、あたかも鳩山氏が尖閣諸島を中国に返すべきとの自らの考えを表明したかのように認識される可能性があります。しかし、記事本文で引用された鳩山氏の発言内容や各紙の報道も踏まえると、鳩山氏は「日中それぞれに言い分がある」と言及し、中国側の立場にも一定の理解を示してはいるものの、中国に返還すべきとの考えを表明したわけではないとみられます。
(中略)
なお、当機構が調査したところ、時事通信が見出しにつけた「盗んだものは返すのが当然」というフレーズは、インターネット上で一人歩きして拡散し、主要紙のニュースサイトでも「尖閣について『中国から盗んだものは返さねばならない』と発言した鳩山由紀夫元総理」と書かれた外部執筆者の記事を確認(MSN産経ニュース7月6日付記事)。時事通信の見出しがきっかけで、日本の元首相が尖閣諸島を中国に返還すべきとの考えを表明したという誤った事実認識が内外に広まる可能性があります。
「日本報道検証機構Gohoo」はかなり信頼性のあるサイトではないかと思いますが、この「注意報」が出たあとも、鳩山氏への非難はやみません。
そういうことに影響されないようにして、冷静に民主党政権を振り返ってみましょう。
鳩山内閣は普天間基地問題で、辺野古に新滑走路を建設するという「日米合意」ではなく、「国外県外」への移設を目指しましたが、結局うまくいきませんでした。このつまずきで民主党政権は大幅に支持を失ってしまいました。このことをまず検証しなければなりません。
「国外県外」を目指したことは間違っていません。「日米合意」は、沖縄県民の圧倒的反対があるので、いまだに辺野古の測量すらできず、ほとんど実現は不可能な状況です。
とはいえ、「国外県外」が失敗に終わったのは事実です。
なぜ失敗に終わったかというと、その半分の原因はアメリカにあります。アメリカがグアムなど海外移設を受け入れれば解決した問題だからです。
そして、もう半分の原因は、日本の外務省、防衛省、マスコミ、国民にあります。外務省、防衛省の官僚ががんばってアメリカと交渉し、マスコミと国民がアメリカはけしからんと声を上げれば、アメリカは譲歩したでしょう。
もちろんそうならなかった責任は最終的に鳩山内閣にあります。要するに鳩山内閣の力不足です。アメリカを動かし、官僚を動かし、マスコミを操作し、国民世論を喚起する力がなかったのです。
そして、菅内閣は原発事故対策の不手際を責められました。これも民主党政権が支持を失った大きな理由です。
しかし、考えてみれば、大きな津波で全電源が喪失してしまうような原発をつくってそのままにしていたのは自民党政権ですし、事故が起こったときにまず対策に当たる専門家は東電であり原子力安全・保安院であり原子力安全委員会であり通産省です。それらがまともに機能しませんでした。
『検証東電テレビ会議』(朝日新聞出版、共同執筆)と『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書)を執筆した朝日新聞の奥山俊宏記者が「SYNODOS」というサイトのインタビューで、大震災直後の状況についてインタビュアーとこういうやりとりをしています。
原発事故と調査報道を考える
奥山俊宏(朝日新聞記者)×藍原寛子
―― 東電のテレビ会議の映像は、当時の菅首相や民主党の議員に対する論評、官邸内の動きなどが緊張感なく話し合われている3月12日夜の場面から始まります。12日午後11時12分には、都内の本店の対策本部は一部の社員を残して「解散」してしまっています。炉の内と外、福島と東京、東電の本店と原発サイトでは、あまりにも温度差があり過ぎると思います。被災者からすると本当にやりきれない思いですが……。『検証 東電テレビ会議』でもこのあたりは書かれていますが、なぜ、3月12日夜、東電社内はあんな空気だったのでしょうか。
12日夜に武黒一郎フェローが画面の前でずっと話をしている場面ですよね。1号機の原子炉建屋の爆発の7時間ほど後の場面です。原子炉に水が入り始めて峠を越えたといったような、あののんびりした雰囲気は、東電の危機感のなさが感じられて確かにショックで、残念です。
あの時間帯は、3号機の原子炉が制御不能に陥ろうとしていたころです。2号機はまだ冷却ができていて、4号機も無事だったころです。やるべきことがもっとあったのではないか、もっといい対応をすれば、抑え込むことができたのではないか、ましな結末があったのではないかと痛切に感じます。少なくとも2号機、3号機、4号機は救えていたはずです。
東電の本店がいかに無能で無策であったかというのがこれを読めばわかります。
原子力安全・保安院や原子力安全委員会の無能ぶりも今さらいうまでもないでしょう。
その中で孤軍奮闘したのが菅首相です。専門家たちが無能であることをすぐに見抜き、自分の個人的な人脈から専門家を探し、現地へヘリコプターで飛んで視察し、東電本店に乗り込んで撤退を阻止しました。ハリウッド映画ならヒーローの大活躍として描くところです。
また、菅首相は浜岡原発の運転停止を要請して運転を止めました。浜岡原発は東海地震の予想震源域にあり、もし事故が起これば東海道が分断されてしまいます。そのリスクを考えれば運転停止は当然です。
つまり、菅首相の原発事故対応はたいへんすばらしいものでした。
ヘリコプターの視察によってベントが遅れたとか、海水注入を止めようとしたとか批判されていますが、それはどちらも推測に基づく批判です。
かりにその批判が正しいとしても、小さな問題です。菅首相を批判する人たちは、より大きな問題を引き起こした東電を批判しないために菅首相を批判しているのです。
ただ、そうした批判に対処する能力に欠けていたとはいえます。これは鳩山首相も同じです。橋下徹氏の十分の一でもいいので反論能力があればよかったのですが。
以上のことを踏まえると、民主党再生の方向は明らかでしょう。
よりパワーアップした鳩山、菅を生み出すことです。
普天間基地問題は解決しなければなりませんし、原発も停止しなければなりません。その実行力のある政治家が必要です。
今、民主党再生を議論している人たちは、民主党を箸にも棒にもかからない、どうでもいい政党にしようとしているように思われます。
そんな政党にしても国民が支持するはずありません。
よりパワーアップした第二、第三の鳩山、菅を生み出すことしか民主党の再生はありません。