安倍首相は1月28日午前、後藤健二さんがイスラム国に拘束され、殺害までの期限が24時間とされたことに関して、「きわめて卑劣な行為であり、強い憤りを覚える」と語りました。
テロを形容するときに「卑劣」という言葉がよく使われます。
しかし、テロリストの行動はほんとうに「卑劣」と形容できるでしょうか。
テロリストはみんな、自爆テロリストはもちろんのこと、命懸けでやっています。ビン・ラディンやザルカウィも殺されるぐらいですから、地位の高い人間も同じでしょう。
自分の命を懸けている人間を普通「卑劣」とはいいません。
日本のテロリストとしては、血盟団や2.26事件の青年将校たちがいますが、彼らを「卑劣」とは言いません。
ちなみに「卑劣」とはこのような意味です。
(デジタル大辞泉の解説)
ひ‐れつ【卑劣/×鄙劣】
[名・形動]品性や言動がいやしいこと。人格的に低級であること。また、そのさま。「―な行為」
具体的には、自分の利益のためにずるく立ち回ることなどが「卑劣」の典型でしょう。
自分は安全な場所にいて人を攻撃するというのも「卑劣」でしょう。たとえばネットで匿名で人を攻撃するなどです。
アメリカ軍の無人機はアメリカ本土にいる兵士が操縦している場合もあるそうです。自分は絶対安全な場所にいて人を殺しているわけで、まさに「卑劣」です。
フランスの風刺新聞社がテロ攻撃にあったとき、世界各国の首脳が「テロに屈しない」ことを示すためにデモ行進をしましたが、国家の首脳というのは万全のセキュリティ体制で守られているわけです。そして、彼らが「テロに屈しない」と叫んでテロリストと敵対することで、一般国民がテロの危険にさらされます。国家首脳が「テロに屈しない」と叫ぶことも「卑劣」でしょう。
安倍首相は1月17日、エジプトでスピーチを行い、「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」と言いました。
ところが、イスラム国(ISIL)が日本人2人の殺害予告をすると一転して、イスラエルでの記者会見で「2億ドルの支援枠は、避難民を救うための食料や医療サービスを提供する人道支援です」と「人道」を強調しました。
これなどまさに「卑劣」でしょう。
以上は、「卑劣」という言葉を軸にして考えたもので、もちろん別の観点から考えることもできます。
なお、罪もない民間人を標的にするからテロリストは「卑劣」だという意見もありますが、アフガン、イラク、パレスチナなどで、テロリストが殺すよりもはるかに多くの罪もない民間人を殺しているのがアメリカ軍とイスラエル軍です。