息子の高畑裕太容疑者が逮捕された女優の高畑淳子さんが1時間余りにわたって記者会見を行いました。
例によって成人した子どものことで母親が会見して謝罪することはないという意見があります。
しかし、この会見でいろいろなことがわかりましたから、大いに意味はあったといえます。
高畑容疑者
淳子さん会見一問一答(1)昨日15分会った
たとえば冒頭のこうしたやりとりについても、突っ込みどころは満載です。
−−ご自身は事件を聞いた時はどんな思いだったか。
高畑さん 何のことかよく最初は正直分からなかったです。
−−これまでも「不祥事を起こしたら私に仕事がなくなる。私から仕事を取らないで」と言ったと伝えられているが、それはどういう時にどういう気持ちで話した言葉だったのか。
高畑さん 私どものように皆様の目に触れることが多い人間がいけないことをすると、お互い刺し違えて死ぬぐらいの覚悟でやらなければいけない仕事だ、と。そういうことが分かってもらえるなら、というつもりで言った言葉ではありますけれど、それがどう彼に響いていたのかはちょっと分からないです。
−−やってはいけないことをやるかもしれない、という危うさがあったということか。
高畑さん ……それは思春期とかそういう時代を……。そうですね、あったかもしれないですね。
−−具体的には。
高畑さん 危なっかしいと思っていました。日常生活がきちんと……例えば仕事の前にきちんと寝るとか、そういうことを見ていると、不安な要素はありました。
−−いつごろから。
高畑さん 小さい頃からあったように思います。
不祥事を起こしたらいけないのは、その行為そのものがよくないからです。ところが、高畑淳子さんは「私に仕事がなくなる」からよくないというのです。これではまともな倫理観が身につきません。母親を困らせるために不祥事を起こしてやろうということもありえます。
それから、「やってはいけないことをやるかもしれない」という危うさを小さいころから感じていたということです。つまり母親が子どもを信頼していないのです。
このやり取りだけで親子関係に問題があったとわかります。
子どもに危うさを感じていたということについてもう少し具体的なやり取りもあります。
−−裕太容疑者について感じていた不安な要素とは。
高畑さん 規律をちゃんと守れないところが、学校時代の遅刻とか、うちへの帰宅時間とか、そういう思春期のころは皆さんあるんでしょうけど、細かいことで、今回の事件と比較してはいけませんけど、学校の授業態度とか、そういう一つ一つが……。
(中略)
−−裕太容疑者は思春期の頃、規律を守れないことがあったと話していたが、成人になってからも奇行、問題行動、不可解な発言などはあったのか。
高畑さん 学校時代は揺すっても起きないこともあって勉強も嫌いだったんですが、お仕事が始まってからは、自分で目覚ましをかけて、行って……。ちょっと変わったところはある子でしたけど……夜きちんと寝ないとか心配なことはありましたけど、喜んで仕事をしてましたので、思春期の、あの困った状態の人がここまでになるんだと思っていました。
高畑淳子さんは裕太容疑者の遅刻問題に相当悩んでいたことがわかります。
そのため、裕太容疑者の夜更かしについてもうるさく注意していたのかもしれません。
しかし、裕太容疑者は仕事をするようになってからは、自分で目覚ましをかけて起きられるのです。ということは、裕太容疑者と学校が合わなかっただけのようです。高畑淳子さんは深刻に考えすぎていたかもしれません。
その結果、今も親子関係はあまり良好なものではないようです。
−−裕太容疑者とは自宅で一緒に暮らしていたのか。
高畑さん はい。演劇大学が終わって1人暮らしをしていたのですが、連続して出演させていただける番組がうちの近くだったものですから、1年ぐらい前からまた戻ってきました。
−−自宅で一緒に過ごす日が多かったのか。
高畑さん 私は基本的に外に出ないので、仕事が早かった時は、多いかどうかは分かりませんが、自宅で(一緒に)いる時間もあったと思います。
−−いつから群馬(のロケ)に行っていたのか。
高畑さん 一度行ったのが8月の上旬、10日ごろに3、4日行きまして。そして今回、仕事先からそのまま群馬に向かったと思っています。
−−最後に会ったのは。
高畑さん 8月19日か20日ぐらい、朝出かけて行く時だと思います。
−−その時はどういう会話を。
高畑さん 早朝の仕事からそのまま群馬に行くということで、泊まりの物がいろいろ、タオルとかがなくなっていたので「あ、泊まりがけで行くんだな」ということで、顔を合わせておりません。
−−顔を合わせない状態がしばらく続いていたのか。
高畑さん いえ、帰ってきて、夜ソファに転がっているのは見ています。
−−多くの会話はなかった。
高畑さん そうですね……。
1年ぐらい同じ家で生活していても、いっしょにすごす時間はほとんどなく、会話もなかったようです。
しかし、裕太容疑者は積極的に仕事に取り組んで、俳優業だけでなくバラエティ番組でも活躍して、22歳にして自立への歩みを始めていました。
子どもがみずからの意志で職に就いて、生活していけるようになれば、子育てとしては半ば以上成功でしょう。
裕太容疑者は、バラエティ番組での言動などを見ると、考えるよりも早く行動するタイプではないかと思われます。そういうところが高畑淳子さんには危なっかしく見え、なんとかおとなしい“普通の子”にしようとして、親子間の葛藤が生じたのではないでしょうか。
また、そういうタイプは学校でおとなしく勉強することも性に合いません。
ともかく、人間には生まれつきの性質というものがあるのですから、どんな性質であれ、それをそのまま受け入れるのが親の役割です。
裕太容疑者にとっては、仕事が順調にいき始めたところだけに、今回の事件が惜しまれます。
飲酒に加え、急に大きな仕事がきたことによるストレスから、ああした行動に出てしまったのでしょうか。親子間の長年の葛藤が根底にあったということも考えられます。
ともかく、そういうことがいろいろ推測できるのも、今回の記者会見があったからです。
子どもが成人すれば親は関係ないなどといわずに、こうした会見はどんどん行われるべきです。
たとえば、相模原市19人殺しの植松聖容疑者(26歳)の両親はまったく表に出てきません。
もしこのような記者会見を開けば、いろいろなことがわかるはずです。
引き出してさらし者にするということではなく、事実を知るためにみんなで拝聴するという形で記者会見が開けないものかと思います。