高樹沙耶容疑者が大麻所持の現行犯で逮捕されてから、世の中は例によって高樹容疑者批判があふれています。
ちょっと世の中と違う反応をしたのは古舘伊知郎氏です。古舘氏は報道のあり方に対して、「ニュースやワイドショーが、結構ビックリした顔してやってるんですよ。ウソつけ! みんなやってると思ってませんでした?」と語りました。
高樹容疑者は医療用大麻の解禁を訴えて選挙に出馬しましたし、外国で大麻を経験したことをブログで公表していますから、確かに驚くのはわざとらしいです。
高樹容疑者が違法行為をして逮捕されるのは当然としても(今のところ本人は容疑を否認)、これをきっかけに大麻合法化について議論してもいいはずですが、そういう議論はほとんどありません。
例外は堀江貴文氏ぐらいでしょうか。堀江氏は法律への疑問を表明しています。
しかし、それに対するネットでのリアクションがあまりにもお粗末で、この国の劣化を象徴しています。
「戦前は合法だったのに…」ホリエモン、高樹容疑者逮捕に持論もネットでは賛否
ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏(43)が25日、自身のツイッターを更新。元女優、高樹沙耶容疑者(53)が同日、厚労省関東信越厚生局麻薬取締部に大麻取締法違反の現行犯で逮捕されたことについて、高樹容疑者の擁護とも受け取れる意見をツイート。堀江氏の発言に、ユーザーたちから賛否の声が寄せられている。
堀江氏は自身のツイッターで高樹容疑者逮捕のニュースを取り上げ、「日本って法律に書いてある事破ると倫理的に悪いことしてるみたいに思われるよね。戦前は合法だったのに…」と持論を展開した。
これを受け、ユーザーたちからは賛否の声が寄せられたが、「倫理的に悪いから戦後に違法になったのでは?」「法を破る行為自体が倫理に反しています」「倫理観も時代によって異なるので、戦前は合法というのも説得力に欠ける気がします」などと、堀江氏の持論に否定的な意見がやや目立つ結果に。「せめて末期がんに対する医療大麻は合法化してほしいですね」という高樹容疑者と同様の訴えもあったが、中には「自己弁護に聞こえます」という厳しい意見も見られた。
大麻を合法化するべきか否かについては、むずかしい問題ですから賛否が分かれて当然ですが、堀江氏の主張の眼目は「法律と倫理は別」ということで、当たり前のことです。
ところが、それに対して、倫理よりも法律が上であるかのような反論が寄せられています。「法を破る行為自体が倫理に反しています」というのはその典型です。
当たり前のことですが、もともと倫理や道徳があって、それを踏まえて法律がつくられたわけです。法律が倫理を規定するということはありません。
倫理・道徳>法律
これが原則です。
よく「悪法も法なり」という言葉を持ち出して法律を絶対化する人がいますが、「悪法」という以上、悪法と良法(善法?)があるわけで、それを区別する倫理的判断力が必要です。
とくに民主主義国では、国民の代表者が法律をつくるわけで、国民も法律の良し悪しを判断する能力を持たなければなりません。
高樹容疑者の逮捕は、大麻取締法の良し悪しについて考えるいい機会です。
それなのに、大麻取締法の良し悪しを論じずに高樹容疑者の批判ばかりをするマスコミは、民主主義国にふさわしいとは言えません。