ハワイの真珠湾を訪問した安倍首相は12月28日、オバマ大統領とともに所感を表明し、不戦の誓いと和解の意義を強調しました。
今ごろ「和解」という言葉が出てくるのにびっくりです。1951年のサンフランシスコ講和条約で和解したはずです。
「不戦の誓い」という言葉も意味不明です。自衛戦争をやらないという意味であるはずはありません。では、外国で戦争をしないとい意味かというと、安倍政権はすでに集団的自衛権行使を容認しています。まったく空疎な言葉です。
安倍首相の「所感全文」を読んで感じるのは、ひたすらアメリカに忠誠を誓う姿です。
たとえば、こんな部分があります。
戦争が終わり、日本が、見渡す限りの焼け野原、貧しさのどん底の中で苦しんでいた時、食べるもの、着るものを惜しみなく送ってくれたのは、米国であり、アメリカ国民でありました。
皆さんが送ってくれたセーターで、ミルクで、日本人は、未来へと、命をつなぐことができました。
そして米国は、日本が、戦後再び、国際社会へと復帰する道を開いてくれた。
米国のリーダーシップの下、自由世界の一員として、私たちは、平和と繁栄を享受することができました。
敵として熾烈に戦った、私たち日本人に差しのべられた、こうした皆さんの善意と支援の手、その大いなる寛容の心は、祖父たち、母たちの胸に深く刻まれています。
私たちも、覚えています。
子や、孫たちも語り継ぎ、決して忘れることはないでしょう。
アメリカが食料を援助してくれたことなど、日本人もほとんど忘れかけています。いつまで感謝し続けなければならないのでしょうか。
年配の人なら小学校の給食で出た脱脂粉乳を覚えているはずです。あまりのまずさに、これがほんとうに人間の飲むものかと思いながら飲んでいましたが、脱脂粉乳は家畜のエサだったとあとで知って、納得しました。
いくら無償援助とはいえ、家畜のエサを人間に与えるとはとんでもないことです。当時のアメリカ人は日本人を人間と見なしていなかったのでしょう。今、アフリカなどに対する食糧援助で同じことをやったら、大問題になるはずです。
小麦粉の援助も、日本にパン食を普及させ、将来小麦粉の消費地に育てようという戦略からあったからです。
それらを無条件にありがたがる安倍首相は、いまだに占領軍の洗脳が解けないのでしょう。
安倍首相の頭の中にあるのはアメリカのことばかりなのです。
「不戦の誓い」というのも、アメリカと戦争をしないという意味なら理解できます。
アメリカ人戦没者ばかり慰霊してアジアを無視するのかという批判があるのは当然ですが、日米関係だけに限っても、安倍首相の態度は間違っています。
日本のアジアに対する戦争にはなんの正当性もありませんが、アメリカに対する戦争は、差別された有色人種が欧米列強の植民地主義に本格的な反撃をした戦争として、人類史的にも大きな意義があります。
日本がアメリカに勝利して、欧米が植民地支配について謝罪するという展開になれば、人類史はきわめて明快なものになったでしょう。
日本はアメリカに負けてしまったので、いまだに欧米は植民地主義や人種差別について謝罪も反省もしていません。そのため世界はずっと混乱しています。
イスラム過激派の自爆テロはもちろん日本軍の特攻の衣鉢を継ぐものです。
安倍首相は歴史に残る演説をしようとするなら、欧米の植民地主義を批判するべきでした。そうすれば、世界中から称賛の声が上がったでしょう(そのためには日本がみずからの植民地主義をちゃんと謝罪しておかないといけませんが、安倍首相は細川首相や村山首相のやったことをぶち壊しにしています)。
安倍首相は演説のあと、元米軍兵士と会って言葉を交わしました。その元米軍兵士は「謝罪する必要はない」と語りましたが、ひざまずいて靴をなめている相手に謝罪しろという人はいないでしょう。
安倍首相の真珠湾での態度は、アメリカとの戦争で死んだ日本人兵士に対する冒涜です。