国有地を不当に安く取得した疑惑のある学校法人森友学園は、「安倍晋三記念小学校」の名前で寄付集めをし、安倍昭恵さんが名誉校長を務めるなど(現在は辞任)、安倍首相と密接な関係があります。いったいどういう教育をしているのかと思って、この4月に開校予定の小学校のホームページを見てみました。
瑞穂の國記念小學院平成29年4月開校
「日本で初めてで唯一の神道の小学校です。キリスト教や仏教の学校は日本には沢山ありますが、神道の小学校はありません」とうたっています。
「教育理念」に「日本人としての礼節を尊び、それに裏打ちされた愛国心と誇りを育て」とあり、また「教育の要」に「天皇国日本を再認識。皇室を尊ぶ」「愛国心の醸成。国家観を確立」とあります。
その一方で、「論語」だの「大學素読」という言葉も出てきて、儒教にも力を入れているようです。森友学園系列の塚本幼稚園は、君が代斉唱、教育勅語暗唱とともに論語素読をさせることでも知られています。
籠池泰典理事長は「よこしまな考え方を持った在日韓国人や支那人」といったことを書いた文書を保護者に配布し、ヘイトスピーチであるとして問題になりました。
しかし、「論語」という“支那人”の文化は教えているわけです。
また、英語教育にも力を入れ、小学校一年生から英語を教えるというのも特徴です。
一年生で「外国語」に年間120時限が割り当てられ、これは「国語」「算数」の次で、「体育」の111時限よりも多い数です。
こんなに英語の授業が多いと、ほかの教科の授業時間がへらされているのかと思いましたが、そうではなく、「豊富な授業時間」をうたい、「標準的な小学校と比べ6年間で1,282時限多い時間数です」ということです。
要するに詰め込み主義です。
「神道を中心理念として、日本人としての誇りを持つ人材を育成する」と言い、日の丸君が代、教育勅語暗唱、軍艦マーチ演奏(塚本幼稚園)など右翼色を前面に出していますが、中を見ると、儒教があったり、英語教育があったりします。
ここには安倍首相など日本の右翼の矛盾が集約されています。
教育勅語も同じです。儒教道徳に近代ナショナリズムを合体させ、国家神道で権威づけたのが教育勅語です。
明治政府が富国強兵のためにむりやりつくったもので、日本の伝統とはむしろ縁遠いものです。
ところが、これを日本の伝統だと勘違いしているのが日本の右翼の痛いところです。
先日亡くなった鈴木清順監督は、そのへんをちゃんと理解していて、「天声人語」にこんなことが書いてありました。
▼東京・日本橋に呉服商の長男として生まれ、本所で育つ。江戸の文化を明治維新が滅ぼしたという持論を曲げず、上野公園の西郷隆盛像に納得しなかった。「僕が都知事になったら(略)一心太助か葛飾北斎の銅像を建てるね」。自著で歯切れよく語った
日本の伝統でないものを日本の伝統だと教わる子どもたちがかわいそうです。
また、論語素読とか教育勅語暗唱とかは教育の放棄と同じです。
「読書百遍意自ずから通ず」という言葉を根拠として、論語をただ読むだけで意味がわかってくるという説があるわけですが、わからないことは百遍読んでも千遍読んでもわかりません。ちなみに孔子はそんな教え方はしていません。具体的な例を挙げてわかりやすく教えています(それが論語になった)。その後は論語を使って教えるようになり、まったく教える能力のない教師は読ませるだけになっただけのことです。
教育勅語の暗唱も同じです。「夫婦相和し」と繰り返し唱えていれば夫婦仲がよくなるものでもありません。
安倍首相などの右翼は、富国強兵や軍国主義が日本の伝統だとする勘違いから脱して、一から出直すべきです。