森友学園や加計学園の問題で、検察はまったく動く様子がありません。こういうことでいいのかと思っていたら、こんなニュースがありました。
検察庁看板に赤ペンキ=器物損壊容疑で男逮捕-東京
27日午後0時45分ごろ、東京都千代田区霞が関の東京地検などが入る合同庁舎の守衛から、「看板にペンキをかけた男がいる」と110番があった。警視庁丸の内署員が駆け付けたところ、男が守衛に取り押さえられており、器物損壊容疑で現行犯逮捕した。
男は「やったのは私で間違いありません」と容疑を認めているという。60代ぐらいとみられ、同署が詳しい身元や動機などを調べている。(2017/05/27-17:49)
この事件で思い出すのは、1992年、金丸信自民党副総裁の佐川急便からの5億円のヤミ献金問題で、検察庁の看板にペンキがかけられたことです。このときは、検察は金丸氏に事情聴取もせず、罰金20万円で済ませようとしたために国民の怒りが高まっていたという背景がありました。そして、ペンキ事件がひとつのきっかけになって、検察は翌年3月に金丸氏を脱税容疑で逮捕しました。
今回、ペンキをかけて逮捕された男は森友学園や加計学園の問題で検察に腹を立てていたのかと想像されますが、2日たった今も続報がありません。いや、本人は逮捕の時点で容疑を認めているのですから、そのときに動機も語っていていいはずです。この事件で検察批判が高まってはいけないと思って、情報統制をしているのでしょうか。
すでに森友学園問題では、市民団体が財務省を公用文書等毀棄罪や背任罪で東京地検に告発しています。
しかし、検察の動きはないようです。
考えてみると、佐川急便事件のときは“政治とカネ”の問題でした。しかし、今回は安倍首相が賄賂を受け取ったということでは(たぶん)ありません。安倍首相は見返りなしに森友学園や加計学園の利益をはかったと思われます。森友学園には思想的に共感し、加計学園には昔からの友人だからというわけです。
これには政治状況の変化もあります。金丸氏の時代には、自民党の派閥のボスはカネの力で子分をふやさねばなりませんでしたが、今は自民党執行部がカネを支配していますから、安倍首相はそれほどカネを集める必要がありません。
政治家が賄賂をもらって私腹をこやしたということには国民も怒りますが、政治家が友人に便宜をはかったということには、国民もあまり怒りを感じないようです。
そのため検察もたかをくくっていると思われます。
時代が変わって、政治家の犯罪も変化しました。
今、問題になっているのは、“政治とカネ”ではなく、“政治と私情”あるいは“行政の私物化”です。
たとえば、昭恵夫人には5人の政府職員がついていたということです。“行政の私物化”以外の何物でもありません。
財務省職員は森友学園関係の記録をすべて廃棄したと称し、文科省職員は内部文書の調査をしたふりをして「確認できなかった」と報告しています。すべて安倍首相を守るためです。つまり安倍首相は職員に犯罪行為をさせ、嘘をつかせているのです。
もちろん財務省と文科省が森友学園と加計学園の利益のために動いたのも、安倍首相の“行政の私物化”です。
ほかにも、「総理」という著書があって、安倍首相べったりのコメントで知られるジャーナリストの山口敬之氏は、女性からレイプされたと訴えられたにもかかわらず逮捕を免れていると週刊誌に報道されており、これも報道通りなら、“行政の私物化”の典型です。
国民のために働くべき公務員が安倍首相のために働いているということに国民が怒れば、検察も動かざるをえなくなるはずです。