大阪府立懐風館高校で、生まれつき髪の毛が茶色いのに黒く染めるように強要され精神的苦痛を受けたとして、女子生徒が損害賠償を府に求める訴えを起こしました。
この学校は、染色や脱色を禁じる「生徒心得」を理由に髪を黒く染めさせるという論理矛盾した指導を行っており、「たとえ金髪の外国人留学生でも規則で黒染めさせる」など人権無視の発言をして、世間をあきれさせています。
校則と頭髪といえば、少し前に都立高校の約6割で入学時に「地毛証明書」を提出させているという記事が朝日新聞に出て、話題になりました。
パーマをかけていたり髪の毛を染めていたりするのではないかと疑わしい生徒に「地毛証明書」を提出させ、一部では証拠として幼児期の写真も提出させているということです。
黒く染めるよう強制するとか、「地毛証明書」を提出させるとかは話題になりやすいケースですが、どうやら茶髪禁止とかパーマ禁止というのは当たり前に行われているようです。
私の若いころは、男子生徒に丸刈りを強制する中学や高校がかなりありましたが、最近はほとんどありません。学園の自由化はいくらか進んでいるのかと思っていたら、そうでもなかったようです。
昔、丸坊主が強制されたのは軍隊がそうだったからで、いわば軍国主義教育の名残りです。
刑務所に入るときも丸刈りにされるので、それとの関連もあるかもしれません。
頭髪は身体の一部ですから、「お前たちには身体の自由もないのだ」ということをわからせるねらいでしょう。
それが今も続いているわけです。
もっとも、こういうことを言うと、高校生が髪を染めることがいかによくないことであるかとか、黒髪がいかに素晴らしいかとか、反論する人が出てきそうです。きっと教育現場ではつねにそういう議論がされているのでしょう。
髪型とか毛髪の色とかについてはいろいろな価値観がありますが、これは価値観の問題ではなく、「自分のことは自分で決める」という自己決定権の問題です。
教師がどんな価値観を持ってもかまいませんが、それを生徒に押しつけてはいけません。
それに対して、ルールを守ることのたいせつさを主張する人もいます。
しかし、それもやはり自己決定権の問題です。
生徒のルールは生徒が決めるべきです。
現在は生徒のルールを教師が決めているので、「おかしな校則」がいっぱいできています。
「自分が守るルールを自分でつくったら、自分に甘いルールをつくるからだめだ」という人もいるかもしれませんが、その主張は民主主義の否定です。
「地方自治は民主主義の学校」という言葉がありますが、「生徒自治は民主主義の学校」でもあります。
18歳選挙権が実施されていますが、民主主義について学ばないのに急に投票だけしろと言われても、うまくいきません。
現在、生徒自治会の活動が不活発だということもあるようですが、それは自治会の権限が小さいからです。校則をすべて自治会がつくることにするだけで、まったく変わるはずです。
立憲民主党の枝野幸男代表は、「上からの政治か、下からの草の根民主主義か」と対立軸を設定しましたが、これはきわめて明快でした。
これは学校のあり方にも適用できます。
自民党政権下の学校では、生徒は教師から一方的に指導されるだけです。
若者は自民党支持率が高いというデータがありますが、こういう学校で育った結果でもあるでしょう。
ついこの前も、小中高校のいじめ認知件数が過去最多の32万件になったというニュースがありましたが、いじめの多い学校というのも、結局は生徒の声が学校運営に生かされていないからです。
文科省、学校、教師の上からの学校運営か、生徒の草の根民主主義の学校運営かという対立軸で教育改革の議論をすれば、うまくいくはずです。