サンフランシスコ市が慰安婦像の寄贈を受け入れたことに抗議して、大阪市の吉村洋文市長は姉妹都市関係を解消すると表明し、騒ぎになっています。
しかし、これはあまりにも小さな問題です。
「慰安婦」問題ではなく「慰安婦像」問題だからです。
慰安婦像設置に抗議するのはおろかなことです。
慰安婦像は民間団体が世界中のどこにでも設置できますから、それを止めるのは不可能です。逆に日本にいやがらせをしたい韓国人などは、慰安婦像を設置するだけでいやがらせができるとわかって、大喜びでどんどん設置しています。
また、かりに世界中の慰安婦像をなくすことができたとしても、日本の国益になることはまったくありません。
それどころか、この問題で騒ぐと、日本は性差別と人種差別と歴史修正主義の国だというイメージがどんどん広がってしまいます。
「慰安婦」問題が「慰安婦像」問題に矮小化し、さらに国家間の問題が都市間の問題に矮小化したのはどうしてでしょうか。
そもそも慰安婦問題に関する日韓合意は、オバマ政権の圧力のもとに行われたものです。
「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」であると認め、「日本国の内閣総理大臣として(略)、心からおわびと反省の気持ちを表明」したことは、安倍首相の考えとは相容れなかったでしょう。
そこで、今年1月のオバマ政権からトランプ政権の移行期に、釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置されたことをきっかけに、安倍政権は駐韓大使を召還するなどして「慰安婦像」問題をしかけたわけです。
人権問題に鈍感なトランプ政権なら文句を言わないだろうという読みがあったと思います。
しかし、日韓合意を破棄するわけにはいかなかったので、「慰安婦像」問題に矮小化してしまったわけです。
このことはある意味、普天間基地の辺野古移設の日米合意に似ています。
この日米合意もアメリカの圧力のもとになされたもので、国内に納得いかない人たちがいるので、いまだに問題が継続しています。
ただ、慰安婦問題の日韓合意とは、右翼と左翼で立場が逆ですが。
いずれにせよ、多くの国民が納得いかないことは、アメリカの圧力で合意しても、あとあと問題になるということです。
「慰安婦像」問題をきっかけに、右翼も対米従属の問題に気づくといいのですが。