2017年の漢字が「北」であったように、北朝鮮に振り回された1年でした。
いや、正確に言うと、北朝鮮に対応するトランプ政権と安倍政権に振り回された1年でした。
たとえば安倍首相は12月22日にこんなことを言っています。
安倍首相、韓国への渡航「問題ない」
安倍晋三首相は22日、都内の会合であいさつし、今後の北朝鮮情勢に関連し「基本的には(来年2月に)平昌冬季五輪があるから、大丈夫だ。緊張状態はあるが、韓国に行く分には(安全面で)何の問題もない」との認識を示した。
さんざん「国難」などと脅威をあおっておきながら、今度は「何の問題もない」です。しかも、その理由に五輪を挙げているのも不可解です。北朝鮮が五輪を尊重するということなのか、トランプ政権が五輪中は攻撃しないということなのか、それとも安倍首相が適当なことを言っているだけなのか。
一方で、政府が主催したミサイル避難訓練は3月以降、22道県で25回行われ、たとえば学校では、児童は窓から離れ、5分間、床に伏せて頭をかかえる姿勢をとるなどしたそうです。
これは通常弾頭のミサイルを想定した訓練のように思われますが、安倍首相は「北朝鮮はサリン搭載の弾頭を保有している可能性がある」と国会で発言したことがあります。化学兵器を想定するなら、ガスマスクを配布するとか、風向きを見て避難するとかの訓練をしなければなりません。
いや、韓国の統一相は2月に、北朝鮮は核爆弾の小型化をしてノドンに搭載可能だと国会答弁で述べています。核ミサイルも想定しなければなりません。
それに、地域も限定するのが当然です。北朝鮮が狙うのは米軍基地と東京、大阪などの大都市です。避難訓練をするなら、そういう地域で重点的にしないといけません。
しかし、米軍基地の近くが危ないなどというと、基地反対運動が起きかねませんから、ごまかしているのでしょう。
北朝鮮はICBMを開発したとはいっても、米本土を攻撃する能力はまだないとされます。核ミサイルの脅威が現実のものとなっている日本がアメリカと同一歩調をとれるわけがありません。
安倍首相は国民の命を危険にさらしてもトランプ大統領にへつらうという、まさに売国政治家です。
根本的なことを言えば、日本はアメリカの核抑止力に守られながら、北朝鮮に対しては核抑止力を持つなという、明らかに不当な要求をしています。
不当な要求でも、うまくいけばいいという考え方もあるでしょうが、明らかに不当な要求というのは通りません。
これは「最後通牒ゲーム」というゲーム理論の実験でも明らかになっています。人間は、明らかに不公平な取引を求められると、自分が損をしてもそれを拒否するのです。
これは人間が不合理な行動をする例とされますが、実験ではなく現実においては、不合理とはいえません。一度不公平な取引を受け入れた人間は、周りの人間になめられて、のちのち損をするに違いないからです(実験は見知らぬ人間同士で、一度限りという条件で行われるので、不合理だということになります)。
ですから、いくら経済制裁をしても、北朝鮮に不当な要求を飲ませることはまず不可能です。
2018年を北朝鮮の核問題解決の年としたいなら、日本は北朝鮮に対する不当な要求をやめて、北朝鮮が納得して受け入れるような提案をするべきで、その方向でトランプ政権を説得するしかありません。