朝日新聞は前から「小さないのち」という特集をやっていて、イジメで死んだ子どもの親、子どものころ虐待されていた人、高校生で子どもを産んだ女性などの話を紹介しています。
特集「小さないのち」
いい特集だと思いますが、「小さないのち」という言葉が気になります。
「小さないのちを守る」という言葉になると、そのおかしさがよりはっきりします。
(耕論)「小さないのち」を守る 山田不二子さん、安達和美さん、山崎浩司さん
命に大きいとか小さいとかがあるのかと思ってしまいます。
もちろん「小さないのち」は「小さな子どものいのち」と書くのが正確な表現です。
しかし、これではタイトルとして長いので「小さないのち」としたのでしょう。
しかし、同じ短くするのなら「子どものいのち」とするべきです。
「小さないのち」だと命の価値が小さいという意味にもなります。
子どもの命のたいせつさを訴える特集にふさわしくありませんし、せっかくのいい内容が誤解されかねません。
「小さないのち」というタイトルは、「小さなか弱い命を私たちおとなが守りましょう」という気分を表現したものだと思いますが、これはおとなと子どもの関係を「守り・守られる」関係と見なしています。
子どもの権利条約は、子どもを保護の対象と見なすのではなく、権利行使の主体と見なしており、この認識は子どもの権利条約の精神にも反します。
おとなも子どもも命の価値、人間の価値は同じであり、おとなも子どももともに学び成長していく存在と見なすのが、正しい子ども観であり人間観です。
朝日新聞は人権尊重をうたっているはずですが、いちばん肝心のところが抜けています。
朝日新聞を嫌う人が多いのは、朝日新聞が進歩的でリベラルであるがゆえだという認識があるかもしれませんが、それは違います。
朝日新聞が上から目線で若者に説教するところがあるからです。
朝日新聞は、「小さないのち」という子どもの命を軽視した言葉づかいを反省して、人権について学び直してもらいたいものです。