日本の選挙運動を揶揄する言葉に「どぶ板選挙」というのがありますが、安倍首相の総裁選のやり方はまさに「どぶ板選挙」です。
西日本豪雨で各地に避難指示や避難勧告が出された7月5日の夜、安倍首相らが「赤坂自民亭」なる酒宴に興じていたことが批判されましたが、安倍首相が普段は出ない酒席に出たのは総裁選の選挙運動のためでした。
「“赤坂自民亭”で安倍首相が若手議員に地方行脚を売り込み」という記事にこう書かれています。
「安倍総理は宿舎の宴会で、『全国どこにでも行くから、演説会や懇親会をセットしてくれ』と若手議員たちに総裁選に向けた地方行脚を自らセールスしていたそうだ。幹部の1人がそのことを紹介すると、別の幹部は『安倍さんはもう総裁選しか眼中にないよな。まだ国会も終わっていないのに』と苦笑していた」(同前)
日本上空に厚い暗雲が垂れ込める中、首相の眼中だけでなく、自民党幹部たちも、「総裁選」しか頭になかったことがよくわかる。
しかも安倍首相は翌6日の夜にも秘密会合をセッティングして、菅官房長官と無派閥議員らと会っていました。日本テレビ系のニュース番組「news every.」は“無派閥議員のとりこみ”と報じています。
選挙運動のやり方が、議員票については派閥や人脈を通じての取り込みですし、党員票については「どぶ板選挙」です。
そもそも現職の総理総裁がこんなに熱心に選挙運動をすることが異常です。
通常は、ひたすら首相としての職務に励んで、それを評価してもらうという姿勢でいるものです。
選挙運動を熱心にやるのは新人候補のほうです。
なお、自民党総裁選では公示日から投票日まで二週間の選挙運動期間が設けられていますから、今安倍首相がやっているのは「事前運動」です。
安倍首相は総裁選で勝利を確実にしていると見られています。
ということは、安倍首相はただ勝利するだけでなく、圧倒的な勝利をして、自分の権力基盤をさらに強化したいのでしょう。
まさに“権力亡者”です。
なによりも異常なのは、政策や理念についての議論がまったくないことです。
安倍首相は実績を問うという立場かもしれませんが、対抗馬の石破茂氏は安倍首相との違いを打ち出せていません。
念のために「石破茂氏と安倍首相の政策の違い」で検索してみたら、「防災省創設が安倍首相との違いをアピールできるテーマのひとつ」ということが出てきただけです。
総裁選不出馬を決めた岸田文雄政調会長も、もともと安倍首相との違いを打ち出していませんでした。
人気の点で安倍首相に対抗できるかもしれない小泉進次郎氏も、脱原発の方向性はあるかもしれませんが、それ以外の違いは見えません。
安倍首相がすばらしい政治をしていたら、違いを出せなくてもしかたありませんが、もちろんそんなことはありません。
安倍首相はトランプ大統領にひたすら合わせていますが、トランプ大統領はどんどん日本に敵対的なことを仕掛けてきます。プーチン大統領と仲良しのふりをしていますが、ロシアに経済協力をさせられるだけで北方領土はまったく返ってきません。かつては中国包囲網づくりに邁進していましたが、今は中国の一帯一路に協力的で、その方針転換の説明もありません。対北朝鮮外交はまったく破たんし、拉致問題解決の糸口も見えません。
安倍首相は経済の好調をアピールしていますが、財政赤字は増大する一方で、破たんに向かって進んでいるとしか思えません。
こういったことが総裁選でまったく議論されないので、安倍首相が「どぶ板選挙」に走るのは、ある意味当然かもしれません。
自民党は党全体が思考停止に陥っているようです。
行き着く先は、日本の財政破たんでしょうか。

「世界経済のネタ帳」より