村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

2019年08月

G7
首相官邸ホームページより

フランスのビアリッツで8月24日から26日にかけてG7サミットが行われましたが、わが国のマスコミはそのことよりも韓国のことばかりです。おかげで日本人は文在寅政権の支持率や文氏の側近のスキャンダルに詳しくなったはずです。

世界には重要な問題が山積しているのに、なぜ日本人は韓国のことばかりに目を奪われる愚か者になってしまったのかというと、やはりそれなりの仕掛けがありました。

次はフジテレビ系の「FNN.jpプライムオンライン」の記事ですが、G7サミットのことを書きながら、内容は韓国のことになっています。

「文大統領 信用できない」 トランプ大統領 G7の席で
G7サミットで、アメリカのトランプ大統領が、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を「信用できない」などと、2日にわたって痛烈に批判していたことが、FNNの取材でわかった。

トランプ氏が文大統領を批判したのは、フランスで開かれているG7(主要7カ国)首脳会議の初日の夜で、首脳らが外交安全保障に関する議論をしている最中に、「文在寅という人は信用できない」などと切り出したという。

政府関係者によると、トランプ氏はさらに、「金正恩(キム・ジョンウン)は、『文大統領はウソをつく人だ』と俺に言ったんだ」と重ねて批判したという。

そして、トランプ氏は、2日目の夜に行われた夕食会でも、文大統領について、「なんで、あんな人が大統領になったんだろうか」と疑問を投げかけ、同席した首脳らが、驚いた表情をする場面もあったという。

一連の発言に対して、安倍首相が反応することはなかった。

政府内には、トランプ氏の発言の背景には、韓国が日韓のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を破棄したことなどが念頭にあるとの見方がある。
https://www.fnn.jp/posts/00423006CX/201908262030_CX_CX

一読して、これはほんとうだろうかという疑問がわきます。
いくらトランプ大統領でも、その場にいない他国の首脳の悪口を言うだろうかと思いますし、誰にとっても興味のない話をするだろうかとも思います(金正恩委員長の話をして、その流れでというのはあるかもしれません)。
それに、「なんで、あんな人が大統領になったんだろうか」というのは愚痴に近く、トランプ大統領がもっとも言いそうにない言葉です。

もちろん、ほんとうのことかもしれません。
ほんとうだとして、問題はこの記事の書き方です。
これは本来は、「トランプ大統領が『文在寅という人は信用できない』と発言したので、各国首脳は驚いた(あきれた)」という記事になるはずです。
FNNは「親米・反韓」なので、逆の書き方をします。


この情報提供者は「政府関係者」だということです。
政府がオフレコの情報を提供し、メディアも政府の狙い通りの記事を書いています。
安倍政権とメディアが合作で嫌韓世論をつくっていることがわかります。

ここでのポイントは、アメリカを利用していることです。
日本人は嫌韓の人ばかりではありませんが、アメリカには弱いので、「アメリカが韓国に怒っている」とか「アメリカは韓国に失望した」とか言うことが世論の誘導には有効です。

もちろん嫌韓に世論を誘導するのは、安倍外交が対米も対中も対露も対北朝鮮もまったくだめだということから国民の目を反らすためです。

しかし、毎日が嫌韓騒ぎでは、国民もいい加減飽きてくるのではないでしょうか。

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韓国が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄したことについて、アメリカのポンペオ国務長官は「失望した」と述べ、米国防総省も「懸念と失望」の声明を出しました。
「失望」というのはかなり強い言葉ですから、日本の韓国嫌いの人たちは「韓国はアメリカの怒りを買った」と大喜びでした。
しかし、トランプ大統領は「韓国でなにが起こるか見てみよう」と言っただけでした。文大統領について「ひじょうによい友人だ」とも述べました。

振り返ると、ポンペオ長官がカメラの前で「失望した」と述べたとき、そんなに強い調子ではありませんでした。なにを言ってもトランプ大統領にひっくり返される可能性があるとわかっていたからでしょう。
ポンペオ長官は対北朝鮮強硬派で知られていましたが、今はそれを封印して、トランプ大統領に合わせています。


G7サミットが8月24日からフランスで開かれ、安倍首相はトランプ大統領と会談し、朝鮮半島情勢についても話し合いました。

北朝鮮のミサイルは「違反」? 日米首脳間で見解に相違
 北朝鮮が短距離弾道ミサイルの発射を繰り返していることについて、日米首脳会談の冒頭、安倍首相は「国連安保理決議に明確に違反する」と強調した。これに対し、トランプ米大統領は「首相の心情は理解できる」としつつ、「いい気分ではないが、(米朝の)合意には違反していない。長距離ミサイルの発射や核実験はしていない。ずっと通常型に近く、彼(金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長)だけでなく、多くの人(国)が実験している」と語った。日米首脳間の見解の相違をうかがわせた。(ビアリッツ=渡辺丘)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190826-00000003-asahi-int


NHKニュースによると、このときトランプ大統領は「先週キム委員長からとてもすばらしい手紙をもらったが、その中で彼は『韓国が戦争ゲームしている』と不満を示していた。私も米韓合同軍事演習は不必要だと考えている」と述べました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190825/k10012048141000.html


トランプ大統領の考えは、従来のアメリカの方針とはまったく違っています。トランプ大統領の考え方では、在韓米軍はほとんど不要で、そのうちまったく不要になります。
そして、在日米軍も同じようなものでしょう。

アメリカの基本戦略は、軍事力で世界に君臨するという覇権主義です。
トランプ大統領は、軍事費は増大させていますが、不思議なことに軍事力で世界に君臨するという発想がありません。
軍事に関しては、「伝統的なアメリカ」と「トランプのアメリカ」はまったく別なのです。
日本人はこのことをあまり理解していないようです。
トランプ大統領と金正恩委員長の仲良しぶりも、見て見ないふりをしています。

そのため、日本人はトランプ大統領についていけません。もちろん安倍首相もです。

安倍首相はついていけないだけでなく、振り回されています。
安倍首相は5月6日にトランプ大統領と電話会談したあと、記者団に対して「条件をつけずに金正恩委員長と向き合う」と語り、これまで北朝鮮にはひたすら「制裁と圧力」を強化し、拉致問題の解決を条件にして対話を拒んできた方針から大転換しました。
もちろんトランプ大統領から指示されたからです。トランプ大統領は前から「北朝鮮の非核化の費用は韓国と日本が出す」と言って、アメリカの負担は必要ないと国民に説明してきましたから、「シンゾー、早く金正恩に会って、金を出す段取りをしろ」などと言われたのでしょう。
しかし、方針を変えた安倍首相に対して北朝鮮の報道官は「執拗に平壌の門をたたいているが、ずうずうしい。わが国への敵視政策はなにも変わっていない」と罵倒しました。
それ以降、安倍首相も北朝鮮への対話呼びかけはやめたようです。

しかし、トランプ大統領の態度は一貫していて、北朝鮮に対して友好的です。
かつてはティラーソン国務長官とかマティス国防長官がトランプ大統領を抑えていましたが、今のポンペオ国務長官とかエスパー国防長官はイエスマンであるようです。

米朝の友好が進んで朝鮮半島の緊張が緩和すれば、GSOMIAなど必要ありません。文政権の決定はそれを先取りしていることになります。
文在寅大統領は北朝鮮に対してオリンピック共同開催を提言し、経済協力の先にワンコリアを実現させようと呼びかけていますが、これも「トランプのアメリカ」と連携した動きです。

日本では韓国のGSOMIA破棄によって日米韓の同盟が壊れたなどと言っていますが、日米韓の同盟を壊しているものがあるとすれば、それはトランプ大統領です。

トランプ大統領の政策にはほとんど賛成できませんが、米朝友好を進めることだけはすばらしいものです。朝鮮半島が平和になれば、日本にも大きな利益です。今は北朝鮮のミサイルが脅威だなどと言っていますが、敵対関係にあるから脅威なのであって、友好関係になれば脅威ではありません。

トランプ政権は少なくともあと1年余りは続くので、ここは平和実現の大きなチャンスです。
日本は米朝友好の後押しをするべきです。
韓国と対立している場合ではありません。

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韓国政府は8月22日、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると発表しましたが、これはそれほど大騒ぎすることでしょうか。
GSOMIAが締結されたのは2016年ですから、それ以前に戻るだけのことです。
それに、軍事はアメリカ主導ですから、日米、米韓の連携があれば、日韓の連携は大して重要ではありません。


近ごろのニュース番組とワイドショーは、あおり運転ネタと韓国ネタばっかりで、うんざりします。
どちらも小さい問題だからです。

あおり運転で逮捕された宮崎文夫容疑者の事件などは、ドライブレコーダーの映像がなければ、あおり運転をして人を数発殴っただけの事件ですから、普通は新聞記事にもなりません。
小さな事件に目を奪われていると、その分、大きな事件を見逃している理屈ですから、危ういことです。

韓国ネタも小さなことばかりです。
慰安婦像など世界のどこに何体設置されようと、日本としては「好きにしてくれ」と言うしかないことです。
自衛隊の哨戒機が韓国の駆逐艦からレーダー照射を受けたか否かという問題も、現場で行き違いか勘違いがあっただけのことです。
ただ、徴用工問題だけはどうでもいいとは言えません。カネの問題だからです。


徴用工問題で日韓の主張を整理すると、こういうことです。
日本側の主張は、1965年の日韓基本条約と日韓請求権協定で日本政府は韓国政府に3億ドルを無償供与し、2億ドルを長期低利貸付したので、徴用工への補償はその金から支払われるべきであり、損害賠償請求問題は「完全かつ最終的に解決された」というものです。
韓国側の主張は、個人の損害賠償請求権は存在するので、個人が日本企業を訴えることは可能で、日本企業は裁判所の決定に従うべきだというものです。

個人の損害賠償請求権が存在するということは、実は日本政府も認めています。
 たとえば、1991年8月27日の参院予算委員会では、当時の柳井俊二・外務省条約局長が日韓請求権協定をめぐり、“両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決した”(日韓請求権協定第二条)の「意味」について、以下のように答弁している。

「その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます」
https://lite-ra.com/2017/08/post-3400_2.html

昨年11月14日には、河野外務大臣も、衆議院外務委員会において、個人賠償請求権が消滅していないことを認めました。
ですから、韓国内で個人が在韓日本企業を訴えてカネを取ることは可能だということです。現に韓国の裁判所はそれを認めて、日本企業に賠償金支払いを命じました。

ただ、そうすると日本側としては、日本政府が韓国政府に援助したカネはなんだったのかということになり、納得がいきません。
どちらが正しいかは、第三者的立場の専門家に結論を出してもらわねばなりません。

ともかく現在は、日本側は国家間の問題としては解決していると主張し、韓国側は個人と企業の問題としては解決していないと主張し、次元の違うところで主張がすれ違っているわけです。
いや、見方によっては、双方の考えは同じだとも言えます。
ただ、日本はカネを取られたくない、韓国はカネを取りたいということで、力点の置き方が違うわけです。

このやり取りを第三国から見ると、「カネを払え、払わん」というやり取りですから、まったくどうでもいいことですが、問題が大きくなってくると、注目されます。
そうすると、これはたぶん韓国有利になるでしょう。日本は殖民地支配を反省せず、カネを払いたくないために人道問題をごまかそうとしていると見えるはずです。
日韓請求権協定を盾にすることも、高利貸しが借金の証文を盾にするみたいなものです。
今は人道、人権の価値が高いので、昔の証文の価値が低くなっています。

今後、同じような訴えが韓国内で広がると、日本の損失が拡大するので、日本ははうまく立ち回らねばなりませんが、今のところやり方が下手すぎます。
たとえば、日本は韓国をホワイト国から外す決定をしましたが、これで韓国側が日本企業への損害賠償請求を取り下げてくれるなんていうことはあるはずがありません。かえってこじれて、今回のGSOMIA破棄にいたりました。

安倍首相は8月6日の記者会見で徴用工問題に言及しました。こういう機会に日本を有利にすることを言わねばなりませんが、なんと言ったでしょうか。

安倍首相、韓国は「約束守って」 リスト除外後、初言及
 安倍晋三首相は6日午前、広島市であった記者会見で、日韓関係について「日韓請求権協定をはじめ、国と国との関係の根本にかかわる約束を、きちんと守ってほしい」と述べた。政府が今月2日に、輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国」(輸出優遇国)のリストから韓国を外す決定をしてから初めて日韓関係に言及した。
 安倍首相は会見で、「最大の問題は、国家間の約束を守るかどうかという信頼の問題だ」と指摘。元徴用工問題を念頭に「日韓請求権協定に違反する行為を一方的に行い、国交正常化の基盤となった国際条約を破っている」と述べ、韓国側を非難した。
 日本政府による「ホワイト国」リストの除外に対して韓国は反発。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄する可能性に言及するなど、対立は激化している。
https://www.asahi.com/articles/ASM863HB2M86UTFK008.html

日本側の主張を一方的に述べているだけです。
ここは、韓国側の主張のおかしいところを指摘し、かつ人道上の問題としての認識も示さねばなりません。
たとえば「苦しい思いをされた元徴用工の方々に心からお見舞い申し上げます」といったことです。
安倍首相の得意のフレーズ「寄り添う」を使って、「元徴用工の方々に寄り添う」などもいいでしょう。
それから、安倍政権は村山談話を「全体として引き継ぐ」と言っているのですから、村山談話にある「植民地支配と侵略」「痛切な反省の意」「心からのお詫びの気持ち」といった言葉も駆使するとさらに効果的です。
「言うのはタダ」ですから、どんどん言えばいいのです。
そして、「日本政府は元徴用工の方々への補償も含めて韓国政府に5億ドルの援助をおこなったが、元徴用工の方々が韓国政府から十分な補償を受けていないのであれば、気の毒に思う」と言えば、韓国側の主張のおかしさも明白になります。
元徴用工の気持ちに「寄り添って」話せば、韓国の世論も軟化するはずです。


カネを払いたくない日本としてはそうするのがベストと思いますが、安倍首相にそれができないのは、韓国への差別意識があるからです。
年配の日本人はとりわけ韓国・北朝鮮への差別意識が強く、とくに安倍首相や菅官房長官にそれが顕著です。
差別意識で外交をしていては、国益を損なうのは当然です。

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「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首がマツコ・デラックスさんを攻撃しているのが意外な大騒ぎになっています。

そもそもは、『5時に夢中!』(MXテレビ)7月29日放送でマツコさんがN国や立花党首について、「気持ち悪い」「ふざけて(票を)入れている人も相当数いるんだろうな」と発言したことに立花党首がかみつき、「僕をバカにするのはかまいません。でも僕についてきてくれる100万人の有権者をバカにするのだけは許せない」と言って、同番組の生放送中にMXテレビの前に押しかけて抗議活動をしたことが始まりです。
言論で批判されたことに対してテレビ局に押しかけて実力行使するとは前代未聞です。政治家ではなく街宣右翼のやり方です。

これは言論の自由の危機ですが、立花党首の実力行使は批判されても、その主張はほとんど批判されていません。
というのは、「私を批判するのはいいが、私を支持する有権者を批判するのは許せない」という立花党首の論理を批判できる人がいないようなのです。

立花党首の論理について、メンタリストのDaiGo氏がスポニチの記事で次のような指摘をしています。


DaiGoは「強者が弱者を叩くことは絶対やっちゃいけないこと」と、マツコの行動に対して警鐘を鳴らす。その理由として「強い人が弱い人を叩く時には支持率が低下してしまうんですよ。強い人は“弱い人を救いたい”というモチベーションを持って叩くようにしないと、“お前は地位が高いから好きなように言ってんだろ”ってなっちゃうんです」と説明。DaiGoはマツコに対し「やっちゃったな」という印象を持ったという。

 マツコは7月29日に放送されたTOKYO MX「5時に夢中!」で、N国について「気持ち悪い人たち」「ふざけて入れた人も相当いると思う」との意見を述べていた。この行動にDaiGoは、「大衆は常に弱者ですから。こういう(投票した)人たちに対して叩くことを言っちゃった」と、大きなミスがあったと説明。逆に「これをうまく拾ったのは立花さんなんですよ。彼はこう言ってるんですね『僕をバカにするのは構いません。でもボクについてきてくれる100万人の有権者をバカにするのだけは許せない』。こうなっちゃうと彼が正しくなっちゃうんですよ」と力説した。

 立花党首は100万人の支持者のために戦う「怒れるリーダー」として“得票数を得られる状況”を作り出すことに成功。“マツコvs立花”という1対1の構図ではなく“マツコvs100万人の有権者”という1対大多数の構図に持ち込んだ立花党首に対してDaiGoは「逆に生粋の政治家なんじゃないの」と驚きを隠せなかった。
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2019/08/13/kiji/20190813s00041000387000c.html

DaiGo氏は強者と弱者の関係で説明していますが、有権者は弱者ではないので、この説明はあまり適切ではありません。
私は、身内や家族との関係で説明するのがいいと思います。
つまり立花党首の「私を批判するのはいいが、私を支持する有権者を批判するのは許せない」という論理は、「私を批判するのはいいが、私の家族を批判するのは許せない」という論理と似ているので、批判しにくいのです。

しかし、ちょっと考えればわかりますが、このふたつの論理は別物です。
政治の世界では、有権者は自立していて、自分の判断に責任を持たねばなりません。だめな政党に投票して、国がだめになったら、投票者にも責任があります。
「あんな政党に投票する有権者はバカだ」という批判は普通に成り立ちます。

ただ、「政治の世界」と「政治家の世界」は違います。
「政治家の世界」は有権者の存在によって成り立っているので、「政治家の世界」で有権者批判はタブーです。
野党の政治家が「与党を支持する有権者はバカだ」と言ったら、大問題になります。
安倍首相が選挙演説で聴衆に向かって「こんな人たちに負けるわけにいかない」と言ったことは、与党の政治家からも擁護されませんでした。

同様に「テレビの世界」は視聴者によって成り立っているので、出演者やテレビ局が視聴者批判をするのはタブーです。民放ではスポンサー批判もタブーです。

しかし、それらはその世界だけで成り立つ内輪の論理です。一般の人は「テレビがバカな番組ばかりになったのは視聴者がバカだからだ」と視聴者批判をしてもかまいませんし、「日本の政治がだめになったのは有権者がバカだからだ」と有権者批判をしてもかまいません。

ですから、マツコさんも「N国みたいな気持ち悪い党に投票した人もおかしい」と堂々と主張すればいいのです。

立花党首は政治家内輪の論理で、外部にいるマツコさんを批判するという間違いを犯しました。
しかし、その間違いがまったく批判されません。

立花党首は「5時に夢中!」の生放送のあった19日にもMXテレビの前に現れて抗議活動をし、デイリースポーツの記事によると、『立花氏はマツコを「権力の犬であることがよく分った」「しかし立場もあるのだろう。今度はワンワン鳴かなくなった」と酷評したうえで、「これ以上やるといじめになる」とマツコ攻撃をやめると宣言した』ということです。
まるで勝利宣言です。

立花党首の屁理屈がまかり通るとは、それこそ言論の危機です。

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8月15日、安倍首相は靖国神社を参拝せず、稲田朋美議員が代理人として靖国を訪れて、玉串料を納めました。
安倍首相と思想的に近い稲田議員にふさわしい役回りです。
しかし、稲田議員は、安倍首相自身が参拝しない理由についてはなにも語りませんでした。

安倍首相は、第一次安倍政権のとき靖国参拝を公約にして首相になりましたが、小泉政権で悪化した日中関係を建て直すため靖国参拝はしませんでした。そのことを「痛恨の極み」と言って第二次政権を成立させたので、安倍支持者はみな安倍首相が靖国参拝をするものと思いました。靖国参拝は正式の公約ではありませんが、準公約みたいなものです。
しかし、第二次政権で靖国参拝をしたのは一度だけです。

安倍首相は参拝しない理由を説明しません。
そのため、メディアは首相が参拝しない理由を憶測で書いています。
安倍総理大臣が靖国神社に玉串料奉納 参拝は見送り
安倍総理大臣は終戦の日の靖国神社参拝を今年も見送り、代理を通じて私費で玉串料を奉納しました。

 自民党・稲田朋美総裁特別補佐:「(安倍総理からは)令和の新しい時代を迎え、改めて我が国の平和と繁栄が祖国のために命を捧げたご英霊のおかげであると感謝と敬意を表しますということです」
 玉串料は自民党の稲田総裁特別補佐が代理で奉納しました。「安倍晋三」という肩書で納めたということです。また、これまでに安倍内閣の閣僚の参拝は確認できていません。来年春に中国の習近平国家主席が国賓として来日することなど、改善している日中関係に配慮したものとみられます。一方、自民党の小泉進次郎衆院議員や萩生田幹事長代行は参拝に訪れました。また、超党派の国会議員も集団参拝しました。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000162074.html
この記事は「改善している日中関係に配慮した」と書いています。
普通は、「関係筋によると」とか「政府高官によると」などと情報源が示されるものですが、そういうものがないので、あくまで記者の推測なのでしょう。

ほとんどのメディアが同じ書き方をしています。
その部分だけを抜き出してみます。


朝日新聞
中国の習近平(シーチンピン)国家主席の国賓待遇での来日を来春に控え、改善が進む日中関係に配慮する必要があると判断したとみられる。
https://www.asahi.com/articles/ASM8H32ZLM8HUTFK003.html

時事通信
関係改善が進む中国が首相の参拝に反対していることを踏まえ、日中関係に配慮したとみられる。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019081500291&g=pol

毎日新聞
 首相は13年12月に靖国神社を参拝して以降は、春秋例大祭を含めて靖国参拝を控えている。首相の参拝に反対する中国、韓国への配慮とみられる。↵
https://mainichi.jp/articles/20190815/k00/00m/010/026000c

どれもこれも「配慮」です。しかも、根拠が示されていません。
こういう横並びの記事を平気で書けるのが日本のマスメディアのだめなところです。

そもそも私は、安倍首相が靖国神社に参拝しない理由が中国への配慮のためだとは思いません。
安倍首相が一度靖国参拝したときのことを振り返ってみればわかります。

安倍首相は2012年12月26日に第二次政権を発足させ、翌年4月の靖国神社の例大祭には3人の閣僚が参拝し、安倍首相は真榊を奉納しました。これに対して中国や韓国が反発、それに対して安倍首相が国会答弁で「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない。尊い英霊に尊崇の念を表する自由を確保していくのは当然のことだ」と述べるなどしましたが、オバマ政権も外交ルートを通して懸念を表明したと報じられました。
結局、8月15日に安倍首相は靖国参拝をしませんでした。それに対して支持者の不満は高まりました。
10月には訪日したジョン・ケリー国務長官とチャック・ヘーゲル国防長官が千鳥ヶ淵戦没者墓苑に献花しました。これは安倍首相に靖国差参拝をするなというメッセージと思われました。
しかし、安倍首相は就任一周年の12月26日に電撃的に靖国に参拝しました。
するとアメリカはその日に在日アメリカ大使館のホームページに「日本は重要な同盟国であり友だが、アメリカ政府は日本が隣国と関係を悪化させる行動を取ったことに失望している」という声明を発表しました。
これ以降、安倍首相は靖国参拝をしていません。

この経緯を見れば、安倍首相が靖国参拝をしなくなったのは、アメリカ政府が「失望」を表明したのが決定的だったと思われます。安倍政権は日米同盟重視ですから、中国や韓国の反発は無視できても、アメリカと亀裂をつくるわけにはいきません。
ですから、各メディアが安倍首相が靖国参拝をしない理由を「中国への配慮」だと書くのは納得がいきません。

今はオバマ政権からトランプ政権に変わりましたが、国務省の考え方は同じでしょう。安倍首相がトランプ大統領に頼めば靖国参拝を認めてくれるかもしれませんが、トランプ大統領が見返りを求めるのは確実です。


各メディアがそろって「中国への配慮」と書くのは、「アメリカの圧力」とか「アメリカが許さないから」とか書くと、日本の属国ぶりが露わになってしまうからです。これは日本のタブーです。

本来は安倍首相自身か周辺の人間が理由を説明するべきです。しかし、「アメリカに止められているので」とは言えませんし、「中国に配慮して」と言うと、安倍支持者から「中国になんか配慮するな」という声が上がりそうです。そのためなにも言わないのでしょう。

各メディアは「アメリカ政府が『失望』を表明して以来、安倍首相は参拝をしていない」とか「安倍首相は参拝しない理由を説明していない」というように、事実だけを書くべきです。
根拠もなしに「中国に配慮」という推測を書くのは、安倍政権に対する甘やかしです。

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源五郎さんによる写真ACからの写真 

「表現の不自由展・その後」に寄せられた抗議は、慰安婦像に対するものと天皇の写真を燃やしたとされるものに集中しました。

「天皇の写真は神聖である」という国家神道の立場から、天皇の写真を燃やすことに抗議する人がいるのは、理屈としては理解できます。もちろんそんな宗教的な主張を押しつけることは許されませんが。

では、慰安婦像の展示に抗議する人はどういう理屈なのでしょうか。

ある種の暴力描写や性描写は“有害”なので公開を制限するべきだという考え方がありますが、そういう類ではないでしょう。抗議する人たちも「慰安婦像は見る人に有害だ」という主張はしていないと思います。

そもそも慰安婦像が問題になったのは、2011年12月、ソウル市の日本大使館前に、慰安婦問題で日本政府に謝罪と賠償を求めるデモの1000回目を記念してブロンズの慰安婦像が設置されたことがきっかけです。
ウィキペディアには、『ボン大学のラインハルト・ツェルナー教授も「像自体は平和的に見えるが、基本的に日本を道徳的に非難する物」であると述べている』と書かれていて、これが妥当な評価でしょう。
人間は非難されると、かりに自分が悪い場合でも、自己防衛のために反発するものです。
そのため多くの日本人が反発しました。

その時点では、「慰安婦像」への反発ではなく、日本大使館前に像を設置するという「韓国側の行為」への反発でした。

そして、2015年に日韓合意が結ばれ、安倍首相は元慰安婦に対して「心からおわびと反省の気持ちを表明」し、慰安婦問題は終結しました。
もっとも、日韓ともに不満は残りました。
日本大使館前の慰安婦像もそのままでした。

ここが分岐点だったと思います。
安倍首相が「おわびと反省の気持ちを表明」しているのですから、日本の大使館員たちは慰安婦像の前を通るときに、一礼するなり手を合わせるなり、ときに花を供えるなりすればよかったのです。その姿は韓国民の気持ちを動かし、慰安婦像は日韓友好の象徴にもなったでしょう。

実際は逆の方向に行きます。
日本側は韓国側に対して大使館前の慰安婦像を「適切に解決されるよう努力する」ことを要求し続けました。
これは理屈としてはおかしなことです。慰安婦問題が片付けば、慰安婦像は日本にとっても不愉快な存在ではなくなるからです。
そして、プサンの日本総領事館前に新たに慰安婦像が設置されたことをきっかけに、日本は大使を召還するなどの強硬措置をとりました(このいきさつについては「日韓炎上の黒幕は誰か」に書きました)。
こうして「慰安婦像」問題が始まったのです。

「慰安婦像」問題は日本にとって圧倒的に不利です。
日本がいくら反対しても、韓国側は慰安婦像をどこにでも設置することができるからです。現に韓国に多数あるだけでなく、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ドイツなどにも設置されています。
それに、慰安婦像は正しくは「平和の少女像」といい、作者が「少女像は反日の象徴ではなく、平和の象徴である」と語っているように、いかにも清純そうな少女の姿です。そういう像の設置に反対する日本は、誰が見ても変な国だということになります。
日本が慰安婦像に反対することは、反日的韓国人の思うつぼです。

日本としては「慰安婦像」問題を早く終わらせなければなりません。
その方法は簡単です。
安倍首相が元慰安婦に対して「心からおわびと反省の気持ちを表明」したのですから、日本人は慰安婦像に頭を下げて、「おわびと反省の気持ち」を示せばいいのです。

もっとも、私は像などに頭を下げるのは宗教的ないし呪術的行為と思うので、したくはありません。
今、慰安婦像に反対している人は慰安婦像を呪物と見なしているわけですから、考え方を転換すれば、頭を下げることに抵抗はないはずです。
安倍支持者は率先して慰安婦像に頭を下げて、日韓友好に貢献するべきです。

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「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止になったのは、テロ予告の脅迫などがあった以上やむをえないかと思いますが、今後同じようなことがある場合に備えて、理論武装をしておくにしくはありません。

芸術祭の事務所や愛知県庁に寄せられた抗議のメールや電話は、半数が慰安婦像に関するもので、4割が天皇の写真に関するものだったそうです。
慰安婦像については前回の「いまだに慰安婦像にこだわる愚」という記事で書いたので、今回は天皇写真について書きます。


「表現の不自由展」の内容は、次の記事が紹介していました。

「表現の不自由展」は、どんな内容だったのか? 昭和天皇モチーフ作品の前には人だかりも《現地詳細ルポ》


大浦信行氏の「遠近を抱えて」という作品があって、昭和天皇の写真がコラージュされています。これが富山県立近代美術館に展示されたとき、抗議によって公開中止となり、美術館は作品を売却、図録を全部焼却するという事件がありました。その後、大浦氏は映像作品の中で「遠近を抱えて」の図像を繰り返し用い、「表現の不自由展」のために制作された映像作品には「作品を燃やすシーンが戦争の記憶にまつわる物語のなかに挿入され」ているということで、それが今回問題になりました。

私はその映像作品を見ていないのでなんとも言えませんが、「表現の不自由展」に抗議した人もほとんどは見ていないはずです。「天皇の写真が燃やされる」という情報だけネットで見ているのです。小説でも映画でも自分が鑑賞せずに批判するというのは、してはいけないことです。

慰安婦像に抗議する人も、ニュース番組などで慰安婦像を見ているだけでしょう。一度本物を自分の目で見ることには価値があります。

ともかく、「天皇の写真が燃やされる」ということに抗議する人はどういう論理なのでしょう。
どこかの未開人は写真を撮られると魂を抜かれると信じているという話がありますが、同じ論理で写真には魂が宿っていると信じているのでしょうか。


帝国憲法では、「天皇ハ神聖ニシテ侵スベカラズ」でしたし、ご真影も同様に神聖とされていました。ですから、「天皇の写真は神聖である」という理屈が成り立ちます。

しかし、日本国憲法では、天皇は「象徴」であり、「神聖」という言葉はありません。昭和天皇は人間宣言をして、現人神でなくなりました。
しかし、天皇家は神道の儀式を行い、世襲制という特別な地位もあります。
つまり現在の日本においては、天皇は神聖とは言えないが、神聖でないとも言えないというグレーゾーンの存在です。

天皇が神聖であるとも神聖でないとも言えないグレーゾーンの存在であることが、天皇制を巡る議論をむずかしくしています。

保守派は「天皇は神聖である」と言いたいのですが、はっきり言うと反発を招くので、言えません。
リベラルも「天皇はただの人間である」と言うと反発されるので、なかなか言えません。


そういう状況で「天皇の写真を燃やす」作品が問題になりました。
抗議する側は、「天皇の写真は神聖である」と考えています。しかし、そう口に出すと反発されるので、理由を言わずにひたすら「けしからん」と主張します。
ですから、「天皇の写真を燃やすのはなぜいけないのですか」と聞けばいいのです。そうすると彼らは答えに窮するはずです。
「天皇の写真を燃やすと傷つく人がいる」と言うかもしれませんが、作品を見るのは美術展に行く人だけですから、傷つく人はいません。


「天皇の写真は神聖である」という考え方は呪術的思考です。
「慰安婦像はけしからん」というのも呪術的思考です。
最近の日本の右翼は、天皇の写真、慰安婦像、徴用工像、旭日旗などの“呪物”にばかりこだわっています。

こうした呪術的思考を打ち破るのは合理主義精神です。
その具体的な手段のひとつは、「国益追求」を掲げることです。
本来「国益追求」というのは右翼の専売特許なのですが、今は逆です。

たとえば「れいわ新選組」の山本太郎代表は、最近の日韓関係について、「 日本から韓国への輸出総額は6兆円(2.8兆円の貿易黒字)ですよ。この6兆円がなくなってもいいと思うなら、好きなことを言ってください」「ホワイト国除外をすることによって、日韓の間柄における輸出入に大きな障害が出来たことは間違いない。『それによって得られるものは何なのか』と言ったら私はマイナスの部分しか見えない」と言って、安倍政権のやり方を批判しました。
https://lite-ra.com/2019/08/post-4893.html

相手が呪術的思考だとわかれば、おのずと対処の方法もわかってきます。

菅官房長官
首相官邸ホームページより

「表現の不自由展」が「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」といったテロ予告の脅迫などによって中止に追い込まれました。
こうした脅迫はもちろん犯罪です。愛知県庁は被害届を警察に提出し、警察は8月7日に50代の会社員の男を威力業務妨害容疑で逮捕しました。

この事態に直面して、とんだ馬脚を現したのが菅義偉官房長官です。
5日の記者会見で、
「一般論で言えば、暴力や脅迫はあってはならないことだ」
と言ったのです。

「一般論で言えば」という前提をつけると、「個別には暴力や脅迫はあってもいい場合がある」という意味になります。
「いかなる場合も、暴力や脅迫はあってはならないことだ」と言うのが当然です。
自分と同じ思想傾向のテロ予告犯を批判したくない気持ちが「一般論で言えば」という言葉になって表れたのでしょう。


菅官房長官の嫌韓感情は筋金入りです。
菅官房長官は2014年1月、中国黒竜江省ハルビン駅に朝鮮独立運動家・安重根(アンジュングン)の記念館が開館したことについて、中国と韓国に外交ルートを通して抗議し、「安重根は我が国の初代首相を殺害し、死刑判決を受けたテロリストだ」と非難しました。
他国がどんな記念館をつくろうが、それは内政問題であり、日本が抗議するとはまともではありませんし、韓国では英雄とされている安重根を「テロリスト」呼ばわりするのも韓国人の神経を逆なでします。

このことは日本では小さくしか報道されませんが、韓国では大きな反発を生んで、こうしたことも日韓のずれを生みます。

菅官房長官は外交問題ではつねに慎重なもの言いをするのに、韓国に対してだけは即応してきびしい言い方をします。


日韓関係があまりに悪化し、アメリカの安保政策にも悪影響が出るほどになったので、オバマ政権の強力な介入で、2015年12月に慰安婦問題についての日韓合意が結ばれました。
この合意には「安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」という言葉がありますが、これは岸田文雄外相が読み上げただけで、安倍首相の口から語られることはありませんでした。そのためのちのち、「安倍首相は謝っていない」と韓国から言われることになります。

日韓合意には、在韓国日本大使館前の少女像について韓国政府は「適切に解決されるよう努力する」という言葉がありますが、少女像はそのままでした。
さらに2016年12月、釜山の日本総領事館前に少女像が設置されました。区当局はすぐに像を撤去し、抵抗した市民団体のメンバー13人が逮捕されましたが、区に抗議の電話が殺到し、結局設置を認めることになりました。

これらに対して、日本では日韓合意違反だという声が上がりましたが、民間の動きを韓国政府がコントロールできるはずがなく、「努力する」ということはなされているでしょう。
しかし、菅官房長官は「韓国国家として約束したことは履行してほしい」と言い、2017年1月には在韓日本大使の召還と日韓通貨スワップ協定の取り決め協議の中断などの強硬措置を発表しました。

これはちょうどオバマ政権からトランプ政権に移行するときで、アメリカ政府が動けないのを見越した菅官房長官の機敏な対応でした。
その後、トランプ政権は日韓関係に興味がないことが明らかになり、日韓関係は以前と同じように悪くなってしまいました。


以前と根本的に違うのは、以前は「慰安婦」問題でもめていたのに、今は「慰安婦像」問題でもめているということです。問題がすっかり矮小化されました。

慰安婦像(平和の少女像)自体は、清純な少女を描いたもので、なんの悪意も込められていない立派な芸術作品です。
像を設置する人間には悪意があるかもしれませんが、悪意が像に宿ることはありません。
像に不快を感じる日本人がいるのは、内心にやましさをかかえているからでしょう。

慰安婦像を設置しているのは韓国の民間団体です。これをやめさせることは誰にもできません。現に世界各国に慰安婦像が設置される結果となりました。
慰安婦像設置をやめさせようとした日本政府の方針が根本的に間違っていたのです。

日本では、韓国が日韓合意に反したという声が多くありますが、韓国側はあくまで民間団体の動きです。
一方、日本側の大使召還などは日本政府の動きですから、どちらが日韓合意に違反したかというと、日本側です。
韓国の反日は民間主導、日本の反韓は政府主導です。
韓国人には殖民地支配などの恨みがありますが、日本人は韓国にひどい目にあわされたという体験はないので、当然です。
日本の反韓の動きは、安倍首相と菅官房長官と一部の日本人がつくりだしているだけです。


日本にいると、日本に都合のいい情報ばかりが入ってきます。
頭の中で情報を補正して、公平な判断をするようにしないといけません。

日韓の争いは、要するに兄弟喧嘩です。
オバマ政権は親として兄弟喧嘩に介入して、双方に「ごめんなさい」を言わせて、喧嘩を収めました。
ところが、親がトランプ大統領に代わったら、また兄弟喧嘩が始まったという格好です。

兄弟といっても、日本が兄で、韓国は弟です。日本が朝鮮の近代化を導き、今でもGDPは日本が韓国の4倍くらいあります。ノーベル賞でも圧倒的な差です。
兄弟喧嘩は、兄貴分の日本が先導して収めるべきでしょう。

韓国を対等な相手のように見なして喧嘩している日本人は、日本人から見ても、ちょっと情けない人です。

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韓国 ソウル 日本大使館前の少女像 (源五郎さんによる写真ACからの写真) 

国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の中の企画「表現の不自由展・その後」が、電話やメールによる抗議や脅迫が殺到したことで中止に追い込まれました。

過去に美術館や展覧会などから撤去されたり、内容の変更を求められたりした作品を集めるという企画ですから、ある程度の抗議は想定していたはずですが、朝日新聞によると、開幕した8月1日だけで抗議は電話200件、メール500件、事務局は抗議電話に対しては意見を聞く姿勢で、職員も増強しましたが、電話やメールは愛知県庁にも寄せられ、対応に忙殺され、芸術祭の運営そのものに支障をきたしかねないところまで追い込まれたということです。抗議の内訳は、慰安婦像に関するものが半数で、昭和天皇を想起させる作品に関するものが4割程度でした。

「抗議電話には意見を聞く姿勢」というのがどうだったのでしょうか。

こういう“電凸”をする人は、いわゆるネトウヨで、ネットで情報を共有して集中的に抗議のメールや電話をしてきます。企業に消費者がクレームをつけてくる場合は、いくら理不尽な主張であっても、企業は対応しなければなりませんが、こういう「抗議のための抗議」にまともに対応するのは戦略の誤りです。

こういう抗議をしてくる人は、匿名だから卑劣なことができるのです。「撤去しなければガソリン携行缶を持ってお邪魔する」というファックスもあったということです。

メールやファックスは放っておけばいいことですが、電話はそうはいきません。
電話の抗議に対しては、「匿名の電話には対応しません」と言って、向こうの名前と電話番号を聞いて、こちらから電話をかけ直すというやり方をすればいいのです。そのときの会話は、相手の了承を得て録音します。
もちろん名乗らない相手には、すぐに電話を切ります。

「余命三年時事日記」というブログに扇動されて、多数のネトウヨが特定の弁護士に懲戒請求をするという出来事がありましたが、懲戒請求は実名で行われたため、弁護士から逆に慰謝料請求の訴訟を起こされ、次々と慰謝料支払いを命じる判決が出て、ネトウヨがあわてるという事態が現在進行中です。

匿名だから卑劣な行為ができます。
「実名の抗議電話には意見を聞く姿勢」がよかったのではないでしょうか。


匿名で脅迫する人間も卑劣ですが、それに便乗して表現の自由を冒そうとする人間はもっと卑劣です。
河村たかし名古屋市長は、「日本国民の心を踏みにじる行為で、行政の立場を超えた展示」として、展示中止を求める抗議文を出しました。松井一郎大阪市長も、「われわれの先祖があまりにも人としての失格者というか、けだもの的に取り扱われるような展示」として批判しました。
個人としてどんな思想を持つのも自由ですが、展示をやめろと主張することは表現の自由を冒すこと以外のなにものでもありません。

なお、河村市長と松井市長が言っているのは、慰安婦像(正しくは「平和の少女像」)のことと思われますが、この像にはなんの悪意も込められていません。
つけ加えると、安倍首相も2015年の日韓合意において「日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明」しているので、慰安婦像に文句をつける意味がわかりません。


かつての日本で表現の自由が制限されたのは、わいせつなどを別にすれば、社会主義思想を弾圧するためであり、戦争遂行のために反戦思想や厭戦表現を抑えるためでした。つまり一応、国家の存続に関わることでした。
ところが、今回の表現の自由の問題は、主に慰安婦像のことです。

「慰安婦像」と「表現の自由」では、重さが違いすぎて、天秤にかけることもできません。

いまだに慰安婦像にこだわって電凸などする人間は、日本の国益を損なうだけです。

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8月1日、臨時国会が召集され、参院選の当選者が初登院しましたが、やはりマスコミがいちばん注目したのは、れいわ新選組から当選した重度障碍者の舩後靖彦氏と木村英子氏でした。
NHKから国民を守る党も、よくも悪くも話題を提供しています。
このふたつの党が政治に新風を吹き込んだことは確かです。

これまで日本の政治は、二大政党制を目指して選挙制度を改革してきましたが、ダイバーシティのたいせつさが言われる時代に逆行しています。多数のベンチャー政党ができたほうが日本は活性化します。

二世、三世の議員がいっぱいいる政治の世界はすっかり時代遅れになり、それを象徴するのが改憲論議です。
安倍首相は参院選でも「改憲論議をする政党かしない政党か」と改憲を争点にしましたが、朝日新聞が7月13日、14日に実施した世論調査によると、「安倍首相に一番力を入れてほしい政策」で「憲法改正」を選ぶ人はごくわずかです。

◆あなたが、安倍首相に一番力を入れてほしい政策は何ですか。(択一)
 景気・雇用 17
 年金などの社会保障 38
 教育・子育て 23
 外交・安全保障 14
 憲法改正 3
 その他・答えない 5
https://www.asahi.com/articles/ASM7R4JD4M7RUZPS007.html

しかし、世の中には改憲に強硬に反対する人もいるので、安倍首相が改憲を訴えると反対の声も上がり、なんとなくそれが争点のようになります。
改憲に強硬に反対する人も安倍首相と同様に時代遅れです。

そもそも2016年に安保法制が成立したときに「解釈改憲」が行われたので、今では改憲してもしなくても大した違いはありません。
安倍首相も改憲する理由に、自衛隊員が目に涙を浮かべた子どもから「お父さんは違憲なの?」と聞かれたという話をするほどです。

ですから、安倍首相も本気で改憲する気はありません。それは自民党の発表した「改憲4項目」を見てもわかります。本気なら憲法九条に絞ったはずです。4項目も議論していたら、いつまでたってもまとまりません。

4項目というのは、「9条改正」「緊急事態条項」「参院選『合区』解消」「教育の充実」です。

「9条改正」というのは、現行の9条をそのままにして、そのあとに2項を付け加えるというもので、このようになります。


〔戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認〕
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
第9条の2
 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
②自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/constitution/news/20180326_01.pdf

「戦力は、これを保持しない」と言ったすぐあとに、「実力組織として」「自衛隊を保持する」と言ったのでは、「戦力」と「実力」という言葉遊びをしているとしか見えません。
これでは改憲派の人もがっかりではないでしょうか。この案は昨年の3月に発表されているのですが、改憲派が盛り上がったという話は聞きません。

「教育の充実」というのも、やはり第26条の1と2はそのままに、3を付け加えるというものです。


〔教育を受ける権利と受けさせる義務〕
第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
3 国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない。

第3項はただの美辞麗句です。わざわざ憲法改正してつけ加える意味がありません。
要するに9条改憲がお粗末なため、ほかの項目を並べて、印象を薄める作戦なのでしょう。

ほんとうに危険なのは「緊急事態条項」で、自民党の真の狙いはこれだという説もありますが、改憲案を知れば知るほど、国民の改憲意欲はなくなっていくでしょう。

そもそも9条改憲は、アメリカの要請と、戦前の日本へのノスタルジーから求められたのですが、「解釈改憲」によりアメリカの要請は満たしました。戦前の日本へのノスタルジーも、若い人には理解されないでしょう。

改憲派も護憲派も、後ろ向きの論議はやめて、前を向くべきです。

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