村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

2019年11月

厚生労働省が制作した「人生会議」PRポスターに各方面から反発の声が上がり、自治体への発送が中止されることになりました。

日本赤十字社が「宇崎ちゃん」という巨乳おバカキャラを使って献血キャンペーンをして炎上したのに似ています。どちらも医療関係で、インパクトのあることをやろうとして、失敗しました。

問題のポスターがこれです。

人生会議

ポスターの文章の部分を書き出しておきます。

まてまてまて
俺の人生ここで終わり?
大事なこと何にも伝えてなかったわ
それとおとん、俺が意識ないと思って
隣のベッドの人にずっと喋りかけてたけど
全然笑ってないやん
声は聞こえてるねん。
はっず!
病院でおとんのすべった話聞くなら
家で嫁と子どもとゆっくりしときたかったわ
ほんまええ加減にしいや
あーあ、もっと早く言うといたら良かった!
こうなる前に、みんな
「人生会議」しとこ

「人生会議」とはなにかというと、厚生労働省によると、「もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組のこと」です。
これは「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と言ってきましたが、一般に普及させるために厚労省が「人生会議」という愛称をつけました。


厚労省がこのポスターのデザインを発表すると、たとえば全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は、「『人生会議』は終末期だけを考えるのではなく、患者が自分らしく生きることを支える試み。このポスターは“支える”という部分が欠けていて死ぬ直前の部分しかない。これは『人生会議』というよりは、『死に方会議』のポスターです」とフェイスブックに書き込みました。
また、卵巣がん体験者の会「スマイリー」の片木美穂代表は、「これを目にする治療に苦慮する患者さんや残された時間がそう長くないと感じている患者さんの気持ちを考えましたか?  そしてもっと患者と話をすれば良かったと深い悲しみにあるご遺族のお気持ちを考えましたか?」などと書かれた抗議文を厚労省に送付しました。

一方、ポスターを擁護する声もあります。インパクトがあるとか、死はきれいごとではないといったものです。


私の考えを言えば、このポスターはまったくだめです。炎上して当然です。
このポスターが病院の待合室に張られていたら、目にした人は、患者であれ家族であれ、どんな気持ちになるかと想像すればわかるはずです。おそらく全国から抗議が殺到したでしょう。
病院でなくて市役所などに張られていても、同じようなものです。

このポスターは、制作者の意図はともかく、心電図がフラットになっていることからして死の瞬間と想像され、怨念を残して死んでいく人間の姿と見えます。
端的に言うと、この人の顔は般若の面のようになっています。
怨念を残して死ぬのは最悪の死です。これが映画なら、この人は化けて出るはずです。

なぜそんな印象になるかというと、ポスターに起用されたお笑い芸人の小藪千豊氏が、説教したり小言をいったりするキャラだからです。
ポスターの文章に「大事なこと何にも伝えてなかったわ」「もっと早く言うといたら良かった!」とあるように、ここは反省、後悔、自責の気持ちが表現されなければなりませんが、小藪氏のキャラのせいで(あるいは演出家の意図のせいで)、まったく違うものになりました。

小藪氏は「人生会議」という愛称を決めた選定委員を務めていましたから、単にポスターの写真に出ただけではありません。
そして、小藪氏の所属する吉本興業は、このポスターの制作を請け負っていました。
ポスターは約1万4千枚制作され、その費用は厚労省によると「吉本興業と4070万円の委託価格で契約した」ということです。
こうしたポスター制作は広告代理店などがするものと思っていましたが、今や吉本興業は「安倍首相のお友だち」なので、こうしたところにまで食い込んでいたわけです。

ポスターの中で小藪氏は「ほんまええ加減にしいや」とおとんに突っ込んで、お笑いの常道を演じていますが、死んでいく人間がそんなことを思うはずがありません。
しかし、コントや新喜劇の芝居なら成立します。小藪氏は新喜劇の座長であり、吉本興業はお笑いを武器にする会社です。
吉本興業は「お笑い」を優先し、結果的に「死」を軽視するこの企画を厚労省に提出したわけです。
厚労省は当然、「ここはまじめに死を扱ってください」と言って、その企画にダメ出しするところです。

しかし、安倍首相は吉本新喜劇の舞台に立ったことがあり、新喜劇の芸人が首相官邸を表敬訪問したこともあり、両者の関係は密接です。
官僚は安倍首相を忖度して、ダメ出ししなかったのでしょう。
その結果、炎上ポスターができあがってしまったのです。

この問題は、モリカケ問題や「桜を見る会」問題と同じです。
長期政権によって、どこを切っても金太郎飴のように、安倍首相、安倍首相のお友だち、忖度官僚の三者の顔が出てきます。

台湾の金門島に行きました。

金門島というと、台湾と中国の中間ぐらいの位置にあると思っている人が多いのではないでしょうか。
実際は、中国本土の一部としか思えない位置にあり、中国の厦門市の高層ビル群が肉眼で見えます。金門島

日本が台湾を統治していたときも、金門島は統治していません。ずっと中国の一部であったわけです。

中国大陸の戦いで負けた国民党軍は台湾と金門島に逃げました。
共産党軍は1949年に金門島に上陸し、国民党軍と激戦を繰り広げますが、撃退されます。これを古寧頭戦役と言います。
1958年には共産党軍が本土から島に向けて大規模な砲撃を行い、国民党軍も砲撃で応戦しました。8月23日から10月5日まで行われたので、台湾では八二三砲戦と呼ばれています。
砲戦はそのあとも1979年まで断続的に続きました。
ですから、金門島は中国・台湾対立の最前線です。

金門島にはさまざまな戦跡があるので、私が見た範囲のものを紹介します。


翟山坑道
砲爆撃に耐えられるように地中を掘ってつくられた船着き場です。
入口の前に戦車や高射砲、上陸用舟艇などが陳列されています。
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坑道は「A」の字型をしています。
今は出入口がせき止められているので、水面が鏡のようです。
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ありがたい軍人精神も書かれていました。
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馬山観測所
ここは中国大陸にいちばん近い場所になり、軍の観測所が設けられました。これも完全に地下化されています。
入口からやたら長いトンネルが続きます。
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ここでは中国向けのプロパガンダ放送も行われ、テレサ・テンも放送に協力したということで、等身大の写真がありました。
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観測所からの眺めです。手前に見えるのは中国領の島で、その向こうにぼんやり見えるのが中国本土です。
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獅山砲陣地
地下陣地の砲台です。
ここにも入口前に大砲などが展示されています。
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ここでは1日に4回ほど本物の兵士が大砲を操作して発射の実演をするのが観光名物になっています。
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北山古洋楼
古寧頭戦役の激戦で銃弾の跡の残った建物が今も保存されています。
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慈湖落日観海平台
海岸に設けられた三角堡というトーチカがあります。
周囲に戦車が展示されています。
海岸には敵の上陸を阻止するための障害物が設置されています。

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古寧頭戦史館
絵画と兵器などが展示されていますが、内部は撮影禁止です。

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ここの展示物はたいしたことありませんが、館員に言えば、日本語バージョンの13分の解説ビデオを見せてくれます。これを見れば、金門島における中国と台湾の戦争の概略がわかります(あくまで台湾側の見方ですが)。

なお、ここを含めて金門島内のすべての観光施設は無料です。

第二次大戦が終わってから始まった国共内戦で、国民党軍は連戦連敗で、とうとう海に追い落とされたわけですが、金門島における戦いでは国民党軍が勝利します。これは不思議なことです。
解説ビデオによると、第二次大戦で使って廃棄される予定の米軍戦車を国民党軍は使用したということです。これが大きかったのではないでしょうか。

また、八二三砲戦では、途中から投入された米軍の 203mm榴弾砲の威力がすさまじく、二発撃っただけで共産党軍は核爆弾だと誤解して戦意を喪失し、国民党軍の勝利につながったのだということです。
砲撃を核爆発と間違えることなどあるわけがないと、そのときは思いましたが、あとで調べてみると、当時は米軍が空母を近海に出動させていて、核攻撃の可能性も言われていたということです。兵隊の心理としてそういうこともあったかもしれません。

なお、古寧頭戦役で国民党軍が勝利したのは日本人の力があったからだということを、門田隆将氏が「この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡」というノンフィクションで書いています。しかし、タクシーの運転手に「戦いに日本人も参加したことを知っているか」と聞いたところ、まったく知らないようでした。


金門島の現在
そうした歴史を振り返ると、金門島は今も最前線の緊張に包まれていそうなものですが、全然違います。
中国本土からフェリーで多くの観光客が金門島を訪れ、本土からパイプラインで水道水が供給されるようになり、中国本土との一体化が進んでいます。
そもそも大砲陣地や観測所が観光地化していることを見ても、緊張感のないのがわかります。

重要な陣地は隠されているのでしょうが、私は金門島に3日間滞在して、獅山砲陣地で大砲発射の実演をした兵士以外に軍服の兵士は見かけませんでしたし、軍用車両も見ませんでした。

現代の戦争は、上陸して島を占領するとか、砲撃戦をするとかではなく、航空戦で決着するのかもしれません。
もっとも、航空戦で勝利したからといって、昔みたいに領土や市場や賠償金が得られるわけでもありません。

そういうことを考えると、最近の自衛隊は離島奪還演習をよくやっていますが、果して意味があるのかと考えてしまいます。


風獅爺(おまけ)
金門島は風が強く、風獅爺という風よけの守護神みたいなものがあちこちに置かれています。
シンガポールのマーライオンや沖縄のシーサーにも似ています。華僑を通して文化の交流があったのでしょう。

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沢尻エリカ容疑者が合成麻薬MDMAを所持していたとして11月16日に逮捕されたとき、安倍首相の「桜を見る会」私物化問題がマスコミに騒がれていたタイミングだっただけに、世間の関心をそらすための逮捕ではないかという憶測を呼びました。

私が最初にネットで目にしたのは、東ちづるさんが「法を犯した芸能人の逮捕に、必要以上に大騒ぎしなくていいです」「騒ぐべきは、政治家や特権階級の人たちが法を犯しても逮捕されてない現実にです」とツイートしたという記事です。
それから、ラサール石井さんが「まただよ。政府が問題を起こし、マスコミがネタにし始めると芸能人が逮捕される。これもう冗談じゃなく、次期逮捕予定者リストがあって、誰かがゴーサイン出してるでしょ」とツイートしたという記事もありました。

そして、堀江貴文氏がこの件に関して、「こいつあたまが腐ってる」と非難したというニュースを目にしました。
「あたまが腐ってる」とは尋常な言葉づかいではありません。いったい誰を非難したのかが気になって、記事を見てみました。

堀江貴文氏「まじ狂ってる」沢尻政権陰謀説に反論
ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏(47)が、女優の沢尻エリカ容疑者(33)の逮捕をめぐりネット上でささやかれている“政権陰謀説”についての鳩山由紀夫元首相(72)のコメントに反論した。
鳩山氏は18日、ツイッターを更新し、「沢尻エリカさんが麻薬で逮捕されたが、みなさんが指摘するように、政府がスキャンダルを犯したとき、それ以上に国民が関心を示すスキャンダルで政府のスキャンダルを覆い隠すのが目的である」とコメントした。
堀江氏は鳩山氏の発言に、「まじで、ほんとにこいつあたまが腐ってる。こんな奴が総理大臣やってたとかまじ狂ってる」とツイート。「つかよ、お前よ、政権の中枢にいたろ?芸能人の麻薬逮捕ネタで覆い隠そうとか事実上できないのとかよくわかってるよな?」と反論した。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201911190000183.html

ホリエモンが非難したのは鳩山由紀夫氏でした。

ホリエモンのツイートに対して、「鳩山氏のことよりも安倍首相のほうを批判するべきだ」などの反論もありましたが、それよりも「あたまが腐ってる」とか「こいつ」とか「まじ狂ってる」とかの言葉づかいの悪さに対する反響のほうが大きかったようです。

鳩山氏を批判しても世の中がよくなるわけではないので、ホリエモンの言葉づかいの悪さだけが浮き上がります。
沢尻エリカ容疑者逮捕で政府の陰謀論を述べた人はほかにもいるのに、ホリエモンはなぜ鳩山氏だけ、しかも言葉をきわめて非難したのでしょうか。

キーワードは「首相」と「逮捕」です。


2005年、いわゆる郵政解散による総選挙のとき、ホリエモンは小泉純一郎首相にとくに請われて、自民党の公認や推薦はありませんでしたが、実質的に自民党候補として出馬したことがあります。つまり「首相のお友だち」だったわけです。
ところが翌年、ホリエモンは東京地検特捜部に逮捕され、最終的に実刑判決を受けます。
これがなんの罪であるのか、私は当時から何回説明を聞いてもよくわかりません。
ホリエモンも最高裁まで争ったのですから、判決には納得していないはずです。

当時、ホリエモンはプロ野球の球団買収やTBS買収に動いて、世の中をかき回していましたから、検察に目をつけられたのでしょう。
検察は独立性があって、小泉政権でもコントロールできませんでした。ですから、首相のお友だちでも逮捕されます。
というか、検察によるホリエモン逮捕は、小泉改革が進んで官僚組織の利権に及びそうになっていたことへの警告の意味があったでしょう。
私の個人的な推測ですが、小泉首相がまだ人気があったのに引退したのは、検察にスキャンダルを握られるなどして引退に追い込まれたのではないかと思っています。


ところが、安倍政権においては、検察も警察も完全にコントロールするようになりました。そのため首相のお友だちは絶対に逮捕されません。その典型は、安倍総理を持ち上げた「総理」という著書のある元TBS記者の山口敬之氏が伊藤詩織さんをレイプしたとして逮捕状まで出ていたのに、直前になって逮捕状が執行停止になったケースです。虚偽答弁をして公文書改ざんを指示した財務省の佐川宣寿氏も逮捕されません。一方、安倍首相と対立した籠池夫妻はたちまち逮捕され、長期に拘留されます。

ホリエモンはそれを見ていて、首相のお友だちなのに逮捕された自分と引き比べて、深い憤りを感じたでしょう。

そうしたところに鳩山元首相が沢尻容疑者逮捕について言及しているのを知り、「首相」と「逮捕」のキーワードが一致した瞬間、日ごろからたまっていた憤りに火がついて、怒りが爆発したのでしょう。
しかし、その怒りをぶちまける先が間違っていました。

本来は自分を逮捕した検察と実刑判決を下した裁判所に怒りを向けたいところですが、それは社会的に認められません。
そこで、いちばん安易なやり方として、今は権力のない鳩山元首相に向けたのでしょう(おそらくホリエモンは権力批判ができない人なのです)。

鳩山元首相らの主張する「『桜を見る会』問題からマスコミの目をそらせるための沢尻容疑者逮捕」説は証拠がなく、推測にしかすぎません。しかし、可能性はあるので、その説を唱えたからといって、「あたまが腐ってる」などと非難されるいわれはありません。

ホリエモンは、自分がなにに怒っているのかを自覚するべきです。
「小泉首相のお友だちの俺は逮捕されたのに、安倍首相のお友だちが逮捕されないのはけしからん」というのが正しい怒り方です。

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色彩が人間の心理に影響を与えることは知られていて、いろいろなことに応用されていますが、刑務所の部屋をピンク色にすると、囚人の攻撃性が低下し、おとなしくなるという心理学研究が発表されました。

「牢屋の壁をピンクに塗ると囚人の攻撃性が下がる」画期的なはずのアイディアがなぜか物議に

この記事から一部を引用します。

この「沈静のピンク」はスイスの10の刑務所で採用され、4年後には刑務官らによって囚人に特筆すべき暴力性の低減が見られたことが報告されました。Späth博士は同時により早いリラックス効果もあることを指摘しています。

この「沈静のピンク」はスイスを飛び出してドイツの複数の刑務所でも採用されているとのこと。Späth博士は空港のセキュリティエリアや学校、精神病院でも採用すべきだと提案しています。

ただ、スイスの元受刑者は「まるで『小さな女の子の寝室』のような牢屋に入れられるのは極めて屈辱的だった」と語ったということで、受刑者にとっていいことなのかという疑問が記事には書かれています。

私が感じた疑問は、刑務所にいる間は攻撃性が低下しても、刑務所を出たら元に戻るのではないかということです。そうであれば、看守がちょっと楽ができるだけのことで、たいした意味はありません。

ピンク色が人間の攻撃性を低下させるなら、むしろ刑務所以外での活用が本線でしょう。
記事には、空港のセキュリティエリア、学校、精神病院が例として挙げられていますが、方向性が間違っています。
とくに学校と精神病院を並べているところなど、この心理学博士の思想が心配です。
ミシェル・フーコーが刑務所、学校、病院、兵営、工場を一望監視施設として管理主義の観点から論じたことが想起されます。

攻撃性を低下させる必要のある人間は誰かというと、刑務所や学校の中にはいません。いるのはたとえばホワイトハウスです。
ホワイトハウスをピンクハウスにするべきです。建物の外観だけでなく内装もピンク色にします。
ロシアのクレムリンとか中国の国務院とかも同じです。
国家の指導者のいる場所をピンク色にすると、世界がより平和になります。

日本の場合は、国会議事堂内部が暗く古色蒼然とした雰囲気で、しかも絨毯が鬱血を想像させるような赤黒さで、議員の心理にも悪影響があるに違いありません。
内装をピンク色にするだけでなく、ガラス張りの明るい雰囲気で、中庭の緑が眺められるような建物にすれば、日本の政治もよくなるのではないでしょうか。

また、政治家などが使う公用車もたいていは黒塗りですが、これもピンク色にするべきです。

暴力的な映画は年齢制限がかけられて、子どもは見れないようになっていますが、これも方向性が違います。
暴力的な映画は政治家や国家の指導者にこそ見せないようにするべきです。
戦争映画はたいてい、主人公の側の軍隊が敵兵をバタバタと倒して勝利することになっていますが、国の指導者がこんなものを見て勘違いすると危険です。

ユネスコ憲章の前文には、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」とありますが、ユネスコは教育の機関でもあるので、これは子どもの心に平和のとりでを築くという意味だと理解されています。
しかし、これも方向性が違います。子どもはおとなを手本にして成長するので、おとなを変えずに子どもだけ変えようとしてもうまくいきません。おとなを変えるべきです。


とはいえ、おとなを変えるのもたいへんなことです。
ホワイトハウスをピンクハウスにするのは、ネズミがネコの首に鈴をつけるのに似ています。
しかし、正しい方向性さえ認識していれば、少しずつでも世界をよくしていくことができます。

桜を見る会
平成31年4月13日  総理主催「桜を見る会」の開催(官邸HPより)

安倍首相の「桜を見る会」の私物化を見ていると、スケールは小さくても、モリカケ問題と構造がまったく同じです。

①安倍首相に近い人間に不当に利益が与えられる。
②それを指摘されると「まったく問題はない」と主張する。
③さらに追及されると、嘘や証拠廃棄を重ねて逃げ切る。

そして、今回も証拠の廃棄が行われました。

桜見る会「招待は適正」 内閣府幹部、名簿を廃棄
内閣府の大塚幸寛官房長は12日の衆院地方創生特別委員会で、安倍晋三首相の地元後援会員が多数招待された疑惑が指摘されている首相主催の「桜を見る会」をめぐり、政府の招待客選定に問題はないとの認識を示した。「プロセスは適正だと考えている」と述べた。
 招待客名簿について「保存期間1年未満の文書と位置付けており、会の終了後、遅滞なく速やかに廃棄している」と語った。「事実上もう、今は調べることはできない」とも強調した。
 招待客は、内閣府と内閣官房が各省庁の意見を踏まえて決定していると説明。「取りまとめの過程はこれまでのやり方で引き続き行いたい」として、改める考えがないことを強調した。
https://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/191112/plt19111213300010-n1.html

「保存期間1年未満」というのは、ありえない日本語です。
森友問題のときにもこの言葉が出てきて、頭が痛くなったのを覚えています。

「保存期間1年未満」という言葉は、正しくは「即日廃棄可」ないしは「保存不要」と言わなければなりません。
つまり「1年」という言葉に意味はないのです。
もし「1年」という言葉に意味を持たせようとしたら、「廃棄期限1年未満」ないし「1年以上の保存不可」と言わねばなりませんが、これは意味が変わってきます。
頭のいい官僚が「保存期間1年未満」というおかしな言葉を使っているのはきわめて不可解です。

ちなみに各省庁が「桜を見る会」出席者の推薦名簿を作成しますが、文科省と総務省は推薦名簿の保存期間を10年としているそうです。
この「10年」はもちろん「10年以上」ないし「最低10年」という意味です。
「保存期間10年未満」という規定などあるわけがありません。


そうしたところ、今日の朝日新聞の『桜を見る会名簿破棄、石破氏も批判「残しておかなきゃ」』という記事の中にこう書かれていました。

管理が問題になっている名簿には、各省庁がつくった「推薦名簿」と、内閣官房と内閣府が推薦名簿から取りまとめた「招待名簿」がある。いずれの名簿も保存期間は各省庁が文書管理規則を定めて管理。内閣府の場合は、2018年4月から保存期間を「1年」から「1年未満」に変えた。
https://www.asahi.com/articles/ASMCG52YYMCGUTFK00W.html

「保存期間1年以上」を「保存期間1年未満」に書き換えていたのです。
官僚による規則改ざんです。
森友問題で佐川氏が文書の保存期間を「1年未満」としていたのも「1年以上」を書き換えたのでしょう(佐川氏のやり方を内閣府の官僚が真似たわけです)。
「保存不要」とするのが“正しい改ざん”の文章ですが、それでは目立つからやめたのでしょう。

「保存期間1年未満」という不可解な日本語の秘密がやっと解けました。



内閣府の大塚幸寛官房長は「会の終了後、遅滞なく速やかに廃棄している」と答弁しましたが、これは明らかな虚偽です。
「桜を見る会」は毎年開かれるのですから、前年の名簿を元に新しい名簿を作成するはずです。前年の名簿を捨ててしまったら、一から名前を積み上げていかなければなりません。

さらに、内閣府は名簿の廃棄について「紙媒体は5月9日、電子媒体はその前後に破棄した」と発表しましたが、5月9日は共産党の宮本徹衆院議員が内閣府などに資料要求をした日でした。
つまり意図的な証拠隠滅です。

もちろん大塚幸寛官房長が自分の判断で証拠隠滅をしたのではなく、もっと上の人間、政治家が指示をしたということはありえますが、そのへんの事情はわかりません。
今わかっているのは、明らかに大塚幸寛官房長が虚偽答弁をしているということです。

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11月14日の参院内閣委員会で虚偽答弁をする大塚幸寛官房長

森友学園問題では財務省の佐川宣寿氏が文書廃棄を指示し、国会で虚偽答弁をし、問題の隠蔽をはかりました。森友問題がうやむやになった最大の原因は佐川氏の“活躍”です。
しかし、佐川氏は刑事責任を問われることはなく、退職金をわずかに減額されただけでした。
マスコミは官僚から情報をもらうので、官僚批判はほとんどしません。そのことが佐川氏の逃げ切りを許したといえます。

今回の大塚幸寛官房長の名簿を廃棄したという答弁についても、マスコミは「内閣府の担当者」という書き方をして、大塚幸寛官房長の名前を出さないところもあります。
マスコミが官僚批判をしないので、安倍政権は官僚を前面に立てて証拠隠滅をはかれば逃げ切れるという計算でしょう。

政治家の手足となって虚偽や不正を行う官僚は当然批判されるべきです。


ともかく、「保存期間1年未満」というおかしな日本語から、文書管理という国の根幹が恣意的にゆがめられている実態が見えてきました。

天皇陛下のお言葉


11月10日、天皇陛下の即位を披露するパレード「祝賀御列の儀」が行われましたが、そのときの天皇陛下の「お言葉」がかつてないものでした。

敬語には丁寧語、尊敬語、謙譲語の三種類がありますが、天皇陛下は国民に対して、丁寧語は使いますが、尊敬語を使うことはひじょうに少なく、謙譲語を使うことはほぼありませんでした。
天皇は国民より上の立場にあるので、相手を上と見なす尊敬語はめったに使わず、とりわけへりくだる謙譲語は使わないということなのでしょう。
私の知る限り、謙譲語を使う唯一の例外は「いたす」です。「感謝いたします」のような言い方をされることがときどきありました。「いたす」はあまり謙譲語っぽくないからでしょうか。

尊敬語と謙譲語を使わないので、園遊会などで天皇陛下がスポーツ選手などと会話するときも、普通は「がんばってください」と言うところ、「活躍を期待します」というような独特の言い回しになります。


しかし、今回の「お言葉」は、従来とはまったく違いました。

天皇陛下のお言葉(全文)
さきに、「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明しました。そして、今日ここに集まられた皆さんからお祝いいただくことに感謝します。
即位から約半年、多くの方々から寄せられる気持ちを嬉しく思いながら過ごしています。また、この間、様々な機会に、国民の皆さんと直接接し、皆さんの幸せを願う思いを私たち二人であらたにしてきました。
 その中にあって、先月の台風19号をはじめ、最近の大雨などによる大きな被害に深く心を痛めています。亡くなられた方々に哀悼の意を表しますとともに、ご遺族、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
寒さがつのる中、避難を余儀なくされ、生活再建が容易でない方が数多くおられることを案じています。
復旧が進み、被災された方々が安心できる生活が、1日も早く戻ることを心から願っています。
ここに、改めて、国民の幸せを祈るとともに、我が国の一層の発展と世界の平和を願います。
今日は寒い中にも関わらず、このように大勢の皆さんが集まり、即位をお祝いいただくことに、深く感謝いたします。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5dc68b12e4b0fcfb7f66ce81

「いただく」や「申し上げ」などの謙譲語も含めて、国民に対して普通に敬語を使って、一般の人の言葉づかいと変わりません。
こうした言葉づかいから、天皇陛下は国民と同じ地平に立っておられるのだなと推測できます。

今回の即位の一連の行事で、天皇皇后両陛下が国民にいかに人気かが明らかになりましたが、それも天皇陛下のこうした姿勢があるからでしょう。


天皇陛下の明白な意思にもかかわらず、天皇の神格化をねらう人たちはなかなかいなくなりません。
たとえば、「あいちトリエンナーレ」において、天皇の写真が燃える作品に執拗に抗議する人たちなどがそうです。天皇の写真は神聖だと主張して、天皇の神格化をねらっているのでしょう。


また、「祝賀御列の儀」において、万歳を延々と繰り返すという意味不明な演出が行われました。



万歳三唱ならぬ「万歳48唱」は、両陛下が皇居・二重橋近くから皇居内に戻られるまで続いた。まさに「エンドレス万歳」の様相だった。
この日の国民祭典に一般席で出席した女性は、BuzzFeed Newsの取材に対しこう語る。
「比較的後ろの方の席だったが、本気で万歳をしている人は目立つくらい少なかった。何回やるんだって若干笑いも起きる空気で『ちょっと怖い』『これあってるの?』という声が聞こえた」
周囲は、嵐ファンと思われる女性が多かったという。
Twitter上でも「万歳アンコールしすぎでは?w最初に音頭とってた方も戸惑ってたから予定外だったよね」「なんか怖いと感じたの俺だけ?」「止まらなくてちょっと怖い」など困惑の声も見られた。
https://www.buzzfeed.com/jp/keiyoshikawa/banzai

国民が万歳を連呼することで天皇を神格化しようという演出でしょうが、今の天皇陛下にはふさわしくありません。

さらに、安倍首相は天皇陛下の人気に便乗しようと、パレードにおいて、さもしい行動に出ました。

スクリーンショット (3)

安倍首相が車内から
祝賀御列の儀に参列した安倍首相(首相官邸HPより)

 昨日おこなわれた天皇の即位を披露するパレード「祝賀御列の儀」。天皇の即位披露の場だったパレードにもかかわらず、安倍首相は自民党本部前を通るコースに変更させ、さらには自民党本部の屋上から〈天皇陛下のご即位をお祝い申し上げます〉という垂れ幕をデカデカと吊り下げるなど、即位パレードを政権のPRに利用した。
 しかし、安倍首相は昨日の即位パレードで、それ以上に唖然とさせられるような行動に出ていた。
 即位パレードでは、天皇・皇后のオープンカーの車列の先頭を警視庁の白バイが走り、そのすぐ後ろに官房長官を乗せた車、そして安倍首相を乗せた車がつけたのだが、なんと、安倍首相は車の窓を開け、沿道の人びとに手を振っていたのだ。
 言っておくが、前回の平成の代替わりの際、当時の海部俊樹首相もパレードの車列に加わっていたが、窓を開けるようなことはしていない。当然だ。パレードの趣旨は天皇・皇后の即位披露のためであり、だからこそふたりはオープンカーに乗るのだ。実際、昨日のパレードでは、天皇・皇后のオープンカーのあとにつづいた秋篠宮夫妻の車の窓は閉められていた。
https://lite-ra.com/2019/11/post-5084.html

「即位礼正殿の儀」のときは昭恵夫人が変なドレスを着て注目されましたが、夫婦して自分が目立ちたいようです。

天皇が政治的な発言をできないのをいいことに、勝手に天皇を神格化し、それを利用しようという人たちにはあきれるばかりです。

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「2020年度に始まる大学入学共通テストで活用される英語の民間資格・検定試験について、萩生田光一文部科学相は1日、導入延期を発表した」

これは時事通信の記事を引用したものですが、各紙とも同じような書き方をしています。
この中の「活用」という言葉に違和感はないでしょうか。
ここは「活用」ではなく「利用」という言葉を使うべきです。

「活用」と「利用」は違います。「活用と利用の違い」でグーグル検索すると、いちばん上にこう出てきます。
利用の利するために用いることに対して、活用とは、物や人の機能・能力を十分に活かして用いることです。 利用が自分のための利益を先に考えるのに対し、活用は、相手を活かすことを先に考えるという点が全く異なるのです。
https://www.freeml.com/hottaworld/876

「英語民間試験を活用」と書くと、英語民間試験を活かすことが第一目的になります。
文部科学省なら、大学入学共通テストをうまく運営することが第一目的のはずですから、「利用」という言葉を使うべきです。


いつから「活用」という言葉が使われているのかを調べてみました。

大学入学共通テストが初めて提言されたのは、2013年の教育再生実行会議の第四次提言においてです。
その提言にこう書かれています。
○ 国は、大学教育を受けるために必要な能力の判定のための新たな試験(達成度 テスト(発展レベル)(仮称))を導入し、各大学の判断で利用可能とする。高等 学校教育への影響等を考慮しつつ、試験として課す教科・科目を勘案し、複数回 挑戦を可能とすることや、外国語、職業分野等の外部検定試験の活用を検討する。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/pdf/dai4_1.pdf
このときから「活用」が使われています。
入試に民間検定試験が使われるようになると、受験者の数が増えて、民間検定試験を実施する企業・団体は確実に儲かります。それが狙いなら、「活用」の言葉は正しく使われていることになります。

教育再生実行会議は第二次安倍政権における首相の私的諮問機関です。民間の力を活用することは安倍政権の基本的な方針ですから、実行会議が民間検定試験を活かすことを第一目的にしてもおかしくありません。

この提言を受けて、2014年に中央教育審議会が答申を出しますが、その中にこう書かれています。
◆ 特に英語については、四技能を総合的に評価できる問題の出題(例えば記述式問題など)や民間の資格・検定試験の活用により、「読む」「聞く」だけではなく「書く」「話す」も含めた英語の能力をバランスよく評価する。また、他の教科・科目や「合教科・科目型」「総合型」についても、英語についての検討状況も踏まえつつ、民間の資格・検定試験の開発・活用も見据えた検討を行う。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/01/14/1354191.pdf

教育再生実行会議が「活用」を使ったのにならって中央教育審議会も「活用」を使い、以後文科省は「活用」を使い続けて今にいたります。

ということは、文科省も安倍政権の意向をくんで、民間資格試験を儲けさせることを目的とするようになったのでしょう。

民間資格試験活用と利権についてはいろいろと指摘されています。
たとえば『文科省「英語民間試験の有識者会議では議事録作ってない」、政治家の絡む利権構造と一流ジャーナリストも指摘』という記事から一部を引用します。

いったいなぜそんなことになったのか。実は教育ビジネスを舞台にした、複数の政治家の絡んだ巨大な利権構造のせいだという指摘がなされています。
その指摘を行ったのは安倍首相に最も近いと言われる一流ジャーナリストの田崎史郎氏。テレビ朝日系列のモーニングショーに出演した際にこのカラクリを指摘しています。

田崎:これだけ(英語民間試験に)掛かるでしょ。大学入試センター試験は1万8000円ですよ。このお金がどこへ行くかっていうと、団体の方に行くわけですよ。英検とかベネッセとか。
英検とかベネッセとかにすれば、これ受験生って大体50万人なんですね。2回掛けると100万人なんですよ。100万人の需要がバーンと生じるわけ。誰が得をするんだっていう。それで、団体ごとにおそらく政治家がついてるんですよ、裏で。
羽鳥:利権なんですね。
田崎:最初2つくらいだったんですよ。それが6つに増えてるのはそれぞれに先生方がついてる。
https://buzzap.jp/news/20191106-minkan-eigoshiken-riken/
    英語民間試験


ともかく、英語民間資格試験を活用するという今の政策は、大学入学共通テストをよくするためではなく、受験生のためでもなく、英語民間資格試験のためだということが、「活用」という言葉を見ればわかります。

なお、メディアは、文科省発表の文書を紹介するときに「活用」という言葉を使うのはいいとして、記者が書く地の文でも「活用」を使っているのはどういうことでしょう。
たいせつなのはなにかということを考えれば、「活用」という言葉は使わないはずです。

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安倍首相と韓国の文在寅大統領は11月4日、訪問先のタイで約11分間の話し合いをしました。
このことは、「窮地の文大統領が日本にすり寄ってきたが、安倍首相は冷たく対応した」という感じでニュース解説がされています。
その解説を聞いて、「韓国より日本が上だ」と思って喜んでいる人がいるのでしょう。
そういう人は国益のことを考えないといけません。

財務省の貿易統計(8月速報値)によると、韓国への輸出総額は4226億円で、前年同月比9.4%減。中でも食料品は40.6%の大幅減となりました。
観光についても、日本政府観光局(JNTO)によると、8月に日本を訪れた韓国からの旅行客は30万8700人で、前年同月と比べて48%のマイナスとなりました。

とりわけ韓国人観光客の減少は、一部の地域にとって大打撃となっています。
そのひとつが対馬です。

日韓関係悪化、観光地には死活問題 週末の夜もひっそり
■「30年の努力が蒸発」
 週末の夜にもかかわらず、フロントに灯がともらないホテルや旅館があり、観光客がそぞろ歩いた通りもひっそりしています。10月半ばでの閉店を告げる貼り紙をし、シャッターを下ろした店もありました。
 長崎県対馬市南部の厳原(いづはら)地区。日本が韓国への輸出規制強化を打ち出した7月以降、韓国人観光客は急減しました。2社が運航していた厳原―釜山間の定期船が8月から運休し、拍車をかけました。
 厳原で旅館を経営する熊本裕臣さん(68)は「8月からずっと宿泊客はゼロ」と言います。3年ほど前から韓国の旅行会社と全館貸し切りの契約をし、観光バス1台分約40人を毎日のように泊めてきました。食事だけの客も受け入れ、昼食・夕食を100人分ずつ提供してきました。その売り上げが一気になくなり、従業員6人と話し合い、解雇せざるを得なくなりました。
 対馬は、釜山から最も近い場所で約50キロ。市によると、昨年は約41万人が釜山から来島、今年1~6月も22万人と前年比1割増でした。ところが、7月は前年比4割減の約1万9800人、8月は同8割減の約7600人、9月は同9割減の約3千人までに減りました。韓国人客の島内消費額は昨年1年間で91億円と試算されますが、7~9月で計約16億円の損失があったとみられます。

 市北部の比田勝地区は釜山から高速船で約1時間10分。5社が連日1~2便ずつを定期運航していましたが、今は1日2便に。「民間主導で30年かけ、やっとここまで来たのが政治によって一瞬で蒸発した」。山田幸弘さん(56)は悔しさをにじませます。
 1989年に設立され、山田さんの父も関わった第三セクター「対馬国際ライン」は、比田勝―釜山航路を切り開きました。試行錯誤を経て、海運会社を次々に呼び込みました。韓国人客の増加に対応し、食堂や観光バスへと事業を拡大。今年は夏に向けてレンタカーを70台から100台に増やしたところでした。

 90年に4万6千人だった島民が3万人まで落ち込む中、働く場を求めて島を出る若者に就職や起業を勧められる――。そんな未来を描けるようになった矢先のことでした。
 県や市は国内旅行客の拡大をめざし、東京や大阪でのPR活動や宿泊費の割引キャンペーンを打ち出しました。しかし、釜山と比べて時間も交通費もかかる本土からどれだけの客が見込めるのか、という声も根強くあります。対馬が韓国人客の人気を集めたのは「近くて安く行ける外国」という側面があったからとみる山田さんは「やはり韓国人客に戻ってもらうしか、対馬には考えられない」と話していました。(佐々木亮)
https://www.asahi.com/amp/articles/ASMBZ46FRMBZUPQJ005.html

対馬というと、十数年前に韓国人観光客が増え始めたころ、韓国人が対馬の土地を買い占めていることが一部のメディアで騒がれました。主に産経新聞や週刊誌ですが、エッセイストの故・勝谷誠彦氏がテレビでレポートをしていたのが記憶に残っています。
自衛隊施設の隣の土地が買われているとか、日本の実効支配がゆらぐとか、韓国人が対馬で我が物顔でふるまっているといった報道で危機感をあおっていました。

しかし、外国人が日本の土地を買っても持って帰れるわけではなく、確実に日本にお金が入ってくるのですから、これは歓迎するべきことです。

ちなみに、同じころに中国人が日本の水源地の土地を買いあさっているということもけっこうメディアを賑わしていました。
しかし、これも考えてみればわかることですが、水源地を買っても水を中国に持っていけるわけではありません。
結局、中国人が水源地を買っているという事例はほぼゼロで、フェイクニュースでした。
なぜこんなフェイクニュースが広まったかというと、関東大震災のときに「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマと同じで、水は命に直結しているため、危機感があおられるからでしょう。


対馬の土地が韓国人に買われたということはある程度あったので、フェイクニュースではありませんが、なんの不都合もありません。
かりに不都合があっても、いつでも条例をつくるなどして規制や立ち入り調査ができます。

要するに昔から嫌韓あおりをする人たちはいたということです。


いや、今でも同じことが行われています。
自民党参院議員の青山繁晴氏が今年の9月に、「これが一体、わが国の長崎県対馬の光景だろうか」という文章を書いていました。そこから一部だけ引用します。

何だか分からない写真、あるいは何でもない写真にみえるかも知れませんが、実は、充分に衝撃写真です。
 これは自衛隊の防衛施設を取り囲むように韓国資本が買収したらしい土地の一角です。
 元は帝国海軍の光輝ある出撃基地の一部です。

 ここに韓国サイドが「リゾート施設」と称するものを建設しています。それです。
 これが、リゾート施設??
 こうした施設は、前述した防衛庁長官の視察、つまり四半世紀近く前からすでにありました。
 そのときも今も、奇妙な無人、リゾートとは思いにくい施設の姿と雰囲気、こうした不可思議な気配ばかりでした。
 そして昔も今も、自衛隊にせよ市役所にせよ市議会にせよ、あまり実態が掴めていないことも変わっていないと感じました。
「衝撃写真」なるものは、誰でも入れる土地に建っているバラック風の木造小屋です。四半世紀近く前からあるなら、放っておいていいでしょう。しかし、青山議員の目には「不可思議な気配ばかり」と映るようです。

それよりも問題に思うのは、青山議員は今年の9月に対馬に視察に行ったのに、韓国人観光客減少のことに一言も触れていないことです。
対馬の人たちの生活は目に入らないのでしょうか。

嫌韓あおりは一部の人たちのビジネスになっているのかもしれませんが、嫌韓は国益を損ねるだけです。

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トッド・フィリップス監督の「ジョーカー」を観ました。
ベネチア国際映画祭で金獅子賞をとったこともあって世界的に大ヒット中です。
この一本の中に、アメリカや日本などの先進国が今直面している問題のほとんどが詰め込まれているという意欲作で、金獅子賞を取ったのも納得です。

「バットマン」シリーズでバットマンの敵役であるジョーカーがいかにしてジョーカーになったかという物語です。
バットマンは出てきませんし、ハリウッド映画らしいアクションシーンもほとんどありません。
舞台のゴッサムシティは、ちょっと前のニューヨークという感じです。インターネットはありませんが、テレビの人気トークショーがそれに代わる役割を果たしています。

主人公のアーサー(ホアキン・フェニックス)は、ピエロを演じて生活の糧を稼ぎ、将来はコメディアンを目指しています。しかし、彼には脳の障害で笑い出すとなかなか止まらないという症状があり、悪ガキにいじめられたり、やることなすことうまくいきません。母親と二人の生活は貧しく、母親は昔家政婦として働いていた金持ちの家の主人に金銭的援助を頼む手紙を何度も出しています。彼は同じアパートに住むシングルマザーの黒人女性に思いを寄せますが、ストーカー行為をしてしまいます。

希望のない生活と、主人公の不安定な精神状態と、ニューヨークらしい街から、 マーティン・スコセッシ監督の「タクシードライバー」を連想します。それは監督の狙いでもあって、ロバート・デ・ニーロが重要な役で登場することからもわかります。

主人公の希望のない生活を描写するシーンが続くと、観ていてうんざりしそうなものですが、表現するべきことを的確に押さえていて、ホアキン・フェニックスの演技も素晴らしいので、引き込まれます。
ただ、ここについていけない人もいるでしょう。映画評を見ると、賛否がかなり分かれます。

母親が金持ちの家に出していた手紙を読んだことから、アーサーの出生の秘密がわかり、幼児虐待を受けていたこともわかります(脳の障害もそれが原因?)。
彼は福祉制度からカウンセリングと薬の支援を受けていましたが、予算が削られて支援は打ち切りになります。仕事でヘマをして、芸能事務所をクビになり、さらに母親が病に倒れて入院します。

ゴッサムシティはひどい格差社会です。アーサーはそこから這い上がれず、犯罪に手を染めます。

「タクシードライバー」の主人公は最後まで孤独でした。
しかし、アーサーの犯罪は格差社会で苦しむ人々の喝さいを浴び、彼はヒーローになります。
ここに格差社会の深刻化がうかがえます。また、「タクシードライバー」の主人公の過去はまったく描かれませんが、こちらは幼児虐待の過去があったことが描かれ、時代による人間観の変化もうかがえます。


この映画がアメリカで公開されたとき、ニューヨークでは犯罪を警戒して市内全域の映画館に警官が配置されたというニュースがありました。そのときは意味がわかりませんでしたが、映画を観ると納得できます。

このシリーズの最初の作品である「バットマン」(ティム・バートン監督)では、主人公のバットマン(マイケル・キートン)はくよくよと悩む屈折した男で、悪役のジョーカー(ジャック・ニコルソン)は底抜けに陽気な男です。ゴッサムシティはきわめてダークな雰囲気で、まるで悪の都市です。正義と悪が逆転したかのような描き方が、今回の「ジョーカー」につながっています。

今の世の中では、凶悪犯罪が起こると、犯人は徹底的に非難されます。しかし、ちゃんと調査すると、犯人はアーサーのように幼児期に虐待され、脳に障害を負っていることがわかるはずです。
池田小事件の宅間守や秋葉原通り魔事件の加藤智大の視点で見た世界を描いた映画とも言えます。
その意味で犯罪を肯定する映画ともとれ、公開に反対する声があったことも理解できますが、「善人なおもて往生す。いわんや悪人をや」を具現化しただけとも言えます。

しかし、この映画はそんなに重くなりません。
トッド・フィリップス監督は「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」などのコメディ映画を撮ってきた監督です。この映画でも、チャップリンの映画の一シーンが挿入され、エンディングシーンもコメディタッチで、コメディ映画を撮ってきた監督の心意気が示されます。

トッド・フィリップス監督は「凶悪な犯罪と格差社会を描くコメディ映画」という新機軸に挑戦して、みごとに成功しました。

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