東京オリンピック延期が決まってから、「安心モード」から「危機モード」へがらりと転換しました。
安倍首相や小池都知事が記者会見して、新型コロナウイルスへの危機感をあおっています。
しかし、現時点で日本の感染者数は2000人弱で、死亡者数は54人です(クルーズ船を除く)。
とても「瀬戸際」だの「緊急事態宣言」だのというレベルではありません。
最近、日本人の危機感が高まっているのは、イタリア、フランス、イギリス、ニューヨークなどで都市封鎖が行われているという海外のニュースに影響されているからでしょう。
たとえばイタリアでは全土で外出規制措置が取られ、生活必需品の買い物と通院の場合だけ外出が認められ、外出理由を書いた自己申告書を携行し、不要の外出と見なされた場合は罰金、逮捕もあるということです。買い物は一人で行かなければなりません。二人、三人がいっしょだと、それだけ感染の可能性が高いからです。店は入店制限されているので、行列しなければなりませんし、レジ前には床にテープが貼られて、人と人が接近しないようになっています。
フランス、イギリスも似たような外出規制が行われています。
こうしたニュースに毎日接していると、日本もそうなるのではないかという危機感を持っても不思議ではありません。
しかし、それらの国の感染者数は日本とまったく違います。
「個人投資家ニュース」というサイトに、世界各国の最新の感染者数、死亡者数が一覧となって出ています。
それによると、最近感染が沈静化している中国を別にすると、現時点(3月31日)で感染者数のトップ10はこのようになっています。
アメリカ 143,836人
イタリア 97,689人
スペイン 85,195人
ドイツ 63,929人
イラン 41,495人
フランス 40,751人
イギリス 22,141人
スイス 15,526人
ベルギー 11,899人
オランダ 11,814人
日本の感染者数は2000人ほどですから、ほとんどヒトケタ以上違います。
それから、これらの国は、イランを除くとすべて“西側先進国”です。
どうしてこのような偏りが生じるのかというと、BCGワクチンの接種によるという説があります。日本や韓国、ソ連東欧圏ではずっとBCG接種が行われていましたが、結核のリスクがほとんどなくなった西欧ではBCG接種があまり行われていなかったそうです。
結核菌に対する免疫が新型コロナウイルスに対してもある程度有効だということです。
この説は今のところ主にネットで言われているので、いまいち信ぴょう性がありませんが、「Bloomberg」も「BCGワクチン、豪州で治験-新型コロナへの有効性を検証」という記事を書いていて、けっこう有力かもしれません。
もしBCGが有効なら、日本では感染爆発は起こりにくいことになります。
BCGのことはともかく、日本人にとって西欧諸国は大きな存在です。日本人が「国際社会」というとき、それはほとんど西欧諸国のことです。
とりわけアメリカ、イギリス、フランス、ドイツのことは大きく報道されるので、大きな影響を受けがちです。
冷静に考えれば、それらの国と日本では感染者数がヒトケタ以上違うので、日本が同じように都市封鎖するのは愚かなことです。
ちなみにインドは3月25日、13億人を対象に21日間の外出禁止令を出して全土を封鎖しました。ニュースで警官が違反者を棒で叩いたり、罰としてスクワットをさせたりする映像を見た人もいるでしょう。
ところが、このときインドでの感染者数は500人余りでしたし、現時点でも1000人ちょっとです。
おそらくイギリスなどの影響を受けすぎて、パニックになって都市封鎖の判断をしてしまったものと思われます。
今、日本が「緊急事態宣言」の議論をしているのも同じようなものです。
「緊急事態宣言」というと、なにかすごいことが起こりそうですが、日本の「緊急事態宣言」では罰則のある外出禁止令は出せません。ですから、今までと同じ外出自粛要請とイベント自粛要請が続くだけです(強制的な土地収用や物資の保管命令などはできるようになります)。
日本が欧米の真似をするのも、インドの真似をするのも愚かなことです。