新型コロナウイルス感染症に乗じて、世界的に差別的言動がふえています。
中でも目立っているのがトランプ大統領です。
トランプ大統領はWHOのテドロス事務局長をしきりに非難しますが、これはテドロス事務局長がエチオピア出身の黒人だからです。トランプ大統領はオバマ元大統領のように黒人が高い地位につくことが許せません。
トランプ大統領はまた、新型コロナウイルスを“チャイナ・ウイルス”と呼び、「中国はウイルスの発生源で、素早く食い止められたはずだし、そうしていれば世界中に拡大しなかった」と言って、中国に損害賠償請求をする可能性に言及していますが、これも中国人への差別からです。
そして、テドロス事務局長は中国寄りだとして、両者をまとめて非難しています。
確かにWHOと中国はいろいろと間違いを犯しましたが、多くの国の政府も間違いを犯しています。
中でもひどいのがトランプ政権です。オバマ政権が強化したCDC(米疾病管理予防センター)の予算を大幅に削減し、今年1月末には武漢での状況を伝える報告書が上がっていたにもかかわらず、トランプ大統領は「暖かくなる4月にはウイルスは消えてなくなる」などと楽観論を述べて、中国からの入国を禁止する以外の手をほとんど打ちませんでした。トランプ政権が中国に対して損害賠償請求をすることが可能なら、アメリカ国民はトランプ政権に対してもっと巨額の損害賠償請求をすることが可能でしょう。
日本でも、トランプ大統領の尻馬に乗って、テドロス事務局長は中国寄りでけしからんと非難する人がいますが、これも差別意識からきた非難です。
日本人は欧米に対してコンプレックスを持っているので、たとえばWHOの事務局長がフランス人で、アメリカ寄りだったとしても、「あの事務局長はアメリカ寄りだからけしからん」という人はいません。テドロス氏がエチオピア人で、中国寄りだから非難しているのです。
日本人は国際機関のトップを批判したことはほとんどありませんが、例外が潘基文国連事務総長です。それまで国連事務総長批判などしたことのない日本人が、潘基文氏については任期中ずっと批判しっぱなしでした。もちろんこれは潘基文氏が韓国人だからです。潘基文氏がポルトガル人のアントニオ・グテーレス氏に替わると、批判はぱったりとやみました。
新型コロナウイルスは中国起源で、最初は日本と韓国に広がったことから、海外ではウイルスにからめて日本人も差別の対象になりました。
その日本人が“武漢ウイルス”などという言葉を使って、ウイルスと中国人を関連づけようとしているのは情けない限りで、それは日本人にも返ってくることになります。
中国政府の対応を批判するなら、“武漢ウイルス”などという言葉を使わずにするべきです。
新型コロナウイルスに関連した差別はいっぱい見られます。
休業要請に応じないパチンコ店に非難が集中し、店名をさらされたりしているのは、やはりパチンコ業界の社会的地位が低いからでしょう。
キャバレーやクラブなどもそうです。警察が夜の歌舞伎町をこれ見よがしにパトロールするのも公平ではありません。
湘南の海に集まるサーファーがやたら非難されるのも、スポーツ愛好家の中でもサーファーが低く見られているからではないでしょうか。
少なくともゴルフ練習場に集まるゴルファーと扱いが違うと思われます。
テドロス事務局長やパチンコ店を非難している人は、自分が差別感情から非難しているとは思っていないでしょうが、差別主義とはそういうものなので、注意が必要です。