村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

2020年08月

スクリーンショット (29)
辞任記者会見の安倍首相(官邸ホームページより)

安倍首相は8月28日、記者会見で辞意を表明しました。
第一次安倍政権のときに続いて二度目の唐突な「政権投げ出し」です。

潰瘍性大腸炎はストレスも症状悪化の原因です。
安倍首相は会見で「一議員として仕事をしていきたい」と言って、議員辞職は否定しました。
首相は務まらないが、議員としては務まるということです。
ということは、体の問題ではなく、「首相の重責」に耐えられないという心の問題ですから、「政権投げ出し」というしかありません。

ところが、マスコミは「政権投げ出し」という批判はほとんどしていません。
安倍首相のイメージ戦略に乗せられたようです。


安倍首相はこのところ「病気」というイメージを強く打ち出ししていました。

甘利明議員は、テレビ番組で安倍首相の「疲労蓄積」を心配し、「責任感が強く、自分が休むことは罪だとの意識まで持っている」と語り、麻生太郎財務相は「147日間休まず働いたら、普通だったら体調としては、おかしくなるんじゃないの」と語り、働きすぎが原因で体調を崩しているというイメージを広げました。
そして、8月17日、24日と続けて慶応大学病院に行ったときも、あらかじめマスコミに伝えました。そのためマスコミはずっと病院前に張り付いて、診察時間が「7時間半」と「4時間」だったと報じ、また病院に車で出入りする映像もニュース番組で流れました。
こうして「首相病気」のイメージを国民に植え付けたのです。

しかし、これはあくまでイメージです。
記者会見の言葉を聞いていると、辞任するほどの症状とは思えません。
首相官邸ホームページの「令和2年8月28日 安倍内閣総理大臣記者会見」から書き起こしてみます。
この8年近くの間、しっかりと持病をコントロールしながら、なんら支障なく、総理大臣の仕事に毎日、日々全力投球することができました。
しかし、本年6月の定期健診で再発の兆候が見られると指摘を受けました。その後も薬を使いながら全力で職務に当たってまいりましたが、先月中ごろから体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となりました。そして、8月上旬には潰瘍性大腸炎の再発が確認されました。
今後の治療として、現在の薬に加えまして、さらに新しい薬の投与を行うことといたしました。今週初めの再検診においては、投薬の効果があるということが確認されたものの、この投薬はある程度継続的な処方が必要であり、予断は許しません。
政治においては、もっともだいじなことは結果を出すことである。私は政権発足以来、そう申し上げ、この7年8か月、結果を出すために全身全霊を傾けてまいりました。病気と治療をかかえ、体力が万全でないということの中、たいせつな政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません。国民のみなさまの負託に自信をもって応えられる状態でなくなる以上、なくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断いたしました。
総理大臣の職を辞することといたします。

投薬の効果が確認されたのに辞任するのは不可解です。

質疑応答において記者も「治療を続けながら執務を続行するという選択肢はなかったのか」と質問していますが、安倍首相は「間違いなくよくなっていく保証はない」「コロナ禍の中において政治的空白を出さないようにするにはこのタイミングで辞任するしかないと判断した」と答えています。

さらに、次期首相が決まるまで首相の座にあることに関して、「もちろんこの任にある限りですね、コロナ対策、責任をもって全力をあげていきたい。幸いにも新しい薬が効いてますので、しっかりと努めていきたいとそう思っております」と言っています。
つまりしばらく首相を続けていけるというのです。

では、なぜ今辞めたのかというと、
①改憲が不可能になって、この先やりたいことがなくなった。
②やり続けても経済も外交も改善の見込みがない。
ということからではないかと思われます。

やはり「投げ出し」です。
前回は追い詰められてギリギリで投げ出したのですが、今回は早めに投げ出したわけです。

いや、「早め」というのは間違いです。
ほんとうはもっと早く投げ出しているべきでした。
たとえば対ロシアの北方領土返還交渉について、今では二島返還すら不可能な状況になっています。これは外交の大失策として首相のクビが飛んで当然です。
ところが、マスコミの追及が甘いので、平気な顔で首相を続けてきました。
モリカケや桜を見る会でも安倍首相は辞任して当然でした。

本来は死んでいるはずの体を集中治療室に入れてさまざまな延命措置を施してきたものの、本人が長すぎる延命に嫌気が差して、今回安楽死ならぬ“安楽辞任”を選択したというところです。

もちろん“安楽辞任”などということはあってはならず、今後、安倍首相の外交や経済政策をきびしく検証し、モリカケ、桜を見る会の疑惑を徹底追及するべきです。

スクリーンショット (28)
8月24日の安倍首相

安倍首相は8月17日、24日と続けて都内の慶応大学病院を受診し、健康不安が取りざたされています。

安倍首相本人は「体調管理に万全を期して、これからまた仕事を頑張りたい」と語りましたし、菅官房長官は「毎日お目にかかっているが、変わりはないと思う」と、健康不安説を否定しています。
しかし、政治家というのは病気であっても否定するのが当たり前なので、こういう言葉は信用できません。
病院での滞在時間は、17日が7時間半、24日が約4時間とかなりの長時間で、これでなにもないとは考えられません。


ただ、首相サイドはわざと健康不安説をあおっているという説もあります。

自民党の甘利明議員は16日のフジテレビの番組で、首相の疲労蓄積を心配して「ちょっと休んでもらいたい。責任感が強く、自分が休むことは罪だとの意識まで持っている」と語りました。
麻生太郎財務相は17日夜、「147日間休まず働いたら、普通だったら体調としては、おかしくなるんじゃないの」「休む必要があるということは申し上げた。ちゃんと自分で健康管理するのも、仕事の一つだ」と語りました。
つまり安倍首相が7時間の診察を受けた前後に、安倍首相の側近が「安倍首相の疲労蓄積」をアピールしているのです。

なぜそんなことをするかというと、安倍首相は国会も開かず、記者会見もしないでいるのを批判されているので、「疲労蓄積」を理由に批判をかわそうとしているというわけです。
確かに安倍首相が147日間休んでいないということは話題になって、安倍応援団は「安倍首相はこんなに国民のために働いている」と声を上げています。


とはいえ、政治家が「疲労蓄積」をアピールするのはやはり不可解です。
私は「疲労蓄積」をアピールする別の理由を考えました。

安倍首相は前の政権で突然に辞任を表明して、「政権を投げ出した」とさんざん批判されました。
今回また突然に辞任表明をすれば、前回以上に批判されるのが目に見えています。
そこで、あらかじめ「疲労蓄積」によって体調が悪化していることを周知させておき、それから辞任表明をしようという作戦ではないかと考えられます。

ということは、実際に体調はかなり悪くて、近く辞任することが視野に入っていることになります。
辞任するときのために今は「国民のために休みなしに働いて疲労が蓄積し、持病の潰瘍性大腸炎が悪化した」という物語をつくっているところです。


安倍首相の体調が悪いことは顔色を見てもわかります。

安倍首相は24日、病院から官邸に戻ると、記者団の前でコメントしました。
この日は安倍首相の連続在職日数が佐藤栄作首相を抜いて歴代最長の2799日となった記念日だからです。
この日は午前10時前に病院に入り、記者団の前に現れたのは午後2時前ですから、そんな疲れるはずはないのですが、顔色はさえません。



在職日数が歴代最長となったことについては、「すべてはこれまでの国政選挙において力強い支持をいただいた国民のみなさまのおかげでございます。心から御礼申し上げたいと思います。また、たいへんきびしいときにあっても、いたらない私をささえていただいたすべてのみなさまに感謝申し上げたいと思います」と語りました。
この言葉だけ聞くと、まるで辞任のときの言葉のようです。
今後のことについては「これからまた仕事を頑張りたい」と言っただけで、具体的な目標はなにも語りませんでした。


安倍首相が辞任するとすれば、総裁選なしに誰かが暫定的な首相に就くことになります。
常識的には麻生財務相か菅官房長官でしょう。
菅官房長官は18日にBS日テレ「深層NEWS」、21日にテレビ朝日「報道ステーション」と立て続けに生出演し、存在感をアピールしています。

どう考えても、安倍首相の辞任は近いと思われます。

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アメリカ大統領選挙はトランプ大統領対ジョー・バイデン元副大統領の対決となりました。

バイデン候補は、無難ですが、これという魅力がありません。
一方、トランプ大統領は、よくも悪くも人を引きつけます。

トランプ大統領の強みは、なんといっても人を攻撃する言語能力がずば抜けていることです。この点で対抗できる人は誰もいません。

そして、自分自身が人から攻撃されても平気です。カエルの面にションベン状態です。
2月、3月ごろ、トランプ大統領は「暖かくなればウイルスは奇跡のように消えてなくなる」とか「4月になればウイルスはなくなると思う」などと言っていました。そのことは当然批判されましたが、トランプ大統領は平気です。7月になっても「ウイルスは消える。最後に正しいのは私だ」と言っています。

人を攻撃する力は強くて、人から攻撃されても平気――これは戦う上では最強です。
トランプ大統領はこの能力でライバル候補を全部なぎ倒して大統領になったのです。

ですから、現時点の世論調査ではバイデン候補がトランプ大統領をリードしていますが、これから選挙運動が本格化していくと、トランプ大統領が巻き返すということが十分にありえます。


トランプ大統領を一言でいえば、「ウルトラ利己主義者」です。
ひたすら自分の利益を追求し、(不正な手段も含めて)それを実現してきました。
普通の人は利己主義者とはつきあいませんが、トランプ大統領が利益を得ると、その周辺にいる人間も利益を得ることができるので、寄ってくる人間もいます。


トランプ大統領のスローガンは「アメリカ・ファースト」です。
これは「アメリカ利己主義宣言」みたいなものです。

トランプ大統領は「公正」とか「公平」とか「対等」とか「平等」とかいう言葉を言ったことがありません(どこかで言っているのでしょうが、私は聞いたことがない)。

トランプ大統領がいつも言うのは、中国や日本やメキシコに「アメリカは食い物にされてきた」ということです。
「今度はアメリカが食い物にする番だ」とは言いませんが、心の中ではそう思っているに違いありません。
ウルトラ利己主義者の辞書に「平等互恵」とか「共存共栄」という言葉はなく、あるのは食うか食われるかだけです。


日本とアメリカの関係でいうと、アメリカはTPPを離脱し、日米で二国間の貿易協定を昨年末に改定し、今年1月1日から発効しました。
これによって日本はアメリカ産の牛肉や乳製品の関税を引き下げる一方、日本が要求していたアメリカにおける自動車関税の引き下げは先送りとなりました。
日本側も合意した以上、「不平等だ」とは言いませんが、二国間協議では力のあるほうが有利なので、実質は不平等に違いありません。

アメリカはカナダ、メキシコとの自由貿易協定NAFTAを再交渉してUSMCAを締結し、今年7月1日に発効しました。
アメリカはまた、韓国との自由貿易協定(米韓FTA)を改定し、2019年1月に発効しました。

トランプ政権が「アメリカ・ファースト」を掲げている以上、これらはすべてアメリカの利益になるように改定されたに違いありません。
ということは、これらはトランプ政権の実績です。

大統領選の最大の争点は、トランプ大統領があおってきた人種差別的な分断の評価であるかのような報道がされていますが、有権者の最大の関心は経済です。
トランプ政権によりアメリカ国民も利益を得ています。トランプ政権がある程度の支持を得ているのもそのためです。


「アメリカ・ファースト」というスローガンは、1940年にアメリカが対ドイツ戦に参戦するのを阻止するために唱えられたのが最初だということです。
 1992年の大統領選挙の予備選挙では、共和党右派のパトリック・ブキャナンが主張しました。

自国第一とか国益優先というのは、どこの国の政治でも言われることですが、基本的には国内向けに言うことです。
しかし、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」は、「アメリカを再び偉大に」とともに基本戦略ですから、対外的にも主張されていると見るべきです。
ですから、2016年の大統領選の段階で、世界各国は「アメリカといえども法の支配に従うべきで、われわれは『アメリカ・ファースト』など認めない」と言うべきでした。
トランプ大統領が当選してからは、安倍首相みたいにトランプ大統領にすり寄る国家指導者もいて、国際社会はまとまることができませんでした。


結局、ウルトラ利己主義者がアメリカ大統領になったので、アメリカはウルトラ利己主義国家になり、世界が迷惑をしています。
以前からアメリカは利己主義国家だったとはいえますが、表向きは「法の支配」とか「自由と民主主義」ということを押し立てていたので、そうひどいことはしませんでした。
トランプ大統領にそうした理念はなく、露骨な利己主義があるだけです。


これまでは経済のことばかり言ってきましたが、トランプ大統領はパリ協定離脱、イラン核合意離脱、中距離核戦力(INF)全廃条約離脱などを行ってきました。
これも「アメリカ・ファースト」の一環のようですが、果してアメリカの利益になっているのかはわかりません。
ただ、世界の不利益であるのは間違いありません。


バイデン候補は「アメリカ・ファースト」の否定を選挙の争点に持っていくということはしていないようですが、実質的には大きな争点でしょう。
バイデン候補が当選すれば、アメリカは「アメリカ・ファースト」を捨てて、まっとうな国として国際社会に復帰するはずです。

日本のメディアがアメリカの分断に比重を置いて報道しているのはおかしなことです。アメリカの分断はあくまでアメリカの国内問題です。
アメリカが「アメリカ・ファースト」を捨てるか否かは、世界にとっても日本にとっても重大事です。

それにしても、日本で「アメリカ・ファースト」を批判する人をほとんど見かけないのは、なんとも不思議なことです。

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連日の猛暑日で、熱中症で亡くなる方が増えています。
室内にいてエアコンがあれば、亡くなるようなことはなさそうですが、そう簡単ではありません。

朝日新聞の「熱中症の死者や搬送相次ぐ 多くが高齢者、屋内でも危険」という記事には「8月の23区内での熱中症による死者は、都監察医務院のまとめでは、17日午前時点で53人。(中略)53人中50人が屋内で見つかり、43人はエアコンがないか、あっても発見時に作動していなかったという」と書かれています。

エアコンはあるのに使わなくて亡くなってしまう人がけっこういるのです。
年寄りは感覚が鈍っているので、危険なほど気温が高くなっているのに気づかないということもあるでしょうが、暑いのをがまんしてエアコンを使わないという人もいます。

「冷房は体に悪い」という考え方が昔からありました。
「冷房は嫌い」という人もいます。

しかし、こうした考えの人も本音は「電気代がもったいない」ということではないでしょうか。

昔は「扇風機をつけっ放しで寝ると死ぬ」などという都市伝説みたいなものがありましたが、これも電気代を節約したいためにつくられた嘘ではないかと思われます。

年金暮らしの年寄りなどぎりぎりの節約生活をしている人は、電気代もできる限り節約しようとして、暑いのもがまんします。
こういう人は「お金がない」というのが恥ずかしいので、「冷房は嫌い」などと言ったりします。

「わずかの電気代より自分の命のほうがたいせつだろう」と言うのは部外者の言い分です。
ほんとうにお金のない人は、お金が命みたいなものです。

ですから、ぎりぎりの生活をしている人に「暑い日はむりをせずにエアコンをつけましょう」と言ってもほとんど効果がありません。


エアコンの電気代がいくらかかるのか調べてみました。
気温と部屋の大きさとエアコンの性能によって違ってきますが、だいたい1時間21円ぐらいのようです。
1日10時間エアコンを使うとすると、月6000円ぐらいです。
これはバカになりません。
エアコンをつけずに死んでしまう人がいるのも不思議ではありません。


お金が惜しくて死んでしまう人なら、その命を救うのは簡単です。
お金を上げればいいのです。

新型コロナ対策で1人10万円の特別給付金を配ったので、お金を配ることのハードルはかなり下がっています。
1人ないし夫婦の年寄り世帯で、年金以外に収入がないという世帯に、エアコン分の電気代を給付すれば、電気代がもったいなくて死ぬことは防げます。

いや、現金を給付すると、ほかのことに使って、やはりエアコンはがまんする人がいるでしょう。
国が直接電力会社に支払うという形にすればどうかと考えましたが、これも結局は同じことです。

いちばんいいと思えるのは、7月分と8月分の電気代を全額国が負担することです。
そうすれば遠慮なくエアコンを使うことができます(エアコンのない世帯へのエアコン設置補助もやるべきです)。
国はよけいな支払いをすることになりますが、年寄りの貧困世帯の救済だと思えばいいのです。


エアコンを使わずに熱中症で死亡する悲劇をなくすにはいい方法だと思うのですが、年寄りに払う金があるなら若い世代のために使うべきだという声も出てきそうです。
いや、基本的にみんなそう考えているので、年寄りの熱中症を防ぐためにお金を使うということは誰も言わないのかもしれません。

しかし、若い世代のこともたいせつですが、目先の命を救うこともたいせつなので、こういう方法も考えてみていいのではないでしょうか。

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戦後間もないころ、おばあさんが無邪気に遊んでいる小さな男の子たちを指差して「この子たちが大きくなったらまた戦争を始めるだろう」と言ったという話があります。
第一次世界大戦が終わってから21年後に第二次世界大戦が始まったのですから、そう思ってもむりはありません。

しかし、今年の8月15日で戦後75年がたち、曲りなりに日本は平和でした。
第二次世界大戦後、戦争の意味が大きく変わったからです。


松木武彦著「人はなぜ戦うのか――考古学から見た戦争」や佐原真著「戦争の考古学(佐原真の仕事4)」といった戦争考古学の本によると、人類が本格的に戦争をするようになったのは農耕社会になってからです。
その理由は、農耕社会では人口が増え不作のときの飢餓が深刻化したとか、土地争い、水争いが増えたとか、集団行動をするようになったとか、いろいろ説明されていますが、最大の理由は、食糧の備蓄量が大幅に増えたことでしょう。
狩猟採集社会では、食糧の備蓄といっても、せいぜい数日分から十数日分くらいです。
しかし、農耕社会では、収穫期には少なくとも半年間の労働の成果が蓄えられています。それを1日の戦争でごっそり奪うことができるなら、多少の危険を冒しても戦争しようという人間が出てきてもおかしくありません。
実際、農耕社会では外敵に備える環濠集落が広くつくられるようになります。
映画「七人の侍」では、収穫期になると野武士が村を襲いにくるのですが、ああいう感じだったのでしょう。

それからずっと戦争は利益のために行われてきました。
勝つと食糧、土地、財宝、女、奴隷を獲得することができます。

戦争するのは本能だと考えている人がいますが、それは間違いです。動物はなわばり争いをしますが、争い自体が不利益を生むので、それほど激しくは争いません。
人間の場合も、戦争をすると自分のほうもある程度損害が出るので、めったに戦争はしません。少ない損害で大きな利益が得られそうなときだけ合理的な判断で戦争をします。

文明が進んで富が蓄積されると、戦争の機会が増えていきます。
戦争の強い集団はどんどん戦争をして、ローマ帝国やらモンゴル帝国やらを築きました。

戦争でもっとも利益が得られたのは、近代国家が強力な軍隊を持って、近代化していない国を次々と植民地化していった植民地主義の時代です。
日本も遅まきながら植民地獲得の戦争をやりました。

このころに戦争はもうかるものだというイメージができて、それをいまだに引きずっているのではないでしょうか。
しかし、第二次世界大戦後は戦争の意味合いがまったく変わりました。

植民地主義の時代が終わり、戦争に勝っても領土や植民地を獲得することはできません。
それに、国連憲章で戦争は禁止されたので、賠償金を取ることもできませんし、国際社会から批判も受けます(実際は1928年に成立したパリ不戦条約から戦争は禁止されています)。

一方で、高度産業社会が実現し、各国の経済関係は緊密になり、そこから上がる利益が大きくなってくると、隣国と戦争するのは大損失になりました。


今ではまともに戦争ができるのはアメリカぐらいですが、やはり戦争には不利益しかありません。
湾岸戦争は、アメリカが多国籍軍を率いて勝利し、精神的満足があったかもしれませんが、アフガン戦争とイラク戦争は損失が巨大で、アメリカ国民もうんざりしています。


中国とインドは長い国境で接して、何度も国境紛争が起こり、戦死者も出ていますが、紛争が大きくなることはありません。
双方が戦争をするのは損だと認識しているからです。


日本に関していうと、今、尖閣諸島が日中間の緊張のもとになっています。
しかし、昔は「満蒙は日本の生命線」といったものですが、今「尖閣は日本の生命線」であるはずがなく、重みがぜんぜん違います。

北朝鮮は、拉致問題を起こすような頭のおかしい国だから、なにをするかわからないと思われていましたが、最近は北朝鮮なりに合理的な行動をしていることがわかってきて、脅威感が薄れてきました。


第二次大戦後の世界がどんどん平和になっていることは、国際連合広報センターの
「紛争と暴力の新時代」というサイトにも示されています。

世界的に見ると、戦死者の絶対数は1946年以来、減少を続けています。しかし同時にまた、紛争や暴力は現在、増加傾向にあり、大半の紛争は政治的民兵や犯罪集団、国際テロ集団など非国家主体の間で生じています。
   ※
現在では、武力紛争よりも犯罪が多くの人の命を奪っています。2017年には、全世界で50万人近くが殺人によって命を失っていますが、これは武力紛争による死者8万9,000人とテロ攻撃による死者1万9,000人を大きく上回る数字です。
   ※
テロは依然として幅広く見られるものの、その影響は近年、衰えてきています。全世界でテロ攻撃よるものと見られる死者の数は、2018年に3年連続で減少し、1万9,000人を下回っています。各国政府が暴力的過激主義を防止し、これに対処するため、テロ対策の取り組みや地域的、国際的な協調とプログラムを強化する中で、テロ攻撃による死者が減っているからです。2017年には、テロ攻撃の5分の1が失敗に終わっていますが、2014年の時点で、この割合は12%強にすぎませんでした。


戦争やテロの死亡者はへっていて、犯罪(殺人)による死亡者のほうがはるかに多いのです。

こうしたことはあまり知られていません。軍事・外交の専門家たちにとって不都合な真実だからです。

外務省の基本認識は、「わが国を取り巻く安全保障環境はいっそうきびしさを増している」というものです。
安倍首相も演説で決まって「わが国を取り巻く安全保障環境はいっそうきびしさを増している」と言うので、国民も耳にタコのはずです。

しかし、「わが国を取り巻く安全保障環境はいっそうおだやかさを増している」というのが正しい認識です。



日本人は第二次世界大戦の体験が強烈なので、いまだにそこにとらわれています。
戦争に負けて悔しいと思う者は、敗戦の象徴である憲法九条を改正して少しでも戦前の日本を取り戻そうと思っていますし、戦争が悲惨だったと思う者は、憲法九条の改正はなんとしても阻止したいと思っています。
どちらも過去にとらわれているので、現在の状況に適応することができません。


安倍首相は今年の全国戦没者追悼式の式辞で「積極的平和主義」という言葉を使いました。
かつては自衛隊を戦闘地域に派遣して、自衛隊に戦闘を経験させようとしていた節があります。
つまり日本を「戦争のできる国」にしようとしてきたようなのです。
しかし、それは実現していません。
世界が平和になってきているのを読み間違っているからです。

憲法九条改正に反対する人たちも、そのモチベーションをもっぱら戦争の悲惨さの記憶に頼っています。
しかし、記憶は風化していくので、こうした運動は若い人に理解されず、先細りが運命づけられています。
これからの平和運動は、経済合理性の追求にシフトしていくのが正しい道です。
戦争の損得を計算し、防衛費を費用対効果で算定するのが、いちばん有効な平和運動です。

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安倍首相が広島と長崎の平和式典で述べたあいさつがほとんど同じで、「“コピペあいさつ”でいいのか」という声が上がっています。

広島と長崎でそれほど変えようがないですし、コピペなのは毎年同じです。
今年だけ問題にされたのは、「安倍首相の言葉には心がこもっていない」という不満が高まっているからでしょう。

安倍首相は緊急事態宣言を発出するときや解除するときに国民に向かってスピーチをしましたが、用意された原稿をプロンプターで読むだけです。
もとの原稿が官僚の作文で、安倍首相もただそれを読むだけなので、「言葉に心がこもっていない」という印象になってしまいます。

スピーチだけではありません。
安倍首相は記者会見でも心のこもった言葉を言いません。

広島の平和式典のあと、安倍首相は久しぶりの記者会見をしました。
しかし、記者会見の時間は約15分で、記者の質問も4問だけでした。

会見の最後に朝日新聞記者が「総理、まだ質問があります」と言って手を上げたところ、朝日新聞の記事によると、『朝日新聞記者の腕を、首相官邸報道室の男性職員が「だめだよもう。終わり、終わり」と制止しながらつかんだ』ということがありました。
朝日新聞は「質問機会を奪う行為につながりかねず、容認できません」と報道室に抗議しましたが、菅義偉官房長官は7日午前の記者会見で「(首相の)広島空港への移動時刻が迫っていた中での出来事で、速やかな移動を促すべく職員が注意喚起を行ったが、腕をつかむことはしていないとの報告を受けている」と述べ、今のところ、腕をつかんだか否かはうやむやになっています。

記者会見で質疑応答があったといっても、やはり安倍首相の言葉には心がこもっていません。
なぜ安倍首相の言葉には心がこもっていないのかが明らかになる出来事が、長崎の記者会見場でありました。



この記者会見も時間は約15分でした。記者の質問は2問とあらかじめ決められていました。
会見が終わり、安倍首相は立ち上がる前に手元の書類を立てて持ちました。
その瞬間をANNのテレビカメラは撮っていました。

安倍カンペ




コピペ切り取り


字が小さくて見にくいですが、四角い囲みの中の冒頭に「問1」とあり、「核兵器」と思われる言葉が続いています。
これは、毎日新聞のマツムラマユ記者の核兵器禁止条約についての質問と思われます。
そして、その下に[答]という字があり、安倍首相が実際に答えた内容がそのまま書かれています。

要するに、記者の質問も安倍首相の答えも全部あらかじめ決まっていて、安倍首相は原稿を読むだけなのです(安倍首相のテーブルだけ花が飾ってあるのはカンペ隠しのためです)。
これでは言葉に心がこもらないのは当然です。

記者会見そのものが台本のある芝居、下手な学芸会のようなものです。
これなら記者会見などしなくて、安倍首相の手元にある原稿を各メディアが受け取って、それをもとに記事を書けばいいのです。
いや、それだとテレビは絵がないので、テレビのために学芸会をやっているのでしょう。


菅官房長官の定例記者会見も同じシステムに違いありません。
韓国で慰安婦像の前で安倍首相らしい人物が土下座する像が設置されたことについてTBS記者が菅長官に質問したところ、菅長官はそれに答えるときに「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意」という言葉を正確に言ったので、質問も答えもあらかじめ決まっているのだとわかりました(このことは『「首相謝罪」の炎上商法が不発』という記事に書きました)。

質問があらかじめわかっていれば、いくらでもはぐらかしの答弁ができます。

安倍首相の記者会見での言葉はカンペを読んでいるだけだということが証拠映像つきでわかったのですから、ワイドショーなどがおもしろおかしく取り上げてもよさそうなものですが、同じマスコミなのでやらないのでしょう。
そのため、今のところツイッターでしか取り上げられていないようです。

記者クラブも情けないものです。
質問をあらかじめ提出するよう求められているなら、そのことを公表するべきです。
台本のないふりをするのは国民をあざむく行為です。

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吉村洋文大阪府知事にはびっくりです。
うがい薬を使ってうがいをすることで「コロナの陽性者が減っていく。薬事法上、効能を言うわけにはいきませんが、コロナに効くのではないかという研究が出ました」「このコロナに、ある意味、打ち勝てるんじゃないかというふうにすら思っています」と大々的に発表したからです。

殺菌作用のあるうがい薬で何度もうがいをすれば、口中のウイルスが減少するのは当然です。しかし、それだけで「コロナに効く」とか「コロナに打ち勝てる」とはいえないはずです。

吉村知事の発表でうがい薬が店頭からなくなり、ヨード系のうがい薬を多用すると甲状腺機能障害の危険性があると医療関係者から指摘されるなど、世の中が混乱しました。

吉村知事はなぜこんな愚かな発表をしたのでしょうか。
私なりに調べてみました。


このうがい薬による“実験”をしたのは、大阪はびきの医療センターの松山晃文次世代創薬創生センター長です。被験者は41人で、論文にもなっておらず、ずさんな実験だと批判されています。

その実験というのは、41人を2群に分け、1日4回、ポビドンヨードを含むうがい薬でうがいを毎日実施した群と、うがいを実施しなかった群を比較し、毎日、唾液によるPCR検査をおこなったところ、4日目にはうがいを実施しなかった群の陽性率は40%だったのに対して、ポビドンヨードを含むうがい薬を使った群は陽性率が9.5%に低下したというものです。
しかし、この実験ではポビドンヨードを含むうがい薬の効果は立証されません。水うがいでも同じ効果が出るかもしれないからです。

松山センター長もそのことは認めて、『「うがい薬でコロナウイルス減少?」 大阪はびきの医療センター・研究責任者に直撃』という記事で次のように語っています。

「水うがい」「塩うがい」でも口の中のウイルスの濃度を減らすことができると思います。
ポビドンヨードだとのどを痛めたり、副作用がありますけれども、「水うがい」「塩うがい」は日本古来からありますし、お勧めできると思います。
   ※
1回のうがいでは数時間しか効果が持ちません。2時間後、3時間後ではウイルスは再度陽性になってきますので、うがいを継続的にした人は「陰性」になるということはあると思います。


やはり口中のウイルスを一時的にへらすだけのことだと松山センター長も認めています。しかも、うがい薬を使わずに水うがいでも同じような効果がある可能性があります。

では、この実験結果にどんな意味があるのかというと、松山センター長は、唾液中のウイルスがへれば人に移すリスクがへることと、軽症者の場合、唾液を肺に吸い込んで肺炎になるリスクがへることを挙げています。
しかし、陽性者はすでに隔離され、マスクをするなどして人に移さないように心がけていますし、口腔中のウイルスはへっても肺に直結する鼻腔中のウイルスはへらないので、肺炎になるリスクはそれほど変わらないとも思えます。

ただ、松山センター長は、実験はずさんだったとしても、そんなにでたらめなことは言っていません。
問題は、そんな実験結果に食いついて、「うがいでコロナに打ち勝てる」などと誇大妄想的な発表をした吉村知事です。

私は最初、吉村知事はニセ科学による詐欺にひっかかったのかと思いました。
しかし、実際は一人相撲ならぬ“一人詐欺事件”とでもいうのか、松山センター長はだます気がないのに吉村知事が勝手にだまされてしまったのです。
吉村知事は口腔中のウイルスがへって検査結果が「陰性になる」ということを、勝手に「コロナが治る」と脳内変換したに違いありません。
そして、それをマスコミに発表する自分の姿を想像して酔いしれ、正常な判断力を失ってしまったのです。


これまでメディアは吉村知事をひたすら持ち上げてきました。
政府のコロナ対策はでたらめで、安倍首相も西村コロナ担当相も加藤厚労相も自分の言葉で説明することができないので、メディアは各知事に注目し、中でも歯切れのいいしゃべりのできる吉村知事は連日テレビに顔出ししてきました。
そのため吉村知事は自分が日本のコロナ対策の中心であると勘違いをするようになったのではないでしょうか。

そして、吉村知事が力を入れたのが、大阪府、大阪市、大阪大学、大阪市立大学、医療機関、民間会社などオール大阪で取り組む“大阪ワクチン”の開発です。
世界中でワクチン開発を競っている中で、“大阪ワクチン”がどの程度有力なのかよくわかりませんが、「やってる感」を出すのにこれ以上のものはありません。
マスコミも食いつきがよく、吉村知事が「6月30日から臨床試験を始め、市大病院の医療従事者からワクチンを接種してもらう」などと発表するたびに大きく取り上げてきました。


そうしたところに松山センター長の実験結果が知らされ、吉村知事は「大阪発のコロナ対策」というところに食いついたのでしょう。
しかも、ポビドンヨード含有のうがい薬の代表的存在であるイソジンは、大阪の塩野義製薬の製品です。塩野義製薬は“大阪ワクチン”の開発に深く関わり、大阪万博のスポンサー企業でもあります。吉村知事の「うがい薬がコロナに効く」発言で塩野義製薬の株価が急騰し、インサイダー疑惑もささやかれ、吉村知事は“イソジン吉村”と揶揄されました。

インサイダー疑惑については『吉村知事「ヨードうがい薬」会見を『ミヤネ屋』に事前漏洩! 出演者のテリー伊藤が「会見の1時間半前に知った」「インサイダー取引できた」』という記事があります。


吉村知事は、コロナ対策をするときに「大阪」にこだわったのが失敗です。
科学では客観性がだいじで、自己中心的とか身びいきとかお友だち優遇とかは科学の敵です。

それは安倍首相においても同じです。
安倍首相は緊急事態宣言解除のときに「『日本モデル』の力を示した」と言って胸を張ったために、感染再拡大の事態ではなにも言えなくなりました(吉村知事が先に「大阪モデル」という言葉を使っていて、「日本モデル」はそのパクリでしょう)。
安倍首相はまた、富士フイルム富山化学の抗インフルエンザ薬「アビガン」を新型コロナ治療薬として強く推し、2020年度補正予算案に139億円を計上し、承認を急がせました。日本発の薬だということのほかに、富士フイルムHDの古森重隆会長が安倍首相を囲む財界人「四季の会」の中心メンバーであること、つまりお友だち優遇ということもありそうです。
しかし、臨床試験ではいまだに有効性が立証できず、一時は5月中の承認を目指していた安倍首相も、最近はアビガンに言及することもなくなりました。


吉村知事は、ポピドンヨード含有のうがい薬について「治療薬ではない」「予防効果があるとは一言もいっていない」と弁解しましたが、訂正や謝罪はしていません。
大阪のメディアがみんな大阪維新の会のお友だち化して、吉村知事を追及することもないので、それで通っているのでしょう。

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8月6日の広島原爆投下の日に『日本に「大きな責任」求める 駐日大使指名ワインスタイン氏―米上院委』というニュースがあったので、アメリカはまだ原爆投下の責任を日本になすりつけようとしているのかと思いましたが、それは私の勘違いで、次期駐日大使のワインスタイン氏が日本に同盟国としてのより大きな責任を求めると米上院で証言したというニュースでした。

原爆投下の責任でなくても、アメリカが日本に責任を求めることに変わりはなく、米軍駐留経費の負担や兵器の購入などで日本はさらに出費を求められそうです。


アメリカは日本に原爆投下を謝罪することもありませんし、日本がアメリカに謝罪を求めることもありません。
もっとも、日本がアメリカに原爆投下の謝罪を求めると、アメリカは「日本はパールハーバーの謝罪をしろ」と言ってきそうです。
日本も真珠湾攻撃の問題をうやむやにしてきました。


アメリカ人は真珠湾攻撃を「卑怯なだまし討ち」と思っています。
真珠湾攻撃のとき、日本政府の宣戦布告が攻撃開始から1時間遅れました。
もともと宣戦布告ないし最後通牒ののちに開戦するという国際慣習がありましたが、1907年の「開戦に関する条約」の第1条に「締約国は理由を付したる開戦宣言の形式、または条件付開戦宣言を含む最後通牒の形式を有する、明瞭かつ事前の通告なくして、其の相互間に戦争を開始すべからざることを承認す」とあるので、明白な国際法違反です。

ただ、自衛戦争の場合は宣戦布告の必要はありません。
靖国神社の遊就館には、大東亜戦争は「自存自衛」の戦争だったという展示がされています。
おそらく日本の保守派は自衛戦争だと見なして宣戦布告の遅れを無視してきたのかもしれませんが、「真珠湾攻撃は日本の自衛戦争だった」という理屈が、アメリカに対してもどこに対しても通じるわけがありません。

結局、日本は「卑怯なだまし討ち」をしたのに謝罪しない国ということになっています。

安倍首相は2015年4月29日、日本の総理大臣として初めて米国上下両院の合同会議でスピーチを行いました。
このときなど真珠湾攻撃について謝罪する絶好のチャンスでしたが、「私たちの同盟を希望の同盟と呼びましょう」などと空疎な言葉を述べただけでした。



宣戦布告の遅れの問題は誰でも知っていますが、もうひとつ、先制攻撃の問題はあまり認識されていないのではないでしょうか。

第一次世界大戦の反省から1928年に成立したパリ不戦条約では、戦争は禁止され、違法行為となりました。ただ、自衛戦争は合法であるという抜け道があり、制裁の規定もありませんでした。
日本が上海事変、満州事変と言って、「戦争」の言葉を使わなかったのは、このパリ不戦条約があったからです。
ドイツがポーランドに侵攻したときも、ポーランドが先に攻撃してきたという理由をつけました。
ただ、これに対してイギリス、フランスなどがドイツに宣戦布告したのは、パリ不戦条約からはありえないことで、このときにパリ不戦条約は有名無実化したのかもしれません。
さらにドイツが相互不可侵条約を破ってソ連に侵攻し、世界は無法状態になりました。

しかし、どんな無法の世界でも基本的な倫理というのは不変です。
それは、「喧嘩は先に手を出したほうが悪い」というものです。

決闘は、どちらが先に手を出してもかまわないというルールですが、たとえば西部劇のヒーローは、自分から先に銃を抜くことはありません。先に手を出すのは悪いという共通認識があるからです。

太平洋戦争は、日本が先に手を出した戦争ですから、日本が悪いに決まっています。パリ不戦条約があるので、法的にも違法です。
侵略か自衛かでいえば、日本が侵略、アメリカは自衛です。

アメリカ人も、宣戦布告の遅れなどは大して問題にしていなくて、先に手を出したことと不意討ちだったことで怒っているのです。

ですから、日本はむしろ宣戦布告の遅れよりも先制攻撃を謝罪しなければなりません。
そうすれば日本は原爆投下や都市無差別爆撃などでアメリカに謝罪を要求することができますし、さかのぼって黒船による砲艦外交で不平等条約を押し付けられたことも問題にできます。



ところで最近、敵基地攻撃能力の議論があって、その中に先制攻撃論もあります。
敵がわが国を攻撃することが明らかなときは敵基地を先制攻撃しようという議論です。
しかし、敵がわが国を攻撃するか否かを事前に察知することは至難の技で、それは真珠湾攻撃を振り返ってもわかります。

海軍航空隊は真珠湾攻撃の場合に備えて、地形のよく似た鹿児島湾を真珠湾に見立てて訓練をしていました。もしアメリカのスパイがそのことを察知すれば、日本にアメリカ攻撃の意志ありと判断したでしょう。
そして、南雲中将率いる機動部隊が出撃したことを察知すれば、攻撃行動に出たと判断して、もし可能ならアメリカ軍が機動部隊に対して先制攻撃をしたかもしれません。
しかし、実際は日本政府もぎりぎりまで日米交渉の妥結を目指していて、妥結すれば機動部隊は途中から引き返すことになっていました。艦隊が真珠湾に向かっているからといって、確実に攻撃するというわけではありません。

日本が敵国に攻撃の意志ありと判断して先制攻撃をしたところ、敵国は攻撃する意志も準備もなかったということが明らかになったとします。その場合、日本は敵国に対して謝罪して、先制攻撃で与えた損害の賠償をするのが筋ですが、そこまで考えているでしょうか(もっとも、アメリカは大量破壊兵器があると言ってイラクを攻撃し、大量破壊兵器がないことが明らかになっても、謝罪も損害賠償もしていませんが)。

ともかく、真珠湾攻撃を思い出せば、先制攻撃論の危うさがわかります。


ところで、なぜ今敵基地攻撃能力が議論されるかというと、イージス・アショアの配備が中止になって、代わりにアメリカからなにか高額な兵器を買わなければならないからです。
もちろんイージス・アショアの代わりになにかを買う義務はないのですが、日本は「卑怯なだまし討ち」をしたことを大目に見てもらっているという負い目があるので、対等な交渉ができません。
そういう意味でも真珠湾攻撃の謝罪をすることは重要です。


もっとも、日本がアメリカに真珠湾攻撃の謝罪をすると、中国や韓国やその他のアジア諸国も日本に謝罪を求めてきて、パンドラの箱を開けたみたいなことになりそうです。
確固とした歴史認識がないとできないことではあります。

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子どもがよく嘘をつく。どうしつけたらよいか――というのは、子育てでよくある悩みです。
ネットで調べてみると、簡単にいくつも見つかります。
【相談内容】子供の嘘がどんどんエスカレート
『最近、小学3年生の息子がすぐに嘘をつきます。昔に比べて嘘の内容がどんどん巧妙になってきており、性格に問題があるのではないかと心配です。宿題をやったか、ゲーム時間や門限を守ったのか聞いても嘘ばかり。それを叱ると屁理屈ばかり言ってプチ逆切れの状態になり、ほとほと困ってしまいます。

ワーキングマザーのため、放課後は子供と一緒にいてあげることが出来ません。それが悪影響なのでしょうか? また、嘘をついた場合、厳しく叱ったり罰したりしたほうがいいのでしょうか?』
(相談者:神奈川県 40代 NANA)
https://allabout.co.jp/gm/gc/462867/
嘘をつく子供へのしつけ
2018/04/12 13:58
4年生の娘がいます。
嘘、隠し事が多すぎて困っています。
これまでも優しく諭してみたり、がっかりしたことを伝えてみたり、キツくしかってみたり、罰を与えてみたりといろいろ試しましたが、その場は反省したように見えても、結局治っていません。癖になってしまっているようです。
嘘の内容は家のルールを破ったことを隠す程度で、誰かを傷つけるようなものではないと思ってますが…
真顔で嘘をつき、隠し事にも後ろめたさがないような感じで、とても心配です。
バレなければルールは破ってもいいと認識してしまっているようにも見えます。
こう育てたのは親の責任でもあると重々承知なのですが…一度根本的なところを諭したい、ルールを破るより嘘をつく方がいけない事だと理解させたいです。口では何度か伝えましたが変わらず…いいアイデアはないでしょうか?また、みなさんはどうしますか?
https://okwave.jp/qa/q9487766.html


「嘘をついてはいけない」というのは、もっとも基本的な道徳だと思われているかもしれません。
しかし、それは間違いです。

ちなみに「嘘をついてはいけない」という法律はありません。
偽証罪があるではないかと思われるかもしれませんが、偽証罪というのは法廷や国会の証人喚問において宣誓した証人が嘘をついた場合にのみ適用されるものです。
詐欺罪はありますが、これは相手をだまして財物や財産上の利益を得た場合に適用され、単に相手をだましただけでは罪になりません。

逆に法律では「ほんとうのことでも言わなくていい」という規定があります。
日本国憲法第三十八条には「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」とありますし、刑事訴訟法第311条1項には「被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる」とあります。
つまり黙秘権です。

しかし、黙秘権が認められない状況もあります。
たとえば、フランスのレジスタンスがナチスのゲシュタポに捕まって、「仲間の居場所を知っているだろう。白状しろ」と迫られ、黙秘すると拷問されるとします。
そんな場合、「知らない」と言ったり、虚偽の居場所を教えたりするのは嘘ですが、道徳的に許される嘘です。


日常生活では、「黙秘します」と言うと、それが答えになることがあります。

妻「浮気したでしょう」
夫「黙秘します」

芸能記者「彼氏はいますか」
アイドル「黙秘します」

こんな場合は、黙秘する代わりに「浮気はしていない」「彼氏はいません」と嘘をつくしかありません。
つまり日常生活では、自己に不利な供述を拒むためには、黙秘権だけではなく、嘘をつく権利も必要なのです。

基本的人権として、黙秘権がある以上、嘘をつく権利もあるということを理解しなければいけません。



子どもが嘘をつくことで悩んでいる親は、子どもには嘘をつく権利があると思えば、そんなに悩まなくなるでしょう。
そして、自分がゲシュタポ化しているのではないかという反省も生まれるはずです。

悩み相談には子どもがどんな状況で嘘をつくのかは具体的に書いてありませんが、容易に想像はつきます。

「宿題やった?」
「やってない」
「だめじゃない! 何回言ったらわかるの。ゲームばっかりやってないで、早くやりなさい」

子どもがほんとうのことを言うと叱られるということが繰り返されると、子どもは嘘をついて、叱られることを回避しようとします。
嘘はいずれバレるとしても、とりあえず叱られる苦痛から逃げることができます。
嘘をついてはいけないと叱っても同じです。子どもはより巧妙な嘘をつこうとして、逆効果になります。

子どもが嘘をつくというとき、親は自分が取調官のようになっているのではないか、叱りすぎる親になっているのではないかと反省する必要があります。


アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンが子どものころ、父親がたいせつにしていた桜の木を誤って切ってしまい、父親に「この木を切ったのは誰か」と聞かれたとき、正直に「僕が切りました」と答えたところ、父親は叱らずにその正直さをほめたという話があります(これは史実ではないとされています)。
この話は、子どもに正直のたいせつさを教える話としてもっぱら利用されています。正直になると将来ワシントンのような偉大な人物になるかもしれないということです。
しかし、この話はむしろ親に対して、正直な子どもに育てるにはどうすればいいかを教える話として利用するのが正しい利用法です。
世の親がみんなジョージ・ワシントンの父親のようになれば、嘘をつく子どもはほとんどいなくなります。




嘘には大別して、利他的な嘘と利己的な嘘があります。

利他的な嘘というのは、相手を傷つけないための嘘です。
たとえば、昔は医者が患者にガンを発見したとき、とりあえず嘘をつくのが一般的でした。
「いくつに見えますか」と聞かれたとき、思った年齢より若く言うとか、最近趣味で始めたという油絵を見せられたとき、「下手ですね」と言わないようにするとか、相手を傷つけないための嘘は日常的に存在して、これらは肯定される嘘です。
ですから、「嘘をついてはいけない」というのは根本的に間違っています。

ただ、利他的な嘘というのは少なくて、ほとんどの嘘は利己的な嘘です。
利己的な嘘というのは、相手をだまして利益を得るための嘘です。
悪質なものは詐欺ということになりますが、ハッタリの嘘、虚栄の嘘、自慢の嘘など、利己的な嘘はあらゆる場面にあります。
よいことと悪いことがあるとき、よいことだけを言うというのも、広い意味での嘘かもしれません。
就活や婚活のとき、誰でも嘘を駆使して自分をよく見せようとします。

人間の生活は嘘まみれです。
そのことを理解すれば、子どもに対して「嘘をついてはいけない」などと言わなくなり、寛容な親になれるはずです。

菅官房長官
首相官邸HPより

内政で行き詰まると国民の目を外にそらせるというのは、どこの国の政府もよくやることです。

感染の第二波の到来に対してまったく無策で、逆に「Go Toトラベル」キャンペーンを推進するという政府に対して、国民の批判が高まっています。
こうした状況で菅義偉官房長官は国民の目を韓国に向けさせようとしたのでしょうか。


そもそもの発端は、韓国平昌の韓国自生植物園という民間植物園の中に「永遠の贖罪」と題した造形物が設置され、8月10日に除幕式を行うと発表されたことです。
韓国の新聞は「この造形物は、座っている1・5mの慰安婦少女像の前で、1・8mの安倍首相の銅像がひざまずいて謝罪をしている姿だ」と報じました。
これを私費でつくった金昌烈園長は「罪滅ぼしの対象をはっきり形作る必要があり、少女像が向き合うものは安倍に象徴させて造成した」と述べました。
ただ、造形物に「安倍」の文字はないようです。

スクリーンショット (27)
FNNプライムオンラインより

こうした報道に対して、菅官房長官は7月28日の記者会見で次のように述べました。

事実かどうかは確認しておりませんけど、そのようなことは国際儀礼上許されないと思います。かりに報道が事実であるとすれば、日韓関係に決定的な影響を与えることになる。いずれにせよ、慰安婦問題については、韓国側に対し、慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意の着実な実施を引き続き強く求めていく、そうした考え方に変わりはありません。

「日韓関係に決定的な影響を与えることになる」とは強い言葉です。
しかし、そもそも官房長官が言及するようなことでしょうか。

韓国の一民間人が自分の施設の中にどんなものをつくろうと自由です。誰も止められません。
あの像が安倍首相だとすれば、「国際儀礼上許されない」ということは言えるでしょうが、安倍首相だとは特定されていませんし、やはり民間人の設置したものについて、日本の政府高官が言及するものではありません。

なお、そもそも慰安婦像が問題になったのは、ソウルの日本大使館前の歩道に行政の許可なく像が設置されたからです。
ウィーン条約に「公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する」とあるのに違反しているとして、日本政府は撤去を求めました。

そのときと今回はぜんぜん事情が違います。
「国際儀礼上許されない」とか「日韓関係に決定的な影響を与える」とかは、まるで韓国政府に対して言っているようですが、言う根拠がありません。
民間人に対して言っているとしても、おかしなことです。

菅長官が言及する前にも、韓国内でこの像について賛否両論があって、「なんの利益になるのか」とか「幼稚すぎる」といった批判がありました。
放っておけば、落ち着くところに落ち着いたでしょう。


菅長官は定例記者会見において、TBS記者の質問に対して答えたのですが、菅長官は「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した日韓合意」という言葉を手元の資料を見ながら言いました。ということは、この質問があることがあらかじめわかっていて、答えも用意されていたのです(質疑応答自体がなれ合いです)。

菅長官は「日韓関係に決定的な影響を与える」という強い言葉を使って、この問題を炎上させようとしたのでしょう。

しかし、金園長は騒ぎが大きくなって8月10日の除幕式は中止するつもりのようですが、「造形物を撤去するつもりはまったくない」「造形物の代わりに私を撤去しろ」と強気です。
こう言われると、それ以上どうにもなりません。
菅長官の“炎上商法”は不発に終わりました。

いや、不発どころではありません。
「リテラ」は『“首相謝罪”像が意外な展開! 嫌韓より「安倍が日本国民に謝ったんじゃないのか」のツッコミが続出、「謝罪像ほしい」の声も!』という記事で日本国内の反応を伝えています。

ツイッターで「首相謝罪」がトレンドワードになると、安倍首相が日本国民に謝罪したと誤解した人が続出したそうです。

〈首相謝罪、てっきり今までのコロナ対策の怠慢や無策を国民に詫びるとかだと思ったら違った。〉
〈コロナ対応や水害の被災者支援についての対応遅れについてかと思ったらちゃうのね〉
〈首相謝罪?って、私は首相が布マスク配布やGOTOトラベルで無策で迷惑かけているのでてっきり国民に謝罪する件なんだとおもったんだが。〉

「首相謝罪」の意味が、韓国に設置された首相の謝罪像のことだとわかっても、韓国非難の声は盛り上がらず、やはり安倍首相に対して謝罪を求める声のほうが強いということです。

〈トレンドに「首相謝罪」ってあるけど、コロナ対策もロクにしてないし、まずお前が謝罪しろ。〉
〈首相謝罪?韓国に謝罪はいらんよ。安倍は日本国民に謝罪してくれよ。〉
〈#首相謝罪 また使えないマスク8000枚配るバカはマジで国民に土下座しろ〉
〈首相謝罪像の頭を日本国民の方に向けて設置するべきなのでは〉
〈日本にも一体送ってくれんかな〉
〈「首相謝罪の像」、日本にも何個か設置したいと思いませんか? 例えば福島とか、森友小学校跡地とかに。〉

かつては嫌韓ネタを投下すると、世論が盛り上がったものですが、今回はまったく違います。
官房長官が一韓国国民に文句をつけるという愚かなことをした上に、もともと安倍首相に対する怒りが充満していたからです。

いまだにコロナ対応よりも世論操作のことを考えている安倍政権に国民があきれるのは当然です。

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