村田基の逆転日記

進化倫理学の威力を試すブログ

2021年02月

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スキャンダルの渦中にあって弱っているとき、親から「完全に別人格ですからね」と言われた子どもは、どんな気持ちなのでしょうか。

菅義偉首相の長男・菅正剛氏による総務省高級官僚接待問題が国会で取り上げられたときの菅首相の発言ですが、正確には次のようなものです。

「(長男は)今もう40(歳)ぐらいですよ。私は普段ほとんど会ってないですよ。私の長男と結びつけるちゅうのは、いくらなんでもおかしいんじゃないでしょうか。私、完全に別人格ですからね、もう」

 2月4日の衆院予算委員会。野党議員の追及を受けた菅義偉首相(72)は、顔を強張らせると、珍しく答弁ペーパーから目を上げ、感情を露わにした。
https://news.livedoor.com/article/detail/19731015/
親からこんなことを言われた子どもは、「グレてやる!」と思うのではないでしょうか。

菅首相の長男の総務省官僚接待問題に火をつけたのは週刊文春ですが、文春オンラインの『「ササニシキ送りますよ」菅首相長男の“接待攻勢”音声』という記事に、菅正剛氏の写真が載っていました。

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いずれの写真も文春オンラインの記事より

ボサボサの長髪に、無精ひげ風のひげ、清潔感がなく、服装もだらしない感じです(服装は、そういう瞬間をねらって撮ったにしても、普通のサラリーマンならなかなかこういう格好はしません)。

こういう風体で高級官僚を接待していたというのは、なかなか信じがたいことですが、「グレてやる!」という思いがこういう格好になっているのでしょう。

もっとも、それは時系列が逆だと思われるかもしれませんが、正剛氏は幼少期から
菅首相のもとで育っているので、「グレてやる!」というのは若いころからの思いです。


菅首相は、家族関係がまったく謎でした。
秋田の貧しい農家で育ったことが原点だと言い、「ふるさと」を強調しますが、高卒で秋田を出て、それから秋田との縁はほぼ切れています。父親とはあまりいい関係ではなかったようですし、母親のこともそれほど語りません。
奥さんは表に出るのが嫌いな人だということで、ほとんど姿を現しませんし、夫婦関係もよくわかりません。
そして、子どもは息子が3人いるのですが、これもまた謎でした。

そうしたところ、長男の正剛氏のことが表面化して、やっと謎の一角が見えたわけです。


正剛氏はどんな育ち方をしたのでしょうか。
菅首相は家族のことをほとんど語らない人ですが、子育てについて語っている『菅官房長官が初めて語った「妻」と「息子」について 「次の総理候補と60分」』という記事がありました。

——ご家庭ではどんな夫、どんな父でしたか。

菅 もともと、夫婦間の会話が多いほうではありません。子どもには厳しかったですよ。いつも言っていたのは「中学高校では運動部に入れ」ということ。長男は柔道、次男はサッカー、3番目はバスケットをやりました。

——三男はその後、ご自身と同じ法政大学に進み、強豪の体育会アメリカンフットボール部に所属されたそうですね。

菅 はい。次男坊も東大でアメフトをやっていたんです。

——東大法学部を出られた息子さんですね。ご長男は?

菅 明治学院です。

——なぜ運動部入りを義務づけたんですか?

菅 私は仕事柄、家庭にあまりいられないので十分な躾ができないですから。部活というのは躾をしてくれますよね。部活をちゃんと続けられれば、社会に出ても、まあ一生飯は食っていけるだろうと思ったんです。

——いま息子さんたちを見て、その教育は正しかったですか。

菅 正しいかどうかはわからないですけど、3人とも、私に就職を頼んだりするのは一番嫌がる人間になりました。私も、親父が就職のアドバイスをするようなのは一番嫌なんだよね。

——「世襲はしない」と公言されています。

菅 私は世襲政治家を批判して出てきた人間だから、それだけはやっちゃいけない。「もし政治家になるんだったら、他の県に行って出ろ」と、昔から明快に言ってます。だから誰も言い出さない。3人とも民間の企業で働いています。

「中学高校では運動部に入れ」というのが菅首相の教育方針です。
今の世の中は、親がどんな教育方針を掲げてもいいことになっていますが、これは世の中が間違っているので、子どもに合わない教育方針を掲げてはいけません。
体育会系の部活が合う子どもも、文科系の部活が合う子どももいます。
正剛氏はのちにバンド活動をするミュージシャンになるのですから、音楽系の部活をするのが合っていて、柔道部は不本意だったのではないでしょうか。

ちなみに菅首相は空手部でした。空手、柔道、アメフトと、ハードなスポーツが菅首相の好みのようです。


大学進学後の正剛氏の人生は、『「完全に別人格ですからね」菅首相発言は本当か……“違法接待”長男のこれまでを検証する』という記事によると、このようなものです。

 地元横浜で生まれた正剛氏は明治学院大に進学後、「世界民族音楽研究会」に所属。音楽ユニット「キマグレン」の元メンバーと共に、「COTE-DOR」というバンドを組んで活躍。卒業後、同級生が社会人となる中、一向に定職に就かない長男の行く末を菅氏は非常に心配していたという。そして、06年に総務大臣として初入閣を果たすと、社会人経験のない25歳の長男を大臣秘書官に抜擢。後に菅氏は雑誌の取材に「バンドを辞めてプラプラしていたから」と語っている。

「大臣秘書官の給与は特別職給与法により、個々の秘書官の能力と経歴に基づいて決定されます。一番下の1号俸は06年当時、月額25万9100円。さらに期末勤勉手当(ボーナス)、地域手当、住居手当、通勤手当なども付きます。毎月の地域手当は東京の場合、俸給の20%が加算されることになります」(内閣人事局の担当者)

 ざっと計算すれば、ボーナスを含めて400万円ほどが支払われたことになる。
 
正剛氏を知る地元の知人が苦笑交じりにいう。

「正剛はその後、秘書官を辞めてからは仕事がなくて、ある日突然『バーを経営する』と言い出したことがあった。そんな姿を見かねた空手部出身の父から鉄拳制裁を食らい、『直立不動でそれを受けたんだ』と話していました。父の叱責に嫌気がさしたのか、正剛は一度家を飛び出した。でも、街中のそこかしこに父親のポスターが貼ってあるのが目につき、父の威光に観念して家に戻ったそうです」

 バルコニーから横浜港が一望できる36階建てのタワーマンションの上層階を正剛氏が購入したのは、大臣秘書官を辞めた半年後の08年1月のこと。80平米超の3LDKで、販売価格は8000万円を下らない新築の高級物件だ。だが登記簿を確認すると、ローンはわずか2000万円。6000万円前後の頭金を自己資金として捻出していることになる。当時、正剛氏は独身で妻やその親族の援助はありえない。誰が6000万円を用意したのだろう。今住んでいるのは、4年前にこの物件を売り払って移った億ションだが、ここもローンは1800万円に過ぎない。

 08年に正剛氏は菅氏の後援者である植村伴次郎氏が創業した東北新社に入社。「総務省担当」を担うようになった。

大臣秘書官というのは、政治家の事務所にいる秘書とは違って、大臣を補佐する特別職公務員です。政治家秘書の経験もなく、総務省行政の知識もない若者が就くのは異例です。
菅首相(当時総務相)としては、秘書官の給料は国から出るので、身内を就けておけば、その給料を自分のものにできるといった感覚だったのでしょう。国会議員の公設秘書に妻を就けるみたいなものです(勤務実態のない者を秘書にするのは一時期問題になったので、最近はないはずです)。

25歳の若者ならいくらでも自力で就職できたはずです。菅首相が正剛氏を秘書官にしたのは、正剛氏の自助を妨げる行為です。
高額なマンションを買い与えたのも同様です。

その一方で「鉄拳制裁」もあったようです。
25.6歳の若者に暴力をふるうとは、空手をやっていた菅首相ならではですが、暴力はこれが初めてということはないでしょう(子育てについての記事で「子どもには厳しかったですよ」と語っています)。
それに、「バーを経営する」と言ったことが鉄拳制裁の理由というのも理解に苦しむところです。
菅首相の価値観では水商売やバンドマンはまともな職業ではないのでしょう。

大臣秘書官を経験した正剛氏は、一般企業に就職して新入社員として一からスタートする気にはならないでしょう。バー経営という道も否定されました。そこで選んだのが、父の威光を利用して東北新社の社員になることでした。

菅首相は自分が正剛氏の就職の世話をしたことは否定しています。
22日の国会答弁でも、「私は子どもが3人いるが、就職について自分が紹介するとかは一切やっていない」「長男が(創業者を)非常に慕い、(長男と創業者の)2人で(就職の)話を決めた」と語りました。

しかし、菅首相が直接話をしなかったとしても、東北新社が正剛氏を採用したのは「菅義偉の息子」だったからであることに疑う余地はありません。
そして、菅義偉氏が官房長官として力をふるい、さらには首相になると、「菅義偉の息子」という肩書きの威光はますます高まり、正剛氏は会社でも重みを増しました。

しかし、いくら「菅義偉の息子」として評価されても、正剛氏の承認欲求は満たされません。
それで、あのような不潔感のある風体をするのではないでしょうか。
あの風体は「菅正剛を見てくれ」という主張です。

正剛氏は世の中からドラ息子やバカ息子と言われていますが、最初からバカ息子だったわけではなく、そこに至るそれなりの道筋があります。

菅首相は「自助」や「絆」を言いますが、だいじなのは「世間体」で、そのために正剛氏の人生を振り回しました。
正剛氏がグレるのは当然です。
そして、正剛氏がスキャンダルに見舞われると、菅首相は自己保身のために「完全に別人格」と切り捨てました。

菅首相の顔にはつねに冷酷さがうかがえますが、子どもにとっても冷酷な父親であるようです。

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東京五輪組織委員会の森喜朗会長の辞任が取り沙汰されているとき、「組織委の会長は五輪の顔としてふさわしい人物でないといけない」ということが言われました。
組織委の会長は、大会の開会式と閉会式でスピーチをし、IOCの役員らともつきあうので、そういう「五輪の顔」の役割があるということのようです。

結局、橋本聖子五輪担当相が後任会長に選ばれましたが、橋本会長は「五輪の顔」としてふさわしいのでしょうか。

橋本会長は国際的な有名人とまではいえなくても、冬季五輪4回、夏季五輪3回の出場経験があり、国会議員と五輪担当相になったという経歴を聞けば、誰でも「へえ」という反応をするでしょう。
しかし、「強制キス」疑惑も海外でかなり報道されているようなので、「顔」としての役割だけ考えるなら、ふさわしいかどうか微妙です。

では、森氏は「五輪の顔」としてふさわしかったのでしょうか。

森氏は一年間首相を務めましたが、世界でそのことを知っている人はほとんどいないでしょう。
しかも、首相だったときは内閣支持率ヒトケタという最低記録を出す不人気ぶりでした。
高校、大学でラグビーをやっていましたが、選手としての実績はありません。
森氏が開会式と閉会式でスピーチをすると、世界中の人が「なんでこの人が?」と思うでしょう。
IOCの役員らとつきあう上でも、森氏には知性も教養も語学力もありません。
性差別発言がなかったとしても、これほど「五輪の顔」に不向きな人はいないと言っていいぐらいです。


ところが、森氏でなければ「五輪の顔」は務まらないと主張する人がけっこういました。
そもそも「組織委の会長は五輪の顔としてふさわしい人物でないといけない」というのは、森会長を辞任させるなという意味で言われていました。
彼らは森氏は「五輪の顔」に最適だと考えているのです。
「五輪の顔」についての認識がまるで違います。

これはどういうことかと考えているうちに答えがわかりました。
森氏の「厚顔」が「五輪の顔」にふさわしいということなのです。
「厚顔」はすなわち「厚顔無恥」でもあります。単に「面の皮が厚い」といってもかまいませんし、「鉄面皮」という言葉でも同じです。

森氏は数々の失言をして批判されても、謝罪らしい謝罪もせず、平然としています。
首相時代、支持率ヒトケタになれば、普通の人なら自分から辞めるでしょうが、森氏は周りの“森おろし”によってようやく辞任しました。
今回も、女性差別発言をいくら批判されても、本人はまったく反省していないようです。
「厚顔」そのものです。

トランプ前大統領も似たところがあります(体型も似ています)。
トランプ氏も、山ほど嘘をついて、嘘を指摘されても平然としています。そうすると、嘘が嘘でないように思えてきます。
こうした「厚顔」は一種の才能かもしれません。

「厚顔」であることがどうして「五輪の顔」に向いているのかというと、日本人の欧米コンプレックスが関わってきます。


オリンピックは単なるスポーツ大会ではありません。オリンピズムという思想に基づいています。
オリンピック憲章の「オリンピズムの根本原則」にこう書かれています。
1.オリンピズムは肉体と意志と精神のすべての資質を高め、 バランスよく結合させる生き方の哲学である。 オリンピズムはスポーツを文化、 教育と融合させ、 生き方の創造を探求するものである。 その生き方は努力する喜び、 良い模範であることの教育的価値、 社会的な責任、さらに普遍的で根本的な倫理規範の尊重を基盤とする。
2.オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである。

これは古代ギリシャに発するヨーロッパ文化の精華を示したものです。
オリンピックはヨーロッパ文化と切っても切り離せません。

ところが、日本人は欧米コンプレックスがあるので、このようなヨーロッパ文化にうまく向き合うことができません。
IOCの役員も高尚なヨーロッパ文化を身につけた人ばかりに違いないと、コンプレックスがある日本人は考えてしまうので、ついつい卑屈になります。

その点、森氏は「厚顔」なので、自分に知性や教養がないことなどまったく気にしません。
IOCの役員に対しても対等な顔をしてふるまいそうです。
それゆえ「五輪の顔」は森氏でなければと考える人がいたのでしょう。
すべては日本人の欧米コンプレックスがなせるわざです。

しかし、会議の長いのが嫌いで、密室談合が得意な森氏にIOCとまともな交渉ができたでしょうか。
森氏を評価する人はいますが、IOCとの分担金交渉を日本有利にまとめたというような具体的な功績を挙げる人はいません。

安倍前首相も森氏と同じような役割を演じていた面があります。
安倍前首相はトランプ大統領やプーチン大統領など欧米の指導者と親しげな関係を演出し、「外交の安倍」などと言われていましたが、外交の成果といえるものはほとんどありません。
親しくもないのに親しげな態度ができるという「厚顔」だけの外交だったわけですが、欧米コンプレックスの強い日本人には支持されました。


オリンピズムといってもそれほど素晴らしいものではありません。
たとえばかつてアマチュアリズムはオリンピズムの重要な柱でした。
そのためにプロとアマを区別しなければならず、さまざまなトラブルがありましたが、方針転換してプロの参加を認めればなんの問題もなく、今ではアマチュアリズムにこだわっていた昔がバカみたいです。
オリンピズムというのは単なる美辞麗句で、今ではオリンピックは商業主義そのものです。


ヨーロッパ文化には優れた面もありますが、古代ギリシャ・ローマは市民よりも奴隷の数が多かったといわれる奴隷制社会で、差別主義もその文化には刻まれています。
具体的にはヨーロッパ文化至上主義があります。これは中華思想のヨーロッパ版です。

オリンピック大会の運営にはヨーロッパ文化至上主義がいまだに残っています。

たとえば開会式の入場行進は、毎回ギリシャ選手団が先頭です。
近代オリンピック大会の最初のうちは、参加国はヨーロッパばかりなので、それでよかったかもしれませんが、今ではオリンピック大会は完全に世界規模になりました。
世界規模の大会でギリシャが先頭だと、古代ギリシャに発するヨーロッパ文化は特別だという意味になります。
日本はヨーロッパ文化至上主義に反対し、各国を平等に扱うように要求するべきです。
また、聖火の採火式もギリシャのオリンピア遺跡で行われますが、東京大会ならば、富士山頂とか高天原で行うようにするべきです。


ともかく、オリンピックはヨーロッパ文化と深く結びついており、欧米コンプレックスの日本人はIOCとつきあうときにどうしても気後れを感じてしまいます。
だからといって、森氏の「厚顔」に頼るのは、みっともないことこの上ありません。

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東京五輪組織委員会の森喜朗会長が辞任するまでのドタバタ劇によって、日本の“不都合な真実”が世界に発信されてしまいました。
森氏が性差別発言をしても居座ったことで日本が性差別に許容的なことがバレましたし、辞任するときに83歳の森氏が84歳の川淵三郎氏を後継指名したことで日本が老人支配の国であることもバレました。

「老害」という言葉がありますが、これは「老人=害」と理解される恐れがあります。問題は社会のあり方なので、「老人支配社会」や「老人優位社会」という言葉が適切です(「老人支配社会」の害を「老害」と表現するのはありです)。

日本は「男性支配社会」かつ「老人支配社会」です。
男性の老人がのさばって、女性や若者の活躍を妨げて、そのため社会全体の活力が失われています。

こうした社会を変えるにはマスメディアの役割が重要ですが、日本はマスメディアも男性支配と老人支配を追認しています。
このことも今回のドタバタ劇で浮かび上がりました。


森氏が「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」という性差別発言をしたのが2月3日で、その翌日には記者会見を開いて、発言を撤回して、反省とお詫びを表明しました。
素早い対応で、常識的にはこれで問題は沈静化するはずでした。
ところが、この謝罪会見がむしろ逆効果になりました。

森氏は紙を読みながら反省とお詫びを表明しました。
そのあと質疑応答になりましたが、このときの森会長の態度が最悪でした。
これは実際の映像を見ないとわかりません。



これは「逆ギレ会見」と言われますが、キレる以前から記者を見下したような傲慢な態度です。謝罪する人間の態度ではありません。
最初の記者に対して「僕はね、マスクをされてると、どうも言葉がよくとれないんだよ」と不満を示しますが、あとのほうでは「ちょっと悪い。(マスクを)取ってくれ。聞こえないんだよ」とマスクを取ることを要求します。
密な会場ですから、普通だとこれだけで炎上して当然です。

森氏がこのような傲慢な態度を取るのは、普段から森氏と記者の関係がこういうものなのかなと想像してしまいます。
麻生太郎財務相が記者をバカにしたようなしゃべり方をする映像がときどきニュース番組で流れますが、あれと同じです。
菅義偉首相が官房長官時代、東京新聞の望月衣塑子記者とやり合っていたことも連想します。
現在の菅首相の記者会見も、記者の質問はすべて事前通告されたもので、菅首相は答えを読むだけです(最後の質問だけ事前通告なしのことがあるようです)。
第二次安倍政権以来、権力によって記者会見がほとんどコントロールされています。

この会見も、森氏の傲慢な態度に威圧されていた記者が多かったような気がしますが、「組織委員会の会長であるのは適任なのか」と骨のある質問をする記者がいて、森氏の「おもしろおかしくしたいから聞いているんだろ」という発言を引き出して、「逆ギレ会見」とされました。


ともかく、この会見の冒頭において、森氏が問題発言の撤回と、反省とお詫びを表明したのは事実です。
その部分に注目する人は、この問題は終わったとして、森氏を擁護しました。
しかし、後半の質疑応答を見た人は、森氏はぜんぜん反省していないとして、森氏を批判しました。
このことで議論が混乱したということがありそうです。


2月12日、東京五輪組織委員会の理事会と評議員会の合同懇談会の冒頭で森氏は会長を辞任することを表明し、15分ほどしゃべりましたが、ここでも差別発言についての反省はうかがえませんでした。
懇談会後の記者会見は武藤敏郎事務総長が行い、森氏は出てきませんでした。もし出てきて質疑応答をしていたら、また問題発言を連発したでしょう。


一部に骨のある記者はいますが、マスメディアは森氏の差別発言を本気で追及しようとはしません。
たとえば「森喜朗 発言」でグーグル検索すると、上位にずらりと出てくるのは「女性蔑視発言」とするものばかりです。「女性蔑視ともとれる発言」というのもあります。「問題発言」「不適切発言」もありますが、「女性差別発言」とするのはほとんど執筆者の名前のある記事です。
つまりマスメディアは、森氏の発言を「女性差別発言」とはしていないのです。

五輪憲章では「男女平等の原則の完全実施」が掲げられ、IOCは9日の公式声明で森氏の発言を「完全に不適切」としました。
ただ、森氏の発言を「女性差別発言」とはしていないともいえます。
つまりマスメディアは、なにかの公的な権威の裏付けがないと、森氏の発言を「女性差別発言」とする勇気はないのです。

マスメディアがこういう態度なので、森氏の辞任が遅れ、最後はドタバタ劇になりました。

新聞社、テレビ局の上層部に女性はごく少数で、もちろんみな高齢です。
日本社会の男性支配と老人支配の構造をささえているのはマスメディアだともいえます。

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東京2020組織委員会公式HPより

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」などと性差別発言をし、批判されましたが、森会長は1月4日の記者会見で辞任を否定しました。
このまま森会長が居座ることになれば、日本のイメージも東京オリンピックのイメージも地に落ちます。

森会長の発言内容については今さらここでは批判しません。
それよりも森会長を擁護する人がけっこういるのが気になります。
そういう人は、森会長は政府、東京都、IOC、各スポーツ団体などとの関係を調整するのに長けていて、「余人をもって代えがたい」と言います。
しかし、代わりの人がいない近代組織などありません。
大企業のトップが不祥事を起こしたとき、代わりの人がいないなどという理由で居座ることなど許されません。

そもそも森会長は一年間総理大臣をやったとき、支持率ヒトケタをたたき出す史上最低の総理大臣でした。そんな有能であるわけがありません。

いや、自民党の派閥のトップは務まっていましたから、そういう有能さはあるかもしれません。つまり前近代の組織、村社会に向いた人です。
ですから、オリンピックという国家的事業のトップに立って、国民を盛り上げるような役割には向きません。

それに、自民党の政治家だった森会長は党派色が強すぎて、オリンピックの顔には不向きです。
本来は財界人がなるはずでした。
森氏が五輪組織委の会長に決まったときは驚いたのを覚えています。


「リテラ」の「女性差別の森喜朗が辞任どころか逆ギレ会見 こんな男がなぜ五輪組織委会長? 子分の安倍前首相による人事ゴリ押しの舞台裏」という記事によると、当時の安倍首相が猪瀬都知事の反対を押し切って、強引に森氏を会長に押し込んだということです。
2月6日付の朝日新聞にも「(森氏は)12年衆院選に立候補せずに国会議員を引退し、13年に東京大会開催が決まると、組織委トップの座をめぐる東京都と国の綱引きを経て14年1月、会長に就任した」とあるので、安倍首相が猪瀬都知事の反対を押し切ったというのは事実のようです。

森会長と安倍前首相とは親分子分の関係で、これほど太いパイプはありません。
ですから、組織委にとって森会長はありがたい存在だったでしょう。国からいくらでも金を引っ張ってくることができたからです。

大会を東京に招致するときの計画では、費用は総額7340億円でしたが、昨年12月22日の発表では総額1兆6440億円となりました。さらに朝日新聞は関連経費を合わせると3兆円を越えると報じています。

安倍前首相が森氏を組織委の会長に押し込んだのは、安倍前首相による“オリンピックの私物化”です。
利権優先で、人格など無視して性差別主義者を押し込んだので、今回のような問題が起きるのは当然です。


今、森会長を擁護している人のほとんどは、自民党関係者と安倍前首相の支持者です。
たとえば高須クリニックの高須克弥院長は森会長について「許すのは日本人の美徳なのに・・・無報酬で働く病身の高齢者にひどい仕打ちに思えます」とツイートしました。

「無報酬」というのが気になって調べてみると、どうやら会長職については無報酬であるようです。
これも異常なことです。
名誉職ではなくちゃんと仕事をしているなら、報酬は受け取らないといけません。
上級国民がこんなことをすると、ブラック企業のやり方を助長しかねません。
無報酬で働くというのは、もっと大きな利権があるからだろうと想像してしまいます。


ともかく、森氏を組織委の会長にしたのがそもそもの間違いでした。
「魚は頭から腐る」と言いますが、腐った頭を組織に据えてしまったのです。
そのため、組織全体、オリンピック大会全体が利権まみれというイメージになりました。

今回の性差別発言は、腐った頭を切り離すのにいい機会です。

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官房長官時代は有能だと言われ、首相になると無能だと言われ、ピーターの法則を地でいっている菅義偉首相です。

ちなみにピーターの法則というのは、課長のときは有能だった人間も、部長に昇進すると普通になり、役員に昇進すると無能になるというように、人間の器の大きさとポストの大きさの関係から、小さなポストで有能な人間は必然的に出世するので、世の中のあらゆるポストは次第に無能な人間によって埋め尽くされていくという法則です。
この法則は、人間の成長も世代交代も無視しているので、冗談と受け止めるべきですが、いくらかの真実は含んでいます。

昨年9月、首相就任の記者会見を見ていると、菅首相があまりにも弱々しく、不安そうな表情を浮かべているので、私はこの人に首相が務まるのかと心配になりました。
しかし、官房長官時代の実績から、そんな弱々しい人間のはずはなく、私の感覚がおかしいのかもしれないと思いました。
それに、首相就任直後ということもあります。経験を積めば首相らしくなるかもしれません。


ところが、そのあと日本学術会議任命拒否問題や新型コロナウイルス感染対策問題、それに「ガースーです」とあいさつしたのが批判されたことなどもあって、菅首相はますます弱々しくなりました。
体調にも問題があったのでしょう、せきが止まらず、声がかすれるということがあり、1月25日には野党議員から「体調はいかがですか」と聞かれ、「のどが痛くて声が出ないだけで、いたって大丈夫です」と答える場面もありました。

もともと菅首相は国民に向けて発信するのは得意ではないのですが、元気がなくなるとますます発信力が低下します。

そして、27日の参院予算委員会で立憲民主党の蓮舫議員の質問に対して菅首相が「少々失礼じゃないでしょうか」と反論する場面があり、このところ低姿勢で謝罪することの多かった菅首相だけに、この場面がマスコミにずいぶんと取り上げられました。

『「人間として未熟」「SNS気にしすぎ」 蓮舫氏の「糾弾型」質問、「サンジャポ」でも論議』という記事から、その場面を引用します。

 参院予算委では自宅や宿泊先で療養中に死亡した人が20年12月1日から21年1月25日にかけて29人いたことを受ける形で、蓮舫氏が

「総理、その重み分かりますか?」

と菅氏に発言を求めた。菅氏が「そこはあの、大変申し訳ない思いであります」と答弁すると、蓮舫氏は「もう少し言葉はありませんか?」と矢継ぎ早に質問。菅氏は「心から申し上げましたように、大変申し訳ない思いであります」と繰り返した。この答弁姿勢を、蓮舫氏は

「そんな答弁だから、言葉が伝わらないんですよ!そんなメッセージだから、国民に危機感が伝わらないんですよ!あなたには総理としての、自覚や責任感、それを言葉で伝えようとする、そういう思いはあるんですか?」

と語気を強めて非難した。蓮舫氏の追及に、菅氏は「少々失礼じゃないでしょうか」とし、続けて

「私は少なくとも総理大臣に昨年の9月16日に就任してから、何とかこのコロナ対策、1日も早い安心を取り戻したい。そういう思いで全力で取り組んできたんです」

などと取り組みの姿勢を強調した。
蓮舫議員の質問はそれほど失礼だったのかは、実際の映像を見ればわかります。




「総理としての自覚や責任感はあるのか」というのは確かに失礼かもしれません。菅首相も少々キレ気味に反論しています。
ところが、キレ気味なのに、言葉に全然力がなく、滑舌も悪いので、その気持ちが伝わりません。
蓮舫議員の言葉には迫力があるので、結局、蓮舫議員に菅首相が説教されている格好になりました。
しかも「そんな答弁だから、言葉が伝わらないんですよ!」という叱責には、蓮舫議員の“親心”すら感じられます。

政治は権力を巡る戦いなので、どちらが強いかは決定的に重要です。
安倍前首相は国会で「嘘」や「嘘つき」という言葉を言われるたびに猛烈にキレるので、野党議員も「嘘」という言葉を言いにくくなりました(実際は安倍前首相は嘘をつきまくっていたわけです)。
トランプ前大統領は力強さという点では無敵でした。

首相が野党議員から上から目線で説教されていては、首相としての示しがつきません。そのまま政権崩壊につながってもおかしくない事態です。
政権側はなんとしてもこの事実を隠ぺいするか、それがむりなら事実を改変しなければなりません。
そこで、「失礼な蓮舫議員を菅首相が説教した」という“オルタナティブファクト”
がつくられました。
どこまで計算されたものかわかりませんが、テレビのコメンテーターはこぞって蓮舫議員の非礼を非難しました。
ネット上の記事でも、ざっと見ただけでもこれだけ目につきました。

【日本の選択】年長者に向かって罵声を浴びせ続ける蓮舫氏 これが野党の支持率上がらない原因
田村淳、蓮舫氏は「成人式で暴れている人と一緒」と苦言 報道方法に持論も

菅政権はまだこれだけメディアを支配しているのかと思いましたが、それだけではなさそうです。
今回のことは、女性議員が男性首相を説教するという、まさに“女性活躍”を絵に描いた出来事ですが、政権を支持するか否かに関係なく、女性が男性の上に立つのがいやという男が数多くいます。
つまりこれも“ガラスの天井”の一例です。


ともかく、菅首相は蓮舫議員から説教されても、弱々しい反論しかできなかったのが現実です。
官房長官のときは有能でも、首相になると無能レベルに達したのでしょうか。

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