首相官邸ホームページより
東京五輪大会は、開催か中止かを決定する最終局面に入ってきました。
そのためささいな言葉が大きな波紋を呼びます。
高橋洋一内閣官房参与はツイッターで「さざ波」「屁みたいな」と発言したために辞任しました。
高橋氏は五輪開催に反対の声が強いことに危機感を持って、つい強い言葉を使ってしまったのでしょう。
高橋氏の言葉や去就はどうでもいいことですが、IOCのバッハ会長となるとそうはいきません。
バッハ会長は5月22日、「五輪の夢を実現するために誰もがいくらかの犠牲を払わないといけない」と発言し、「なぜ日本人が犠牲を払わないといけないのか」という強い反発を招きました。
「犠牲」発言も問題ですが、私は「五輪の夢」という言葉が引っ掛かりました。IOCの会長ともなれば、五輪の意義を大いに語るのかと思ったら、「五輪の夢」という意味不明の言葉だけです。これで日本国民を納得させるのはむりでしょう。
それよりももっと問題だと思うのは、バッハ会長の4月28日の発言です。
「歴史を通して、日本国民は不屈の精神を示してきました。逆境を乗り越えてきた能力が日本国民にあるからこそ、この難しい状況での五輪は可能になります」
https://www.huffingtonpost.jp/entry/ioc-bach_jp_608b8217e4b0c15313f23aec
この発言は日本人をリスペクトしているようですが、日本人に対して、日本人であることを理由に不利益を押しつけようとしているので、人種・民族差別です。
日本人をリスペクトしているのは、不利益を押しつけるための理由づけです。
菅首相がなにかのことに関して「アメリカ人は陽気で前向きだから、このきびしい状況も乗り越えることができるだろう」と言ったとしたら、アメリカ人を蔑視していると反発を買うでしょう。それと同じです。
ちなみに森喜朗氏が女性蔑視発言で組織委会長を辞任したとき、二階俊博自民党幹事長は「我々は男女平等で、ずっと子どもの頃から一貫して教育を受けてきた。女性だから、男性だからってありません。女性を心から尊敬をしております」と語りました。
女性にもいろいろな人がいて、尊敬できる人ばかりではありません。「女性を心から尊敬をしております」というのは、女性を十把ひとからげにしているので、女性差別です。
そして、IOCの最古参のディック・パウンド委員(79歳)は、週刊文春のインタビューに対して次のように語りました。
――日本の世論調査では今夏の開催に8割が否定的だ。
「昨年3月、延期は一度と日本が述べたのだから、延期の選択肢はテーブル上に存在しない。日本国民の多くが開催に否定的な意見であるのは、残念なこと。ゲームを開催しても追加のリスクはないという科学的な証拠があるのに、なぜ彼らはそれを無視して、科学的なことはどうでもいいと言うのか。『嫌だ』と言っているだけではないのか。開催したらきっと成功を喜ぶことだろう」※ ※ ※――日本の首相が中止を決めた場合はどうするか。「私が知っている限りでは、日本政府は非常に協力的だ。五輪の開催は、日本の当局、日本の公衆衛生当局、そしてオリンピック・ムーブメント(IOCなどの活動)が共有している決定だ。仮に菅首相が『中止』を求めたとしても、それはあくまで個人的な意見に過ぎない。大会は開催される」https://news.yahoo.co.jp/articles/b6da971d6c93f9884a70bcef4929d1fe06955b34?page=2
このパウンド委員は英紙イブニング・スタンダードに対して、「(東京五輪は)予見できないアルマゲドンでもない限り実施できる」とも語っています。
これらIOC側の意見を聞いていると、日本人を見下して、日本人の意志を完全に無視していることがわかります。
菅首相の意志までも無視しています。これは国家主権の無視としか思えません。
国民から反発の声が上がったのは当然です。
ところが、政府関係者や組織委などから反発の声はほとんど上がりません。どうやら日本はIOCに完全に牛耳られているようです。
菅首相は三度目の緊急事態宣言を発出するに当たっての4月23日の記者会見で「東京五輪の開催はIOCが権限を持っています」「IOCは開催することを決定しています」と語りました。
5月10日の参院予算委員会で蓮舫議員から「主催国の内閣総理大臣が延期や中止をいえる権限はないのか」と聞かれると、菅首相は「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じた上で、安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていくのが政府の基本的な考え方だ」と何度も繰り返しました。
首相に権限がないはずがありません。その気になれば、感染対策やテロ対策を理由に入国制限をするなどの方法で簡単に五輪開催をつぶすことができます。
いや、そんなことをしなくても、菅首相が公然と五輪中止をIOCに要求すれば、IOCが開催を強行できるはずがありません。
日本はアメリカの属国だとよく言われますが、“IOCの属国”でもあったようです。
そのことは次の記事からもよくわかります。
東京五輪 大会関係者大幅削減も“五輪貴族”3000人は削れず「必要不可欠な人材」東京五輪・パラリンピック組織委員会は26日、都内で理事会を開催し、残り2カ月を切った大会開幕に向けて、準備状況などを報告した。延期前の18万人から7・8万人まで大幅に削減した来日大会関係者についての内訳を公表。ゲストやスタッフ、国際連盟や放送関係者、プレスの削減には成功したものの、オリンピックファミリー3000人、各国オリンピック委員会(NOC)1万4800人、パラリンピックファミリー2000人、各国パラリンピック委員会(NPC)5900人の人数は延期前の数字が維持されていた。“五輪貴族”とも呼ばれるIOC委員らの数が減らせなかったことについて、武藤事務総長は「もともとこれらの人達は大会運営のために必要不可欠な人材であることがほとんど。現時点では代えることができない」と、説明した。https://news.livedoor.com/article/detail/20261353/
さらに週刊文春は、バッハ会長は天皇に会わせろと要求していたという記事を書いています。
「天皇に会わせろ」バッハよ、何様だ IOC委員は小誌に「菅が中止を求めても開催する」【全文公開】
これに対してIOCはGHQかという声が上がっています。
ということは、バッハ会長はマッカーサーです。
アメリカの属国であるのは、安全保障のためという理由づけができなくもありませんが、“IOCの属国”である理由は説明が困難です。
自民党は“属国慣れ”しているので、“IOCの属国”としてふるまうのに大して抵抗がないようです。
しかし、東京五輪大会を開催すると、IOCは放映権料でもうかるでしょうが、日本は感染が拡大して人命が失われ、自粛生活が長引いて経済的損失が甚大です。
日本は、第二だか第三だかの敗戦にならないようにしなければなりません。