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韓国が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄したことについて、アメリカのポンペオ国務長官は「失望した」と述べ、米国防総省も「懸念と失望」の声明を出しました。
「失望」というのはかなり強い言葉ですから、日本の韓国嫌いの人たちは「韓国はアメリカの怒りを買った」と大喜びでした。
しかし、トランプ大統領は「韓国でなにが起こるか見てみよう」と言っただけでした。文大統領について「ひじょうによい友人だ」とも述べました。

振り返ると、ポンペオ長官がカメラの前で「失望した」と述べたとき、そんなに強い調子ではありませんでした。なにを言ってもトランプ大統領にひっくり返される可能性があるとわかっていたからでしょう。
ポンペオ長官は対北朝鮮強硬派で知られていましたが、今はそれを封印して、トランプ大統領に合わせています。


G7サミットが8月24日からフランスで開かれ、安倍首相はトランプ大統領と会談し、朝鮮半島情勢についても話し合いました。

北朝鮮のミサイルは「違反」? 日米首脳間で見解に相違
 北朝鮮が短距離弾道ミサイルの発射を繰り返していることについて、日米首脳会談の冒頭、安倍首相は「国連安保理決議に明確に違反する」と強調した。これに対し、トランプ米大統領は「首相の心情は理解できる」としつつ、「いい気分ではないが、(米朝の)合意には違反していない。長距離ミサイルの発射や核実験はしていない。ずっと通常型に近く、彼(金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長)だけでなく、多くの人(国)が実験している」と語った。日米首脳間の見解の相違をうかがわせた。(ビアリッツ=渡辺丘)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190826-00000003-asahi-int


NHKニュースによると、このときトランプ大統領は「先週キム委員長からとてもすばらしい手紙をもらったが、その中で彼は『韓国が戦争ゲームしている』と不満を示していた。私も米韓合同軍事演習は不必要だと考えている」と述べました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190825/k10012048141000.html


トランプ大統領の考えは、従来のアメリカの方針とはまったく違っています。トランプ大統領の考え方では、在韓米軍はほとんど不要で、そのうちまったく不要になります。
そして、在日米軍も同じようなものでしょう。

アメリカの基本戦略は、軍事力で世界に君臨するという覇権主義です。
トランプ大統領は、軍事費は増大させていますが、不思議なことに軍事力で世界に君臨するという発想がありません。
軍事に関しては、「伝統的なアメリカ」と「トランプのアメリカ」はまったく別なのです。
日本人はこのことをあまり理解していないようです。
トランプ大統領と金正恩委員長の仲良しぶりも、見て見ないふりをしています。

そのため、日本人はトランプ大統領についていけません。もちろん安倍首相もです。

安倍首相はついていけないだけでなく、振り回されています。
安倍首相は5月6日にトランプ大統領と電話会談したあと、記者団に対して「条件をつけずに金正恩委員長と向き合う」と語り、これまで北朝鮮にはひたすら「制裁と圧力」を強化し、拉致問題の解決を条件にして対話を拒んできた方針から大転換しました。
もちろんトランプ大統領から指示されたからです。トランプ大統領は前から「北朝鮮の非核化の費用は韓国と日本が出す」と言って、アメリカの負担は必要ないと国民に説明してきましたから、「シンゾー、早く金正恩に会って、金を出す段取りをしろ」などと言われたのでしょう。
しかし、方針を変えた安倍首相に対して北朝鮮の報道官は「執拗に平壌の門をたたいているが、ずうずうしい。わが国への敵視政策はなにも変わっていない」と罵倒しました。
それ以降、安倍首相も北朝鮮への対話呼びかけはやめたようです。

しかし、トランプ大統領の態度は一貫していて、北朝鮮に対して友好的です。
かつてはティラーソン国務長官とかマティス国防長官がトランプ大統領を抑えていましたが、今のポンペオ国務長官とかエスパー国防長官はイエスマンであるようです。

米朝の友好が進んで朝鮮半島の緊張が緩和すれば、GSOMIAなど必要ありません。文政権の決定はそれを先取りしていることになります。
文在寅大統領は北朝鮮に対してオリンピック共同開催を提言し、経済協力の先にワンコリアを実現させようと呼びかけていますが、これも「トランプのアメリカ」と連携した動きです。

日本では韓国のGSOMIA破棄によって日米韓の同盟が壊れたなどと言っていますが、日米韓の同盟を壊しているものがあるとすれば、それはトランプ大統領です。

トランプ大統領の政策にはほとんど賛成できませんが、米朝友好を進めることだけはすばらしいものです。朝鮮半島が平和になれば、日本にも大きな利益です。今は北朝鮮のミサイルが脅威だなどと言っていますが、敵対関係にあるから脅威なのであって、友好関係になれば脅威ではありません。

トランプ政権は少なくともあと1年余りは続くので、ここは平和実現の大きなチャンスです。
日本は米朝友好の後押しをするべきです。
韓国と対立している場合ではありません。