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最近、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の子どもがふえていますが、行きすぎた清潔志向がアレルギー発症の原因になることがわかってきました。

アレルギーは、卵や牛乳のたんばく質、花粉など特定の物質(アレルゲン)に体の免疫が過剰に反応する病気です。
ですから、免疫の遺伝子などに異常があるのではないかと考えられましたが、いくら調べてもなかなかわかりませんでした。

初めてアレルギーの発病との関連が確かめられたのは、意外にも皮膚のたんばく質「フィラグリン」をつくる遺伝子の変異だった。アトピー性皮膚炎の患者の2、3割でフィラグリンの遺伝子の異常が見られる。
国立成育医療研究センター研究所の斎藤博久副所長は「発症率は遺伝子が正常な人の3、4倍、ぜんそくの合併も2、3倍になる」という。フィラグリンの遺伝子に変異がない患者でも、フィラグリンをつくる機能が落ちていることがあった。
フィラグリンは皮膚の表面でつくられ、皮膚を守るバリアーとして働いている。さらに、分解されると天然の保湿成分になり、これが皮膚を覆うことで守りを固めている。
皮膚のバリアー機能との関連が疑われるアレルギーは皮膚炎だけではない。
天谷雅行慶応大医学部教授は「英国の乳児でピーナツバターのアレルギーが起きた。調べると、皮膚に塗るベビーオイルにピーナツオイルが含まれていた」という。
(中略)
国内でも、せっけんに含まれていた小麦のたんばく質が元でアレルギーになり、小麦のたんばく質を含む食品を食べてアナフィラキシーショックを起こす事件があった。
新説では、まず、皮膚のバリアー機能の欠陥が先にあって、初めは皮膚からアレルゲンが侵入して免疫を刺激。その後にアレルゲンが鼻に入ると鼻炎や花粉症、のどに入るとぜんそくになるというわけだ。免疫の異常は原因ではなく結果だということになる。
(中略)
バリアーを守るにはどうしたらいいか。天谷さんは「ごしごし体を洗いすぎるのをやめ、首から下はわきの下と股だけせっけんを使えばいい」と勧める。天谷さんの研究では人間の皮膚は軽く水で流すだけで汚れが落ちるようにできているという。
http://sugimoto-clinic.or.jp/健康・医療のヒント/iryounogenjou/allergy_new_theory/

アレルギー発症の予防にもうひとつたいせつなのは、家畜の糞だということもわかってきました。

アメリカにアーミッシュという自給自足の生活をする人々がいますが、アーミッシュにはアレルギーの人がほとんどいないとされます。また、モンゴル人にもアレルギーがほとんどないということです。彼らは幼いころから家畜と触れ合う生活をしています。
「NHK特集」がそのことを取り上げました。

NHK特集
病の起源  第6集 アレルギー ~2億年目の免疫異変~
花粉症・ぜんそくなどのアレルギー。20世紀後半、先進国で激増。花粉症だけで3800万人もの日本人が患う病となった。急増の原因は花粉・ダニの増加、大気汚染と考えられてきたが、意外な原因があることがわかってきた。
南ドイツで、農家と非農家の子供の家のホコリを集め、「エンドトキシン」と呼ばれる細菌成分の量を調べたところ、それが多い農家の子ほど花粉症とぜんそくを発症していなかった。エンドトキシンは乳幼児期に曝露が少ないと、免疫システムが成熟できず、アレルギー体質になる。農家のエンドトキシンの最大の発生源は家畜の糞。糞に触れることのない清潔な社会がアレルギーを生んだとも言える。
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20081123

犬や猫でも同じような効果があるだろうと推測されています。

私は前から、子どものアレルギーに悩む母親には神経質な人が多い気がしていましたが、案外正しかったかもしれません。潔癖症の母親は、子どもの体を洗いすぎたり、部屋を極端に清潔にしたりして、それがアレルギー発症につながっていた可能性があります。

不潔な環境は感染症の原因になるので、子どもを清潔な環境で育てたいというのは当然のことですが、なにごとにも適正水準というものがあります。今はもしかして行きすぎているのかもしれません。


行きすぎた清潔志向は、身体面だけでなく精神面にもマイナスがあります。
つまり愛情行動ができなくなるのです。

たとえば、セックスは互いの体を接触させ、粘膜も接触させます。性器と排泄器はきわめて近い位置にあるか、まったく一致しています。潔癖な人はセックスができないはずです。
実際、セックスによって性病などが移ることがあります。
しかし、人間は愛情を感じると、清潔志向のハードルが下がるというか、不潔の許容力が高まるので、セックスができます。

母親が子どもの世話をするときも、排泄物の始末をしなければなりませんし、子どもが食べ物をこぼしたり物を散らかしたりすることも受け入れなければなりません。
潔癖な人ではできないはずですが、母親になればできるようになるものです。

しかし、世の中全体の清潔志向が強まると、セックスできない人や子どもの世話ができない親がふえる理屈です。
実際、若い人は恋愛やセックスをしなくなり、子どもをつくらない夫婦もふえています。

もちろん若者の恋愛離れや少子化にはさまざまな理由がありますが、過度な清潔志向もその理由のひとつに違いありません。

すでに清潔志向が行きすぎているなら、これからは愛と健康を回復するために、不潔志向というか、不潔許容度を高める方向に行かなければなりません。