昨日、「原発作業員のヒロイックな仕事ぶり」というエントリーで、海外メディアは原発作業員のヒロイックな仕事ぶりを報じたがっているに違いないから、政府や東電はそれに対応することで原発事故の実態を海外に正しく知らせるようにするべきだと書きました。
しかし、政府や東電はきっとそれをしないでしょう。その理由はふたつあると思います。
ひとつは、日本人の基本的な考え方として、ヒーローをつくりたがらないというところがあると思います。たとえばチリの鉱山落盤事故のとき、世界のメディアはやたらヒーロー中心の報道をしましたが、多くの日本人は違和感を覚えたのではないでしょうか。日本人の感覚としては、みんなが団結してがんばったから救出されたのだというふうに考えますし、日本のメディアが報道したとすれば、むしろ目立たない「縁の下の力持ち」に焦点を当てた報道が行われたのではないかと思います。
私は、これはこれで日本人の美質だと思います。
 
もうひとつの理由は、現場の作業員がメディアに直接しゃべるようになると、とくに東電上層部について不都合なことがいっぱい出てくる可能性があることです。
たとえば、福島原発では津波で多くの線量計が失われたために、ひとつの作業班に1個の線量計で作業していたということが報じられました。線量計が足りないなら、すぐにほかの原発から回せばよいことです。もちろんそれは現場にできることではなく、東電本店がするべきことで、上層部の無能ぶりを示しています。もし作業員にインタビューしていたら、そうした不満が噴出するかもしれません。
だから、東電上層部は作業員に語らせることはしないでしょう。
その結果、海外のメディアは不満をつのらせ、海外の人たちは日本の原発事故の実態をよく知らないまま、日本への旅行をとりやめ、日本製品を敬遠することをしばらく続けることになるでしょう。