広島市の松井一実市長の「黒い雨」発言が問題発言として報じられています。私がその中でとりわけおかしいと思うのはこの部分です。
 
「権利要求みたいに『くれ、くれ』じゃなく、『ありがとうございます』という気持ちを忘れないようにしてほしい」
 
この発言のどこがおかしいのか。もしかして、おかしくない、当然の発言だと思う人もいるのではないでしょうか。
そう思う人は、ちょっと考え直したほうがいいかもしれません。
 
「『ありがとうございます』という気持ちを忘れないようにしてほしい」といわれて、「ありがとうございます」という気持ちになるかというと、なるわけがありません。これは「金を出しているんだから感謝しろ」といっているわけで、こういう態度を“恩着せがましい”といいます。
 
松井市長の気持ちを推測するに、もともと被爆者援護の予算をへらしたかったのでしょう。だったら、ことの当否は別にして、恨まれるのを覚悟で予算削減をするのもひとつの手です。しかし、市長は予算削減はしないと決めた。決めた以上は、いさぎよく出さなければいけません。
しかし、市長はそういういさぎよさがなく、気持ちを引きずってしまった。そのためついいやがらせをいってしまったというわけです。
そして、その発言のせいで、せっかく予算を出しているのに感謝されないという結果を招いてしまいました。
 
さて、市長の発言は、感謝のたいせつさを説いていて、道徳的な発言という形になっています。だから、この発言は正しいと考える人がいるかもしれません。
しかし、これは所詮いやがらせの発言なのです。
 
市長の発言は、道徳とはなにかを考え直すよいきっかけを与えてくれています。