私が国際情勢でいちばん気になることといえば、リビア情勢でもなく、パキスタン情勢でもなく、アメリカ人の肥満情勢です。アメリカ人の肥満はもしかして世界を変えるかもしれないと思っています。
 
アメリカを何年振りかに訪れた人が「前よりも肥満の人が多くて驚いた」という感想をいうのを何度か聞いたことがあります。アメリカ人の肥満は目に見えて進行しているようです。最近もこんなニュースがありました。
 
米国人の食事量は減少傾向、回数と摂取カロリーは増加=調査
 [ローリー(米ノースカロライナ州) 29日 ロイター] 米国人は以前と比べて特大サイズの食事を避ける傾向にあるものの、食事回数が増加し、摂取カロリーも増えていることが29日分かった。米ノースカロライナ大学(UNC)が、医学誌「PLoS Medicine」6月号で発表した。
 調査は米国立衛生研究所(NIH)の支援を受けて実施され、2006年までの30年以上にわたり、日々の食習慣を調べた。食事の量や回数、食品のカロリー水準の変化が人のカロリー摂取に与える総合的な影響を調べた最初の取り組みとされている。
 それによると、米国人の成人1日当たりに摂取する食事や間食の回数は、1977年の3.8回から2006年には4.8回に増加。調査対象の上位10%では、食事と間食の回数は5回から7回に増えた。また、食事の量は近年安定しつつあるものの、摂取カロリーは全体で増加しているという。
 米国人が摂取するカロリーは06年までに、1970年代後半と比べて1日当たり570キロカロリー増加。特に砂糖を含むソフトドリンクによるカロリーの摂取量は、60年代と比べて1日当たり220キロカロリー増加した。
 UNCの肥満学際研究センターの博士研究員で、調査に参加したキヤ・ダフィ氏は、調査の初期のころには食事量の多さが摂取カロリーの増加につながっていたと説明。「次第に食事量に対する意識が高まり、減少した」ものの、「過去数十年間は、食事回数の増加が摂取カロリー増につながっているようだ」と述べた。
 ダフィ氏はまた、食べ物が豊富に手に入るようになったことや、通常の食事時間が減少したことが背景にあるとの見方を示し、「人々はもはや一日に3度の食事をちゃんととらなくなった」と述べた。
 米国では成人の3分の2、子どもの3分の1以上が過体重または肥満となっている。
 
アメリカ人の肥満や健康に対する考え方は、日本人のそれとかなり違うようです。たとえば、日本ではファミリーレストランや居酒屋チェーンのほとんどはメニューのカロリー表示を自発的にやっています。しかし、アメリカでは行政当局がいくら指導してもやろうとしないので、とうとう外食チェーンにカロリー表示を義務づける法律が2010年に制定されました。また、日本では「ヘルシー」というのはもちろんいい意味ですが、アメリカでは食品に「ヘルシー」とつけると、おいしくないと思われて、売り上げが下がってしまうそうです。
どうもこのあたりは国民性の問題かもしれません。アメリカ人は健康になる喜びよりも目先の快楽に走ってしまうのでしょう。ビンラディンが殺害されたときも、アメリカ人は熱狂しましたが、日本人にすれば、対テロ戦争の展望もないのに喜んでいられるのが不思議です。
 
アメリカ人がと゜んどん太り続けていくとどうなるのでしょう。無限に太り続けることはできません。太りすぎるとベッドから出られなくなりますが、そこまでいかなくても、労働者としての能力に問題が出てくると思います。つまり太った労働者は機敏な動きができず、持久力もなく、労働の質が低下するはずです。となると、アメリカ経済にもマイナスになってきます。
 
ところで、私はNHK特集だかスペシャルだかで、アメリカ人は住宅を担保に金を借り、消費しまくっているというのを見て、こんなことは長くは続かないだろうと思いましたが、案の定、住宅バブルがはじけ、リーマンショックが起こり、世界経済はたいへんな危機に陥ってしまいました。
アメリカ人の肥満バブルもいつかははじけるに違いありません。
そのときアメリカ人はどう変わるのでしょう。
禁欲的になり、消費を控え、物質的な快楽よりも精神的な喜びを求めるようになるのでしょうか。あるいは、マッカーシー時代のアカ狩りのように、肥満者が徹底的に迫害されるのでしょうか。
アメリカの変化は世界を変えます。そのときを見てみたいと思います。