東京都杉並区で3歳の女の子が死亡した事件がちょっとした話題になっています。容疑者である43歳の女性が声優という職業だったことと、この女性が死亡した女の子の里親だったことが関心を呼んだのでしょう。これまで実の親や義理の親が子どもを虐待死させるという事件はよくありましたが、里親が里子を殺すというのは珍しいことです(今はまだ容疑の段階ですが)
この事件に関連して「試し行動」についての新聞記事がありました。「試し行動」というのは、おそらくまだ知らない人が多いのではないかと思われますが、人間性の根幹にかかわることで、誰もが知っておくべき重要なことです。
 
里親が里子を預かったとき、愛情さえあればうまくいくかというと、そうではありません。里子はたいてい「試し行動」をするからです。
里子は新しい親をすぐには信用しません。果たして信用できるかどうかを試す行動が「試し行動」です。具体的には、親が困るようなことをします。逆らったり、大声を出したり、暴れたり、物を壊したり、やり方はさまざまです。新しい親がそれらを全部許して受け入れると、里子は新しい親を信用し、信頼関係が築かれます。
里子は実の親やその他の人に虐待されていた場合もあって、その場合は「試し行動」もより激しくなります。
 
里親になる人は研修でこのことを必ず教えられます。この知識がないと、里子の「試し行動」に触れたとき、親に対して悪意を持っているのではないか、「悪い子」を里子にしたのではないかと思ってしまいかねません。
 
「試し行動」は里子にだけ見られることかというと、そうではありません。実の親子関係でもあります。
たとえば、このカウンセラーのホームページにも書いてあります。

「子供の試しに応えよう」
 
完璧な親はいませんから、子どもは親の愛を確かめようと「試し行動」をすることがあるわけです。
「よい親」であれば、子どもが親を困らすようなことをしても、許して受け入れますから、すぐに「試し行動」はなくなります。
しかし、「悪い親」であれば、子どもを「悪い子」と見なし、矯正しようとして叱ったり罰したりするので、子どもはさらに「試し行動」をエスカレートさせます。そうして負のスパイラルになって、不幸の坂道を地獄まで転がり落ちていく親子も多いことと思われます。
 
また、「試し行動」は恋愛関係でも見られることがあります。わざと相手を困らせるようなことをして、相手の愛を確かめるのです。これをやったために関係が壊れてしまうことも当然あって、やった本人は後悔しますが、いわば本能レベルの行動なので、やめようとしてもやめられるものではありません。ですから、「試し行動」を受け止める側の態度がたいせつになってきます。
多くの恋愛は、むしろ相互に「試し行動」をし合うようなものかもしれません。
 
「試し行動」を知ると知らないとで人生は大きく変わってきます。



≪追記≫
「試し行動」について専門家が語るインタビューが朝日新聞に載っていたので、紹介しています。

専門家が語る「試し行動」