島田紳助さんと暴力団とのかかわりについての週刊誌報道を見ていると、ぜんぜんおもしろくありません。ネタ自体が小さくてつまらないということもありますが、「暴力団は悪だ」「暴力団とつきあう芸能人も悪だ」という前提で記事を書いているのも一因です。なにごとにつけ「悪」のレッテル張りをした瞬間、思考停止に陥ってしまうからです。
ですから、一度「悪」のレッテルをはがす必要があります。そのための作業をしてみましょう。
 
週刊誌報道によると、事件の発端は、島田紳助さんがテレビ番組で右翼団体をバカにするような発言をしたことです(皇室にかかわる発言もあったようです)。それに対して右翼団体が街宣をしかけてきて、紳助さんは芸能界を引退しなければならないかと思うほど悩み、元ボクシング選手の渡辺二郎さん(現在被告人)に相談したところ、渡辺さんが山口組幹部に話をしてくれて、右翼の街宣はやみました。紳助さんは渡辺さんと山口組幹部に感謝しましたが、その後のつきあいはごく限定されたもののようです。公開されたメールによると、山口組幹部のために劇場のチケットを取ったことと、紳助さんの店にきたとき“接待”したことぐらいです(店にきた客をもてなすことを接待というのはへんです)
 
ここで誰でも疑問に思うのは、テレビ局と吉本はなにをしたのかということでしょう。これについてはなにも書かれていません。おそらくなにもやっていないのでしょう。だから、紳助さんも困って渡辺さんに相談したのです。
テレビ局は、VTR編集で問題発言はカットしなければならないので、明らかにテレビ局にも落ち度があり、責任があります。
また、紳助さんの所属事務所である吉本は、紳助さんが引退したら経済的に損失ですから、なんらかの手を打つべきですし、そもそも所属タレントが苦境に陥っていたらなんとかするのは当然です。
しかし、結果的にはなにもしていないも同然です。
 
一方、山口組幹部は、ただちに右翼の街宣をやめさせました。暴力団と右翼はひとつ穴のムジナみたいなものなので、やめさせるのはそんなにたいへんなことではなかったかもしれません。しかし、偉いのはそのあとです。山口組幹部は代償や返礼をなにも要求していないようなのです。だから、紳助さんも感謝したわけです。
恩を売っておいて、だんだんと取り込んでいくというのも暴力団の手法としてありそうですが、事件があったのは十数年前のことです。その後、チケットの手配ぐらいしか要求していません(これは現時点の報道で、これからなにか出てくるかもしれませんが)
ですから、山口組幹部は紳助さんを無償で助けたということです。これは明らかに美談です。
テレビ局や吉本はするべきことをせず、紳助さんが苦境に陥っても見て見ぬふり。一方、暴力団は無償で紳助さんを助けた。
これが現実の姿です。
 
ですから、週刊誌はテレビ局と吉本を「悪」として批判し、対照的に暴力団を称賛する記事を書くべきです。自分の落ち度を棚に上げて知らんふりをするテレビ局、所属タレントを見捨てる吉本、いくらでも批判できます。暴力団批判や紳助さん批判の記事より、絶対こちらのほうがおもしろい記事になります。
 
もちろん、現実にそんな記事は書かれません。週刊誌は同業者のテレビ局や芸能界で大きな勢力になる吉本を批判するわけにいかないからです。
このように考えれば、「悪」のレッテル張りがいかに恣意的なものかわかるでしょう。