アメリカには賞金稼ぎという職業があります。賞金のかかった指名手配犯を探し出し、捕まえて賞金を稼ぐという職業です。ライセンスが必要ですが、逮捕権があり、犯人が抵抗すれば殺してもかまいません。
日本人で、アメリカへ渡って賞金稼ぎをしている人がいて、私はその人から話を聞いたことがあります。
賞金稼ぎといっても、そんなにもうかるものではないようです。逮捕すればその経費は請求できますが、逮捕できなければ一銭にもなりません。賞金の高い犯人は、賞金稼ぎ同士の競争になり、先を越されるとやはり一銭にもなりません。また、逮捕の瞬間は、犯人が銃を持って抵抗する可能性もあって、まさに命がけです。
なぜそんな危険な仕事をしているのかと思いますが、いろいろ話を聞いていると、その人は19歳ごろ、友だちが暴力団にひどい目にあわされたというので、1人で暴力団事務所に殴り込んだことがあったそうです。また、子どものころ母親が自殺し、その死体の第一発見者になったそうです。
どうやら命に対する感覚が普通の人と違うのです。いわゆる「命知らず」というやつです。
この人は高校中退ですが、六本木で外国人とつきあううちに英語を覚え、アメリカに渡りました。正義感が強い人なので、裏社会に行くことはありませんでしたが、もし裏社会に行っていたら、暴力団の幹部にもなっていたでしょう。
 
一昨日の「暴力団と裏社会」というエントリーで「胆力」という妙な言葉を使ってしまいました。
 
「胆力」という言葉には、武術や禅などのイメージがありますので、ここでは「命知らず」という言葉に言い換えて、もう少し具体的に表現してみようということで、今日のエントリーを書いています。
 
 
俳優の宇梶剛士さんは、高校野球部のときはプロを目指すほどの野球少年でしたが、暴力事件を起こしたことでプロ野球への夢が断たれ、自暴自棄となり、喧嘩に明け暮れる日々を送りました。1人で100人以上を相手に喧嘩したこともあったそうです。
母親との関係にも問題があったと宇梶さんは語っています。ただ、宇梶さんが子どものころ母親とよく映画を見に行って、それはよい思い出だったそうです。
宇梶さんは暴走族のトップにまでなりましたが、俳優を志して裏社会には行きませんでした。もし裏社会に行っていたら、やはり暴力団の幹部にはなっていたでしょう。
 
家族関係の問題やさまざまな人生体験から、人は「命知らず」になってしまいます。「命知らず」は人と物理的、肉体的な戦いをするとき圧倒的に有利なので、裏社会では上層に行きます。暴力団は主にこうした人によって構成されています。
 
暴力団員は決して特殊な人間ではありません。ちゃんと理由があってそうなったのです。
そうしたことを踏まえた暴力団対策が必要ですが、今の暴力団対策はハエ叩きでハエを叩いているようなレベルです。