私が中学生のころ、一歳年上の兄の友人であるN君がよく家に遊びにきました。それも、そのきかたが半端ではありません。週に何日もきて、しばしばご飯も食べていきます。休日などは一日わが家に入り浸っています。私の両親は子どもの友だちがくるのを歓迎するほうでしたから、N君もきやすかったのでしょう。
N君の両親も「息子がご迷惑をおかけしています」ということであいさつにこられましたし、うちの両親と多少の交流がありました。N君の両親は2人とも高校教師です。お母さんはかなりきつい性格で、いつも1人っ子のN君に口うるさく指図したり叱ったりしています。お父さんは物静かな人で、N君には冷淡です。お父さんはある古典芸能の研究家で、著書も何冊かあり、亡くなったときは全国紙に訃報が載りました。
N君は家にいるのがいやで、うちにきていたのでしょう。うちの両親を親代わりに思っていた面もあったようです。N君のお父さんは「母親があまりにも口うるさくて」と、そのへんの事情は感じていたようです。
 
N君は高校に入ってからはほとんど遊びにこなくなりました。そして、あまり学校に行かず、しばしば家出しているという話を聞きました。
さらに何年かすると、まったく家に帰らなくなって、大阪でチンピラみたいになっているという話を聞きました(N君の家も私の家も京都です)
 
その後のことはわかりませんが、家に居場所のなかった人間は社会にもまともな居場所がなく(高校も中退だったかもしれません)、裏社会に落ちていったということのようです。
家出同然なので、たとえばアパートを借りるときの保証人にも不自由するはずですが、裏社会にはそれなりに助けてくれる人もいるのでしょう。
しかし、N君がヤクザになったということはないはずです。N君は色白で、しばしば女の子に間違えられるような子だったからです。
 
N君の家庭は、当然経済的に豊かで、両親とも知的で教育熱心で、外から見ると恵まれた家庭でしょう。しかし、そういう家庭からも裏社会に落ちていく人間がいます。
崩壊家庭の子どもも、社会でまともに生きていくのは困難で、多くは裏社会に落ちていきます。
一見まともな家庭でも、子どもを見捨てる親もいます。
 
こうして裏社会が生まれ、犯罪者や暴力団が生まれます。
こうしたメカニズムがわかれば、今の犯罪対策や暴力団対策が根本的に間違っていることもわかります。原因をそのままにして結果だけなくそうとするようなものだからです。