人事院は9月に公務員給与0.23%の引き下げを勧告しましたが、野田政権はそれを無視し、7.8%下げる特例法案の成立を目指すことにしたそうです。これに対して人事院は「勧告無視は憲法違反」と主張しています。
 
公務員の給料はどう考えても高すぎます。なぜそんなことになっているかというと、人事院が公務員の給料を決めているからです。要するに公務員が公務員の給料を決めているわけで、こういうのを「お手盛り」と言います。
 
人事院は裁判所や会計検査院に準じる独立性を持っています。2009年、麻生内閣時代、当時の谷公士人事院総裁は公務員制度改革に反対して国家公務員制度改革推進本部の会合への出席を拒否、自民党の菅義偉選対副委員長が谷総裁に辞任を求めましたが、それも拒否して、そのまま通ってしまいました。
 
日本では戦後、公務員のストライキが禁止され、その代わりに独立性を持った人事院が公務員の給料を決めるということになったわけです。
それまで公務員の給料は民間よりもかなり安いものでしたが、人事院は民間並みを目指して段階的に公務員の給料を引き上げてきて、今では民間よりむしろ高いものになっています。地方公務員は国家公務員よりもさらに高給です。
もっとも、公務員の給料は民間よりも高くないと主張する人もいますが、その根拠となるデータは人事院や厚生労働省のものです。
 
それにしても、人事院はどういう基準で給料の水準を決めているのでしょうか。たとえば、最近も公務員宿舎が問題になっていますが、今は民間もほとんど社宅をなくしています。公務員宿舎が安い分も算入しないといけませんが、たぶんそういうことはやっていないはずです。
そもそも、公務員の給料を民間並みにするということが間違っています。公務員は身分が安定しているのですから、不安定な民間よりも安いのが当然です。
 
金融や投資の世界ではハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンというのが常識です。株式と債券を比べると、一般的に株式のほうがリターンが高いのですが、これは株式のほうが債券より価格の変動幅が大きい、つまりリスクが高いからです。
人間は不安定よりも安定を好みます。ですから、リスクの低いことはひとつの価値なのです。
シャープレシオという数字があります。たとえば、ふたつの投資信託があって、リターンはどちらも同じだったとします。しかし、一方がリスクの高い株式などに投資していた場合、シャープレシオは低くなります。ですから、シャープレシオを見ると、ローリスク・ローリターンの(普通の)投資信託とハイリスク・ローリターンの(だめな)投資信託が区別できるわけです。
 
もし公務員と民間の給料が同じだったら、公務員はローリスク・ハイリターン、民間はハイリスク・ハイリターンですから、公務員のシャープレシオは優秀な投資信託と同じに高くなります。
いや、こういうところにシャープレシオを当てはめるのは厳密には間違っているかもしれませんが、考え方としてはあってもいいでしょう。民間の給料の変動率、クビの可能性などから民間のリスクを計算できるはずです。そうすれば公務員の給料は民間よりもどれだけ安くするべきかということも明らかになります。
 
戦前と戦後しばらくの時期、「公務員は安定しているから給料が安い」というのが日本の常識でした。しかし、人事院勧告が始まるとともにこの常識が捨てられてしまったのです。
その当時は金融工学も未発達で、シャープレシオなんていう概念もなかったでしょう。そのため「公務員は安定しているから給料が安い」ということの根拠を誰も示すことができず、人事院に押し切られてしまったのだと思います。
公務員はスト権を返上したどさくさまぎれに、公務員の安定と民間並みの給料の両方を手に入れたわけです。
 
しかし、今では身分の安定した公務員が不安定な民間と同じ給料を取ることが不当であることは誰の目にも明らかでしょう。
「公務員は安定しているから給料が安い」という日本の常識を復活させないといけません。