シリーズ「横やり人生相談」です。今回は、母親の浮気を知ってしまった女子高生の悩みですが、これは家族関係の悩みでもあります。家族関係の悩みは、いつもながら把握しにくいものです。
 
「母の浮気を知ってしまいました」相談者 高校3年生女子
   高校3年生の女子です。中学生の頃から悩んでいることがあります。母親の浮気です。

 私の家は真面目な父、弟、私、そしてパートの母の4人家族です。母は以前から年齢よりも若い服や靴を好み、美容などにも関心を持っていました。私も抵抗はなく、むしろ良いことではないかと思っていました。

 しかし、数年前に、絶対に父ではない男の人との、明らかに浮気とわかるような親密なメールを見てしまいました。とてもショックで裏切られたような気持ちでしたが、誰にも言えず、ずっと黙っていました。つい最近再び、しかも嫌悪を抱くほどもっとエスカレートしたメールを見ました。それから、私は母が信じられなくなりました。

 受験を控え、ちょっとしたことで母と口げんかをしても、「お母さん、浮気してるでしょ。私、知ってるんだからね」と、言い返しそうになります。多分、母は気付かれていないと思っているのでしょう。父と弟も知りません。

 浮気は良くないと思うので、母には男の人と別れて欲しいです。もし私が口にしたら家族は壊れてしまいます。それは嫌ですが、今後、悶々(もんもん)と「母の浮気」という暗い事実を抱えて生きていく自信もなく、いつかは爆発してしまいそうです。私は、寛容さが足りない駄目な子供なのでしょうか。どうすればいいのか教えてください。(朝日新聞「悩みのるつぼ」20111029日)
 
この相談の回答者は評論家の岡田斗司夫さんです。
岡田さんはいきなり「「まず、母の携帯電話をどこかに隠しましょう」と言います。さらに、
『他の悪い癖との比較で考えましょう。もし父がパチンコ浸りで借金まみれになったら? 「父が悪いんじゃない。パチンコが悪い」と考えますよね。もし父が酒浸りだったら? 「お酒が憎い」ですよね。父や母を憎んでもしかたない。彼らは「弱い」だけであり、誘惑する「手段」こそ、あなたの「敵」です。
 悪いのは、母に安易に浮気させ、それを3年間もこっそり続けさせた携帯電話です』
 
つまり悪いのは母の携帯電話だから、「母の携帯をへし折って、3年間の悩みを終わらせてください」というのが結論です。
 
文筆業者というのは、わかりやすく、インパクトのあることを書かないといけないので、「今回は携帯電話を悪者にして一丁書いてやろう」ということだったのでしょうか。あまり追及しないことにしますが、この回答に納得のいく人はまずいないでしょう。
ということで、私なりの回答を書いてみます。
 
 
母が浮気をしていた。それのなにが問題かといえば、まず第一に、父への裏切りであることです。ですから、この女子高生の娘としての普通の反応は、このことがわかればお父さんはどう思うだろう、あるいは母を信じているお父さんがかわいそうだ、といったことになるはずです。
ところが、この女子高生は父親のことをほとんど考えていません。「父と弟も知りません」と書いているだけです。また、父親はどういう人間かということについても、「真面目な父」という表現があるだけです。父と母の関係も書いてありませんし、女子高生と父親の関係も書いてありません。
ということは、この女子高生はなにを悩んでいるのでしょう。
それは母親との関係ではないかと思われます。
 
「もし私が口にしたら家族は壊れてしまいます」と書いています。だったら口にしなければいいのです。しかし、「いつかは爆発してしまいそうです」というのです。どういうことでしょうか。
それを読み解くヒントは、「受験を控え、ちょっとしたことで母と口げんかをしても」と書いてあることです。どうやらちょっとしたことでしょっちゅう口げんかしているようです。「もっとエスカレートしたメールを見ました。それから、私は母が信じられなくなりました」と書いてありますが、おそらくメールを見る前から母を信じていなかったのではないでしょうか。
ですから、母への怒りや憎しみが高まると、家族を壊す「浮気暴露」という最終兵器のスイッチを押したくなるのです。そして、実際に押してしまうのではないかと恐れているのです。これが女子高生の悩みの正体です。
 
もしこれが普通の家庭なら、この女子高生は、浮気が父親に発覚するといけないので、その前に浮気をやめさせようと母親を説得するでしょう。あるいは、自分さえ黙っていればいいのだと思い、なにもしないかもしれません。いずれにせよ家庭を守ろうとします。
しかし、この家庭は普通の家庭ではないので、女子高生は最終兵器のスイッチを押したくてたまらないというわけです。
 
私がこの女子高生にアドバイスするとしたら、こんなことになるでしょう。
あなたは「寛容さが足りない駄目な子供」ではありません。問題は母親とうまくいっていないことにあるのです。母親との関係を改善できれば、それがベストですが、子どもからそれをすることは通常は不可能です。ですから、早く家を出て自立することを考えなさい。母の浮気は放っておきなさい。それは母と父の問題ですから。
 
もっとも、もうひとつのアドバイスもあるかもしれません。
それは、最終兵器のスイッチを押して、母の浮気を父にバラしてしまいなさい、というものです。それによって母と父の関係が変わり、家族が再生して、万事うまくいくという可能性があります(それが女子高生の無意識の願望でしょう)。
もっとも、あまりにもリスキーですから、とてもお勧めはできませんが。