今日いちばん驚いたのが、巨人の球団代表兼ゼネラルマネージャーの清武英利氏がナベツネこと渡辺恒雄氏を告発する会見を行ったというニュースです。この出来事は、巨人という球団の内紛といってしまえばそれまでですが、渡辺恒雄氏は読売新聞グループ本社会長で絶対的権力者ですから、たとえば北朝鮮で金正日を政権幹部が公然と批判したも同然です。ですから、ただちに粛清されても不思議ではありません。
清武氏がそういう力関係の中で告発に踏み切ったのは、どういうことでしょうか。
 
私が最初に思ったのは、希望的観測も含めて、渡辺恒雄氏の独裁体制が崩壊しつつあるのかということでした。渡辺氏は85歳の高齢です。さすがに読売本社内部で反渡辺の機運が高まっていて、それと連動している可能性があると思いました。
もうひとつの可能性として、渡辺氏に健康不安があって、そのことを知った上での告発かもしれないと思いました。
いずれにしても、清武氏は渡辺氏にさからっても勝てる可能性を見ているのではないかというのが、私が最初に思ったことです。
 
次に、清武氏は勘違いしているのかもしれないと思いました。
私は昔はけっこうプロ野球ファンでしたが、最近はあまり興味がなくなり、清武氏がどういう人物かまったく知りません。しかし、ある野球評論家が「球団代表があんなに目立ってはいかん」と批判しているのを聞いたことがあります。
清武氏はみずから中心になってプロ野球に育成枠というのを導入したそうで、巨人の育成枠から何人もの選手が育ったことで清武氏もマスコミに出る機会がふえました。今調べると、著書も2冊ありますし、テレビ東京の「ルビコンの決断」という経済ドキュメンタリードラマでも清武氏の活躍が取り上げられました(名高達男が清武役)
こうしたことから清武氏は、自己イメージがふくれ上がって、自分は渡辺氏にも対抗できるほどの人物であると勘違いしてしまったのかもしれません。
そうであれば、この出来事は清武氏が追放されて終わりということになってしまいます。
 
今は事情がよくわかりませんし、清武氏がどういう人間であるかも少なくとも私にはわかりません。
しかし、もし清武氏か渡辺氏かどちらの味方をするかをどうしても決めなければならないとしたら、私は迷わず清武氏の味方をします。
理由は簡単です。渡辺氏が権力者だからです。「弱きを助け、強きをくじく」というのが正しい倫理学の基本原則です。
 
渡辺氏が読売グループに絶対的権力者として君臨しているのは困ったことです。権力の集中化や絶対化はよくありません。
渡辺氏は政治にも深くかかわっています。鳩山政権や菅政権は読売新聞の論調が違っていたらもっと長持ちしたでしょう。渡辺氏は野田政権は支持しているようですが、個人の恣意がマスメディアを通じて政治を動かしているのはもちろんよいことではありません。
 
渡辺氏のこうしたあり方を同業者は批判しにくいものです。たとえば朝日新聞が渡辺氏批判をしたら、商売敵だから批判するのだろうと思われてしまいます。
ですから、ここはネットの出番ということになりますが、日ごろ「マスゴミ」だのなんだのとマスコミを批判している人たちも、渡辺氏にはそれほど批判的ではないようです。「弱きを助け、強きをくじく」ではなく、権力に弱い人が多いのでしょうか。
 
渡辺氏もさすがに高齢ですから、権力の座からすべり落ちる日も近いでしょうが、その日がきてから批判してもあまり意味がないと思います。