昔、「噂の真相」という雑誌を愛読していました。「噂の真相」のなにがよかったかというと、たとえば検察の内情も書いていたからです。今も昔も、大手メディアは検察内部のことをいっさい書きません。フロッピーディスク改ざん事件は報じられましたが、そのあとは誰に報告したとか、認識があったとか、そんな細かいことばかりで、検察がどういう組織なのかさっぱりわかりません。
 
「噂の真相」がなくなってからは、「選択」を購読しています。これは検察を含む官僚組織についても報道する珍しい雑誌です。
大手メディアだけ見ていると、官僚組織の動きがブラックボックスになっていて、全体のつながりがわかりません。
たとえば最近、警察はピストバイクを取り締まったり、自転車の歩道走行を車道走行に変えさせようとしたりしています。しかし、道路事情は千差万別なのですから、車道か歩道かは個々に判断するしかなく、現在のやり方が適正なものになっているはずです。むりに変えようとするのはへんです。これはたぶん、警察庁の偉い人が「これからは自転車を取り締まれ」と号令をかけたからに違いありません。そのへんを報道してくれるとこちらも事情がわかってすっきりするのですが。
また、皇室では雅子さまがほとんど公務に出られない状態が続いています。これは皇室内の人間関係や学校のことだけでなく、宮内庁にも問題があるに違いないのですが、それについてはいっさい報道がないので、結局なにもわからないことになってしまっています。
 
 
「選択」には「罪深きはこの官僚」という連載があり、12月号には「TPP論議混乱の火付け役」として宗像直子通産省通商機構部長のことが取り上げられています。
TPP交渉参加表明において、野田首相の言ったこととアメリカ側の発表が異なっているとしてちょっとしたトラブルがありましたが、それは宗像部長に原因があるのだと書かれています。その部分を抜粋します。
 
 しかも宗像は、首相会見を受けた政府方針の修正を反映させた改訂版を作成するという当たり前の作業さえ怠った。間の悪いことに、その結果、枝野経産大臣のファイルに収められた方針変更前の文書(発言要旨)が、現地で密着取材をしていたテレビの報道カメラにたまたま映り込んでしまった。当然、“宗像文書”が枝野大臣を介して米国に伝わり、日本の見解として米側のHPにも公表されたと誰の目にも見える。自民党議員から国会でこの不手際に対する追及を受けるなど、TPP慎重派に恰好の追及材料を与えることになった。
 
 さらに十一月十七、十八日の両日、慎重派国会議員による勉強会では複数の文書を作成した」と弁解した宗像だが、他の文書を提出できず、一種類の文書しか用意していなかったことが判明するという「おまけ」までついた。
 
こう書かれると、あの日米間のトラブルのことがよくわかります。大手メディアは官僚のことを書かないので、それだけ見ているとなにがなんだかわかりません。
この問題についての詳しいサイトはこちら。
 
 
「選択」12月号には、一川保夫防衛相がブータン国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会を欠席して別のパーティに出ていた問題についても、おもしろいことが書かれています。
 
実は政府・民主党はしっかりと自民党の麻生政権時代の宮中行事への閣僚の出席率を調べていたのだ。それによると、閣僚の半分程度しか出席していなかったことが判明。(中略)下手に追及の手を強めれば、「返り血」を浴びることになりかねなかったのだ。
 
そのため自民党はこの問題について矛を収めたのだということです。
考えてみれば、晩餐会というのは形式的な行事で、末席の人間がいなかったからといって、たいしたことではありません。このことで大騒ぎしていた人たちのセンスに問題がありそうです(一川防衛相がほかのパーティに出ている映像があったので追及しやすかったわけですが)
そもそもブータン国王夫妻の歓迎晩餐会を、政敵を攻撃する材料に使ったこと自体が非礼なことです。