日本の教育の迷走ぶりはひどいものです。今は「ゆとり教育」から転換して、「学力重視教育」になっていますが、一般社会がそれほど学力を求めているとは思えません。学力が重要視されるのは学校の中だけです。一般社会は「やる気」や「創造性」を求めているのではないでしょうか。
「やる気」をはかるひとつのバロメーターに、海外へ留学する学生の数があるのではないかと思いますが、これは最近へる一方です。昨日の朝日新聞にも記事が出ていたので、貼り付けておきます。
 
海外留学生の数がへる理由はいろいろあるでしょうが、日本人全体が自信を失っているということが大きいのではないかと思います。
かつての日本人は経済力を誇り、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言っていた時代がありましたが、バブル後の長い経済停滞の中で、その誇りは失われました。そのため日本人はなにか誇りのタネを見つけようと必死です。
たとえば東京スカイツリー、はやぶさ、スーパーコンピュータ、なでしこジャパンが異様なほどにもてはやされるのも、そういう心理からでしょう。イチロー、本田、長友、香川などの活躍が注目されるのも同じでしょう。
マンガ、アニメなどを“クール・ジャパン”として世界に誇ろうという動きも同類だと思いますが、マンガ、アニメ自体が多様な表現媒体の中の一部にすぎないので、そんなにたいして誇れるものではありません。
 
2006年の教育基本法改正で「教育の目標」として「我が国と郷土を愛する」という文言がつけ加えられ、おおっぴらに「愛国教育」が行われるようになったのも同じ流れでしょう。
つまり日本に誇るべきものがあまりなく、このままでは愛国心がなくなってしまうのではないかという危機感が愛国教育を行わせるわけです。
もっとも、愛国教育といっても、なにか内実のあることができるわけではありません。そこで、もっぱら国旗国歌の崇拝(の強制)ということが行われるわけですが、所詮はむなしい行為で、すればするほど日本には誇るべきものがないという思いを強めてしまいます。
つまり、日本人の海外留学生の数がへってきたのは、愛国教育もひとつの原因になっていると思われるのです。
 
日本の若者に国際性を身につけさせようとすれば、愛国教育の逆をやらなければなりません。つまり、人格と国を切り離すのです。そうすれば、いくら日本に誇るものがなくても自分は関係ないわけで、自分自身に誇るものがあればいいということになります。
バブルのころ、OLは海外旅行ばかり行くといって揶揄されていましたが、概して女性のほうが海外旅行に積極的です。海外留学についてもそうでしょう。女性は国家意識が希薄な分、海外でものびのびとできるのです。
 
「日本人の誇り」を植え付けることで海外で活躍できる人間をつくろうという路線もありそうですが、かりに「日本人の誇り」を持った日本人をつくることができても、そういう日本人はいやみな存在なので、歓迎されません(もちろん「アメリカ人の誇り」を持ったアメリカ人、「中国人の誇り」を持った中国人も同じです)。これは植民地主義時代の発想でしょう。
 
国際化の時代、日本は愛国教育から国際教育に転換しないといけません。
 
 
内向き日本、海外留学尻込み 04→08年、2割減
 海外留学する日本人学生が減っている。不況や就職難などが相まって「内向き」志向が進んでいる。一方、海外展開に軸足を移す国内企業は、海外で通用する人材を求める姿勢を強めている。国や自治体などは、新たな対策に乗り出した。
■企業は世界採用を強化
 ピーク時の45%。かつて世界一だった米国への日本人留学生数は激減した。
 米国際教育研究所によると、2010年度の日本人留学生は2万1290人で前年度より3552人(14%)の減。最多の1997年度より約2万6千人も少ない。最も多かった中国の14%しかなく、国別順位では、サウジアラビアにも抜かれて7位に転落した。
 トップレベルの大学の例をみても、減少傾向は顕著だ。ベネッセコーポレーションの調査によると、米ハーバード大に入学した日本人学生は、10年度は100人で、00年度より58人(37%)減った。同じ期間に、中国、インド、シンガポールは倍増している。同じ先進国でも、ドイツは7割近く増えている。
 減少傾向は米国に限らない。文部科学省の直近の調べでは、米国も含む海外大学への日本人留学生数は6万6833人(08年)。ピークだった04年より2割減った。
 昨今の円高で回復の兆しもある。留学支援会社の留学ジャーナル(東京)が昨年、全国で相談を受けた大学生は前年より14%増えた。「厳しい就職事情の中、企業へのアピール材料として留学を目指す学生が増えた」と担当者。だが、その多くは1カ月程度の短期留学だという。
 若者にとって、海外へのハードルは何か。産業能率大が10年に全国の新入社員400人に尋ねたところ、「海外勤務を希望しない」が49%。01年より20ポイントも増えた。理由は、リスクが高い(56%)、能力に自信がない(55%)など。「海外勤務に積極的になる」と思う対策を尋ねると、語学研修(58%)が最多で、言葉の壁にぶつかっている様子がうかがえる。
 民間シンクタンク・大和総研の原田泰顧問はこう指摘する。「今の生活水準に満足し、国内で働ける技量さえ身につければいいという考えが広まっている。しかし、企業側は、人口減少で市場が縮む日本から海外へ軸足を移している」
 パナソニックは今春、グループ全体の新規採用1450人のうち8割近くを海外の現地採用とする。「海外展開をさらに進めるという方針に沿う形」と広報担当者は話す。ローソンは日本で学んだ外国人留学生の採用を08年から始め、全体の2~3割を占める。「社員の多様化が狙い。海外出店でも役立つ」という。
■国、奨学金で後押し
 こうした中、国や自治体は、海外留学の後押しに力を入れようとしている。
 文科省は新年度予算案で、海外留学する大学生に支給する奨学金の総額を今年度の1.6倍となる約31億円に増やし、対象人数も1.2倍にした。外国語による会話や論文作成の力をつける大学教育の充実などのため、新たに50億円の予算も盛り込んだ。
 高校のうちから海外に目を向けさせる施策も目立つ。高校生300人の留学経費を支援するため、約1億2千万円を計上。対象人数を今年度の6倍に増やした。同省によると、3カ月以上の海外留学をする高校生は、04年度の約4400人から08年度は約3200人に減っている。
 東京都教育委員会も都立高校の生徒150人を留学させるため、新年度予算案に約1億9千万円を計上した。経費の一部を公費で負担する計画だ。20年までに延べ3千人の留学を目指している。
 京都府教委も新年度、府立高校生が1カ月ほど留学する経費の一部を補助する制度を始める方針だ。担当者は「就職活動に追われて留学に目が向かない大学生が多いと聞く。高校で動機付けをする経験が必要だ」と話している。(岡雄一郎)
「朝日新聞デジタル」20121290300