シリーズ「横やり人生相談」です。人が不幸になる原因のひとつに、正しい自己認識が持てないということがあります。そんなことのために不幸な一生を送るのは実にバカバカしいことですが、人はなかなか自己認識を改めることができません。
今回の人生相談は、正しい自己認識を持っていないということがよくわかる相談なので取り上げました。
 
「40代女性 一人暮らし苦痛」201222  読売新聞)
40代後半の女性。一人暮らしをしています。最近、何のために生きているのかわからなくなってきました。
  2年前に離婚し、息子2人は独立しています。両親も亡くなっており、きょうだいもいません。働いているので生活には困りませんし、何事も一人で決めて一人でする自由も感じています。でも、息子や友人と会うのは1~2か月に1度で、人と全くしゃべらない日もあります。スーパーなどで楽しく買い物をしている家族連れを見かけると落ち込み、涙してしまいます。
  私はお人よしの世話好きで、人に何かをすることで喜びを感じる性格でした。夫や息子、両親のために一生懸命に生きてきたので、一人で生活することに戸惑っているのです。
  東日本大震災の被災者に比べればぜいたくな悩みですが、どうすれば一人でも楽しく生きていけるでしょうか。(奈良・U子)
 
 
この人生相談の回答者は評論家の樋口恵子さんです。
樋口さんは、他人のために働くことが好きという性格を生かしてボランティア活動や趣味の活動をすれば成果が得られますと回答し、さらに、まだ若いのだから中年婚活をしてみてはとアドバイスします。
この相談者の性格が本人の言っている通り「お人よしの世話好きで、人に何かをすることで喜びを感じる性格」であれば、樋口さんの回答でいいのですが、果たして相談者はそういう性格なのでしょうか。
私は相談者の性格は本人が言っているのとは違うのではないかと思いました(もちろん限られた文面から推測するだけなので、その推測が正しいとは断言できませんが)。
 
まず、相談者は離婚しています。離婚の原因は書いてありませんが、相談者にもなにか問題がある可能性はあります。
2人の息子さんがどれくらい離れたところにいるのかわかりませんが、年齢からして結婚から子育てという時期を迎えつつあるわけで、母親なら頼りにされていいはずです。母親がそんなに寂しい思いをするというのも不思議です。
「息子や友人と会うのは1~2か月に1度」と書いているので、身近に友人もいないようです。
働いているのに、職場の人間関係のことがまったく書かれていないのも不思議です。
 
相談者は自分のことを「私はお人よしの世話好きで、人に何かをすることで喜びを感じる性格でした。夫や息子、両親のために一生懸命に生きてきた」と書いています。もしそうなら離婚もないし、息子たちは母親を寂しがらせないように気をつかってくれるでしょうし、周りに友人がいっぱいいるはずです。
ですから私は、相談者の「お人よしの世話好きで、人に何かをすることで喜びを感じる性格」という自己認識は違うのではないかと思ったのです。
実際のところは、「おせっかいで、人がいやがっていても無視して、つねに自分勝手にふるまう性格」なのではないでしょうか。そのために夫や息子や周りの人は辟易して逃げていったと考えれば、つじつまが合います。
とくに気になるのが、「夫や息子、両親のために一生懸命に生きてきた」という表現です。普通は「両親は自分のために一生懸命いろんなことをしてくれたのに、自分は両親になにもしてあげられなかった」という表現になるものです。この人は、自分が人からされたことの認識はなくて、自分が人にしてあげていることの認識だけはあるようです。
もしそういう性格なら、ボランティア活動や趣味の活動をしても友だちはできないでしょう。自分の性格を直すのが先決です。
 
ただ、この相談者の場合、性格を直すのは比較的容易かもしれません。というのは、この相談者は人を非難していないからです。
 
普通、自分勝手な人というのは周りの人を非難するものです。
夫に一生懸命尽くしたのに、夫に裏切られたとか、息子に一生懸命尽くしたのに、息子は恩知らずだとか、周りの人は私がお人よしなのにつけ込んで、私を利用しようとする人ばかりだとか。
たとえば夫の悪いところをいくつも並べられると、それを聞く人は、ほんとに夫が悪い人で、相談者はよい人のように思ってしまいかねません。世の中はこうした自分勝手な人がほとんどなので、誰がよい人間で誰が悪い人間なのか、まったくわけがわからない状態になっています。
 
この相談者は自分のことを「よい人間」だと思っています。そのために自分の性格を直そうという発想が出てきません。
「よい人間」「悪い人間」ということを頭から追い出して、なぜ自分は不幸なのかと考えれば、その原因がわかり、対策もわかるはずです。
 
道徳が人を不幸にしているひとつの例です。