科学的研究についての小さな囲み記事ですが、内容はあなどれません。科学の威力がいかんなく発揮された研究です。
とはいえ、この研究結果の価値を正しく受け止める人がどれだけいるでしょうか。とりあえず記事を張っておきます。
 
 
「勝ち組」はジコチュー? 米研究者ら実験で確認(朝日新聞デジタル20122281142分)
 お金持ちで高学歴、社会的地位も高い「勝ち組」ほど、ルールを守らず反倫理的な振る舞いをする――。米国とカナダの研究チームが、延べ約1千人を対象にした7種類の実験と調査から、こう結論づけた。28日の米科学アカデミー紀要に発表する。
 実験は心理学などの専門家らが行った。まず「ゲーム」と偽って、サイコロの目に応じて賞金を出す心理学的な実験をした。この結果、社会的な階層が高い人ほど、自分に有利になるよう実際より高い点数を申告する割合が多かった。
 ほかに、企業の採用面接官の役割を演じてもらう実験で、企業側に不利な条件を隠し通せる人の割合も、社会的階層が高い人ほど統計的に有意に多かった。別の実験では、休憩時に「子供用に用意された」キャンディーをたくさんポケットに入れる人の割合も同じ結果が出た。
 
 
上は朝日新聞デジタルの無料版ですが、朝日新聞の本紙の記事にはもう少し付け加えられた部分があるので、それを書き写しておきます。
 
 
また、横断歩道で歩行者が待っていても停止しなかったり、赤信号を無視したりする車は、高級車ほど多い傾向も公道の観察から浮かんだ。研究チームは「(お金や地位など)社会生活のための資源が増え、他人に頼らないで済むようになるほど、自己中心的な社会観が形作られる可能性がある」と指摘している。
 
 
要するにお金持ちで、高学歴で、社会的地位の高い人ほど、反倫理的あるいは利己的なふるまいをするという研究結果です。
言い換えれば、悪いやつほど出世するということです。
このことは多くの人が実感するのではないでしょうか。
そしてこれは、私がこのブログで再三主張していることでもあります。
たとえば次のエントリーなどがその代表的なものです。
 
「悪人は善人を駆逐する」
 
権威ある学者なども当然「勝ち組」に入りますから、一般の人よりも反倫理的なふるまいをしていることになります。そして、そういう人が善や悪や正義や利己主義について考察して倫理学をつくっているわけですから、その倫理学がまったくデタラメになるのは当然です。アリストテレスにしてもカントにしてもサンデル教授にしても、みな同じです。私はそれを「天動説的倫理学」と呼んでいます。自分が悪い人間だということに気づかない人が善悪や正義を論じるなど、茶番でしかありません。
 
私はまったく浅学非才の人間ですが、自分の中に悪や反倫理的傾向や利己的傾向があることを知った上でものごとを考えていますから、少なくともその点に関してはどんな高名な学者よりも優っています。
 
 
ただ、この研究はたいへん素晴らしいものですが、問題はこの研究をした学者たちも「勝ち組」ですから一般の人よりも反倫理的な傾向を持っているということです。そのために、せっかくの研究を自分たちでぶち壊しています。
つまりこの研究チームは、成功している人たちが反倫理的なのは金持ちになるほど他人に頼らないですむからだという「解釈」をしているのです。この解釈に立つと、今は貧乏な人間も金持ちになれば同じことをするのだ、だから金持ちも貧乏人も同じだ、ということになります。この解釈は金持ちにとってはうれしいでしょう。
もちろん、この解釈は「科学」ではなく、研究チームの人たちの「価値観」です。
 
それはともかく、社会の支配的な地位にある人ほど悪い人間だということは肝に銘じておく必要があります。
文明人は未開人よりも悪く、都会人は田舎者よりも悪く、高学歴者は低学歴者よりも悪く、金持ちは貧乏人よりも悪く、権力者は庶民よりも悪いのです。
そうしたものの見方を私は「地動説的倫理学」と呼んでいます。
 
今の世の中は「天動説的倫理学」に支配されていますから、高学歴者や権力者が一般の人々を「指導」したり、おとなが子どもを「道徳教育」したりして、そのため世の中はむちゃくちゃなことになっています。