最近の政治の動きを見ていると、結局のところ政治を動かしているのは官僚とマスコミだということがよくわかります。現在の政治の焦点は消費税増税ですが、財務省とマスコミが主導しているので、粛々と進んでいきます。世論調査では増税反対のほうが多いのですが、マスコミはほとんどそういう声を伝えません。
その中で小沢一郎氏のグループが抵抗しています。官僚とマスコミの連合体に正面から戦えるのは小沢氏ぐらいのものです。これが小沢氏が検察とマスコミからたたかれる理由でしょう。
 
増税しても、そのお金が正しく使われるなら、国民にとって損にはなりません。しかし、成立した今年度の予算案を見ても、高速道路や整備新幹線の建設など、従来型の公共工事が大幅に復活しているということです。公務員の給与は7.8%引き下げられますが、なぜか2年間の限定です。
ですから、増税よりもむだな支出を削るのが先決だという主張は誠にもっともなことです。しかし、小沢グループの民主党議員が言うのには首をかしげてしまいます。民主党はむだな支出を削ることができなかったからです。増税をやめたら、むだな支出はそのままで税収は増えないということになってしまいます。これではもちろん財政危機が拡大するだけです。
 
なぜむだな支出が削れないかというと、政権は代わっても官僚主導はそのままだからです。ですから、また自民党政権に戻っても、もちろん同じことです。ということで、今は「大阪維新の会」に期待するしかないという人が多くなっていますが、「大阪維新の会」が自民党や民主党よりもうまくやれるという保証はありません。
 
それにしても、「民主党に裏切られた」という声がけっこうあります。「裏切り」という道徳的評価を含む言葉を使うと、そこで思考停止になってしまいますから、政治はいつまでたってもよくなりません。
私は「家庭に道徳を持ち込むな」ということを主張していますが、実は政治の世界にも道徳を持ち込むのはよくありません。道徳は批判や破壊に役立ちますが、建設的なことには役立ちません。
 
たとえば今、多くの人が「なでしこジャパン」はロンドンオリンピックで金メダルを取ってくれるのではないかと期待しています。もし取れなかった場合、たぶんいないとは思いますが、「なでしこジャパンに裏切られた」と考える人が出てくるかもしれません。そういう人は、もっぱら裏切られた怒りや不満をぶちまけます。
本当ならそのとき、「なでしこジャパン」はなぜ負けたのか、なにが足りなかったのか、どうすればそれを克服して次に金メダルを取ることができるかということを考えなければならないのですが、「裏切られた」と考える人は、そういう思考ができません。
 
政治の世界で、「民主党に裏切られた」と考える人も同じです。民主党に対する怒りや不満をぶちまけるだけで、次にどうすればいいかということが出てきません。
 
考えてみれば、革新勢力は長年、「政府自民党はけしからん」といって非難してきましたが、怒りや不満をぶちまけるだけで、なぜ自民党政権は続いているのか、どうすれば政権交代ができるのかというふうに思考することができませんでした。
政権交代があった今もその惰性が続いているようです。政権を非難するだけで、どうすればいいかという思考ができません。
 
こういう状態に陥っているのは、マスコミに大いに責任があると思います。マスコミは官僚主導の実態を覆い隠しているからです。問題は官僚の側にあるのです。
 
ロデオ大会で、自民党の乗り手が何人も荒馬に振り落とされました。そして、次に民主党の乗り手が荒馬に乗りましたが、もうすでに2人振り落とされ、今は3人目になっています。観客は、乗り手がへたくそだと言って非難したり笑ったりしています。しかし、考えてみると、次の乗り手がいません。大阪に若い、勢いのあるやつがいるから、そいつを引っ張ってこようかという話になっていますが、なんの実績もないので、あやうい話です。
こうなると、乗り手をなんとかするのではなく、馬をなんとかすることを考えなければなりません。当たり前のことです。
どうしてこの馬はこんなになってしまったのか、どうすれば乗りこなせるのか、馬の弱点はどこかなどを研究しなければなりません。
もちろん観客の態度もたいせつです。今まで馬が荒い動きをしたとき、観客は翻弄される乗り手を笑ったり批判したりしてきましたが、これからは馬にブーイングを浴びせなければなりません。
 
国民が問題は乗り手ではなく馬にあるのだと気づかないと、これからも外国から「回転ドア」と嘲笑されるような首相の交代劇が続いていくことになります。