2ちゃんねるに危機が迫っています。警察が明らかに2ちゃんねるないしは元管理人の西村博之氏を狙っているのです。いったいどういう罪状になるのかはわかりません。それはこれから警察が考えるのでしょう。
警察が2ちゃんねるを狙っていることは、こんなニュースを見てもわかります。
 
「2ちゃんねる」で客募集、覚醒剤販売 大阪の男ら5人逮捕
2012.5.31 10:34
 九州厚生局麻薬取締部は31日までに、インターネット掲示板「2ちゃんねる」で客を募り、覚醒剤を販売するなどしたとして、覚せい剤取締法違反(営利目的譲渡など)の疑いで無職、城尾学然容疑者(37)=千葉県船橋市駿河台=や、無職、村山拓司容疑者(25)=大阪市平野区瓜破=ら男女計5人を逮捕した。
 福岡地検は、全員を同罪で起訴した。
 関係者によると、城尾被告ら船橋市の3被告は1月6日、覚醒剤約1グラムを宮崎県の男性に3万円で販売、村山被告ら大阪市の2被告は4月11日、営利目的で覚醒剤約3グラムを自宅で所持していた、としている。
 
これが単に覚醒剤販売事件を摘発したというニュースなら、「2ちゃんねる」と書かずに「インターネットの匿名掲示板」と書けばいいわけです。従来ならそうなっていたでしょう。しかし、このニュースでは「2ちゃんねる」という言葉が見出しの頭にきています。
同様のニュースはいくつも報じられていますし、西村氏が2ちゃんねるを譲渡したとされるシンガポールの会社を警視庁がシンガポールの警察に捜査するように依頼したというニュースもありましたし、西村氏の自宅や関係事務所など約10カ所が家宅捜索されたというニュースもありました。
西村氏の自宅などが家宅捜索されたというニュースがあったのは3月です。それからなにも動きがなかったので、めぼしい証拠は得られなかったのかと思っていたら、冒頭に掲げたニュースによって警察はまだ2ちゃんねるを狙っていることがわかりました。
こういうニュースによって2ちゃんねるのイメージダウンをはかっておき、西村氏が逮捕されたとき、逮捕は当然だという世の中の空気をつくりだす狙いと思われます。
 
私自身は、むしろ今まで2ちゃんねるに官憲の手が伸びなかったのを不思議に思っていました。とはいえ、今のタイミングで警察が手を伸ばしてきたのも不思議です。
この不思議を解明するために、過去の出来事から警察の習性について考えてみましょう。
 
1970年代末から1980年代にかけて、戸塚ヨットスクールにおいて生徒が何人も死亡したり行方不明になる事件が起き、戸塚ヨットスクールを非難する声がわき上がりました。しかし、警察はまったく動こうとしませんでした。これも当時は不思議なことでした。私自身は、戸塚ヨットスクールの支援者に石原慎太郎氏など有力者がいたことと、警察には体罰肯定論者が多いことがあるからではないかと推測していました。
しかし、83年にヨットスクールのコーチらが暴走族を捕まえてリンチするという事件を起こし、これをきっかけに警察は一気に戸塚宏校長以下関係者を大量逮捕し、“戸塚ヨットスクールつぶし”を行いました。警察の豹変ぶりに私は唖然としました。
 
暴走族をリンチした事件によって警察が豹変したということは、戸塚ヨットスクール側の弁護人も「意見陳述書」で指摘しています。
 
昭和58526日、戸塚ヨットスクールの可児コーチ外5名が、暴走族に対する傷害不法逮捕罪等で愛知県警察本部の指揮のもと半田警察署に逮捕された。この時をもって嵐とも言うべき一連の捜査が始まった。
(中略)
警察は、延べ1万3千人にのぼる捜査員を動員し、捜査範囲も33都道府県に広げ、事情聴取した参考人や被害者は合計約300人に達し、証拠物件など570点、供述調書や捜査報告書を積みあげると約7mの高さになるほどの大捜査を行ない、最終段階で検察庁は境野コーチを逮捕し、戸塚ヨットスクールを壊滅させ、警察において同年1114日、検察庁において1214日、約半年に渡った一連の戸塚ヨットスクール関係事件の捜査を終えた。暑い夏を経て捜査の嵐は去った。
 
なぜ暴走族リンチ事件によって警察は豹変したのか。その理由は容易に想像がつきます。
暴走族の取り締まりは警察の領域です。コーチらが暴走族をリンチしたのは警察の領域を冒す行為と見なされたのです。
 
在特会(在日特権を許さない市民の会)についても、最初は警察はまったく手を出そうとしませんでしたが、ある事件をきっかけに明らかに警察の方針は変わりました。
 
200912月、在特会は京都朝鮮第一初等学校前に押しかけ、朝鮮学校は隣接している公園を不法占拠しているとして抗議し、その際、公園に置いてあった朝礼台を撤去しようとし、スピーカーのコードを切断するなどしました。これについて朝鮮学校側は在特会を威力業務妨害で告訴し、在特会側は朝鮮学校を都市公園法違反であるとして告訴しました。
もし朝礼台などの設置が不法占拠であるなら、その撤去は行政の領域です。在特会は行政の領域を冒したことになります。そのため、警察は在特会にきびしく臨みました。
ウィキペディアの「京都朝鮮学校公園占用抗議事件」の項目から引用します。
 
2010810日、京都府警は在特会の傘下グループ・チーム関西メンバー4人を威力業務妨害容疑などで逮捕し、同会会長・桜井誠宅の家宅捜索もおこなった。827日には、他のメンバー7人についても組織犯罪処罰法違反(組織的威力業務妨害)などの疑いで書類送検した。また、朝鮮学校が無許可で公園を占用していたとして、初級学校の前校長も都市公園法違反容疑で書類送検した。なお、朝鮮学校関係者からは逮捕者は出ていない。
2011421日、京都地裁は西村に対し威力業務妨害で懲役2年・執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。他の3人も執行猶予付の有罪判決。
 
要するに警察は自分たちの領域が冒されたと感じると、きびしい態度で出てくるのです。
となると、今警察が2ちゃんねるにきびしく出てくる理由も推測できます。
 
そもそも2ちゃんねる内の論調は、官僚組織にきわめてつごうのいいものです(主に「ニュー速+」を見ての感想です)。官僚の天下りやむだな公共事業などが2ちゃんねるできびしく非難されることはあまりありません。日教組批判はあっても、文部科学省批判はありません。普天間基地問題で辺野古に新滑走路を建設するという日米合意が批判されることはなく、逆に“沖縄のわがまま”が非難されます。最近の生活保護に関する騒ぎも、支給する行政側よりも受給する側がもっぱら非難されます。
ですから、警察や検察は2ちゃんねるを放置してきたのでしょう。
 
しかし、パチンコは圧倒的に非難されます(競輪、競馬などは非難されません。前回の「ギャンブルの倫理」というエントリーで指摘したように、不当なテラ銭を取るこちらのほうがむしろ非難されるべきなのですが)。パチンコはもちろん警察にとってはきわめて重要な利権です。
これまでは、2ちゃんねる内の論調はあくまで2ちゃんねる内だけのものでした。しかし、在特会がリアルでの活動を拡大し、韓流推し批判を名目にフジテレビや花王を批判するデモが行われるようになりました。つまり、2ちゃんねる内の論調がリアルの世界に進出してきたのです。
となると、次にパチンコを非難するリアルの運動が起きるのではないかと警察が恐れても不思議ではありません。警察が今2ちゃんねるつぶしに動き出した理由はそれではないでしょうか。
検察ではなく警察が動いていることもそれで理解できます。
 
警察や検察が一定の方向性を持って動き出したとき、それを止めるものはありません。
ほんとうならマスコミがその役割を担うべきですが、わが国のマスコミは逆に警察や検察に協力するのが通例です。2ちゃんねるが対象とあればなおさらでしょう。
 
「西村博之逮捕」のニュースを待つしかないのが現状です。