最近ネットを騒がした話題といえば、河本準一さんの母親についての扶養義務違反問題と、大津市の中学校でのイジメ事件ですが、このふたつには共通点があります。
それは、どちらも親子関係に問題のある可能性があるのに、誰もがそのことをスルーしているという点です。
 
河本準一さんが母親に十分な仕送りをしていないというと、親子関係に問題があるのではないかと思うのが普通の発想です。河本さんの場合は、「一人二役」という母親についての本を出したり、オカン話を得意のネタにしていたりという事情がありましたが、それだけで親子関係は良好だとは判断できません。亡くなってもいない母親のことを本に書くというのは、母親に対するアンビバレントな思いがあるからかもしれませんし、最近は母親とほとんど連絡も取っていないということです。家族関係が悪いことを公言する人はまずいませんから、外からはなかなか判断がつきません。
 
実際のところはわかりませんが、もし親子関係がよくないなら、扶養義務違反ということが成り立たなくなり、全部の主張が無意味になってしまいます。しかし、誰もが親子関係は良好だという前提に立って主張しているのが、なんとも奇妙なところです。
 
 
大津市の中2男子生徒が自殺して、イジメが原因ではないかと騒がれている事件も同じです。中学生が自殺したら、その家庭はどうだったのかということを誰でも真っ先に考えるはずです。
もっとも、この場合は自殺した子は学校でイジメを受けていたということで、それも自殺の一因と考えられます。
もちろんあくまで「一因」です。いくら学校でイジメを受けていても、家庭での生活が楽しければ死ぬはずはないからです。
 
ところが、今のところ報道や世の中の反応を見ると、自殺の原因はイジメがすべてであるかのようになっています。
なぜそんなことになるのかと考えてみると、ひとつには犯罪被害者遺族との混同があると思われます。
たとえば通り魔事件などで人が死ぬと、その犯罪被害者遺族にはまったく罪がありませんから、遺族の心情を持ち出して犯罪を非難するということが行われます。今回も同じ図式が当てはめられて、遺族の心情を持ち出してイジメを非難するということが行われているわけです(もちろんこの事件は自殺ですから、自殺した子の遺族にまったく罪がないとはいえません)
 
それともうひとつ、自殺の原因をイジメに特化することで、家庭の問題から目をそらしたいと思う人がたくさんいることも理由だと思います。
つまり、自殺した子の家庭では、子どもがイジメられていることに気づかず、自殺するほど悩んでいることにも気づいていなかったわけですが、こうしたコミュニケーション不全の家庭はいっぱいあるに違いありません。そして、そうした家庭の親は、この問題に光が当たると都合が悪いので、半ば無意識に家庭の問題よりもイジメの問題を重視するのでしょう。
 
もちろんイジメはよくないことですし、学校や教育委員会の対応もひどいものです。しかし、子どもが自殺する家庭はもっとよくないのではないでしょうか。
イジメをなくすこともたいせつですが、親と子のコミュニケーションをよくすることのほうがもっとたいせつです。
イジメをなくすといっても、完全になくすことはできません。むしろイジメはあるという前提で、親子のコミュニケーションをよくすることに力を入れたほうがよい結果になると思われます。
 
また、子どもに十分な収入があるのにその親が生活保護を受けているというケースがあれば、扶養義務を強要して終わりにするのではなく、親子関係に問題はないのか検証し、もしあればその原因を明らかにしていくほうが国のためになります。
家族関係こそが国の基礎をなすものだからです。