大津市の中2男子生徒が自殺し、自殺はイジメが原因であるとして遺族が同級生3人とその保護者と市を相手どって損害賠償を求めた訴訟の第2回口頭弁論が17日、大津地裁でありました。市側はイジメと自殺の因果関係を認め、事実上和解を申し入れたということですが、3人の同級生側はイジメそのものを否定して争うようです。
 
それにしても、この事件の報道がへんです。「イジメ自殺事件」という表現を使っているところがありますが、「イジメによって自殺した」というのは確定した事実ではなく、争点になっていることなのですから、この表現を使うのは問題でしょう。
また、イジメに関してはアンケートに基づく報道が多いのですが、アンケートの内容は伝聞に基づくものが多く、そのままには信用できません。報道も、最初のうちは伝聞と断りを入れていましたが、そのうち伝聞か否かを明らかにすることなく「生徒の話」「関係者の話」を事実であるかのように報道するものがふえてきました。
つまり圧倒的に「ひどいイジメがあった」というイメージがつくられ、それによって事件の本質が隠されてしまっているのです。
 
「事件の本質」とはなにかというと、「子どもの自殺についてもっとも責任を負うべきは自殺した子どもの親である」ということです。
 
この当たり前のことを主張する人がまったくといっていいほど見当たりません。そこで、せめて私がということで、連続してこの事件を取り上げています。
 
私はなにもイジメはなかったとか、イジメと自殺の因果関係がないとか主張しているのではありません。
イジメはあったでしょう。加害生徒の認識としてはただふざけているだけだったかもしれませんが、加害者側の認識は往々にして間違っているものです。
イジメがあった以上、イジメと自殺の因果関係も当然あったと思われます。
 
ただ、それらのことを認めても、自殺した子の親の責任はなくなるものではありません。むしろ親の責任はイジメの加害者側の責任よりも大きいと思われます。
 
この親は、子どもが自殺するまで子どもがイジメにあっているという認識がなかったようです。これがまったく不思議です。イジメられているという認識がなかったとすれば、子どもの様子を見て、どんな認識を持っていたのでしょうか。
 
また、男子生徒は自殺する2日前に家族に「登校したくない」と訴えていたということです。
 
大津いじめ、自殺2日前「登校イヤ」家族に相談
読売新聞 714()914分配信
 
 大津市で昨年10月11日、市立中学2年の男子生徒(当時13歳)がいじめを苦に自殺したとされる問題で、男子生徒が自殺する2日前、加害者とされる同級生3人に会うのを恐れ、「登校したくない」と家族に相談していたことが、関係者の証言でわかった。
  滋賀県警もこの証言を把握、男子生徒が同級生らと顔を合わせる学校に行くのを嫌がり、最終的に死を選んだとの見方を強めている。
  関係者によると、男子生徒が自殺する2日前の同9日の日曜に家族と量販店に出かけた際、同級生らと出会わないか不安げに辺りを見回し、家族に「どういう風にしたら(ずる休みと)わからないように学校を休めるだろうか」と相談したという。
  男子生徒が自宅マンション(14階建て)から飛び降りたのは、祝日の「体育の日」を含む3連休が終わり、4日ぶりの登校となる11日の火曜の午前8時頃だった。
 
 
この報道では、男子生徒が「登校したくない」と言ったことに対して、家族がどう答えたかは書いてありません。しかし、結果的に自殺したことから、子どもの訴えを否定したのでしょう。
 
また、父親は子どもを頭ごなしに怒ったという報道もありました(異常な家庭と異常な学校」というエントリーを参照)
 
父親は17日の口頭弁論のあと、弁護士を通して談話を発表しました。全文を報道したものは見当たりませんでしたが、報道されたものを読む限りでは、自身の反省の言葉はありませんでした。逆に「もしかしたら息子は学校に見殺しにされたのではないか、との気がしてならない」という下りがありましたが、子どもにしてみれば、学校と親の両方から見殺しにされたわけです。
 
私が想像するに、この父親はきわめて他罰的な傾向を持った人なのでしょう。子どもがなにか問題をかかえている様子を示すと、もっぱら子どもを責めたのだと思われます。子どもを頭ごなしに怒ったという報道もあります。そのため子どもも親に相談することができなかったのでしょう。
 
そして、子どもが自殺したあと、学校でイジメられていたということを知ると、自分のことを棚に上げて、すべてをイジメのせいにしたのでしょう。父親は警察に3度被害届けを出しにいって、3度とも断られたということで、このことでもっぱら警察が批判されていますが、警察からしてみれば、「イジメよりも、あんたのそういう態度のせいで自殺したんだよ」という認識だったのではないかと思われます。
大津市の沢村憲次教育長は「自殺の背景には家庭内の出来事などもある」と語っており、自身と父親とのやりとりや、担任と父親とのやりとりの情報などから、父親の他罰的傾向が自殺の大きな原因であるという認識を持っていると想像されます。
 
自殺した子どもの家庭環境がどうだったか、とくに父親と子どもの関係はどうだったかについてはわずかの報道しかなく、今の段階では想像で補うしかありませんが、マスコミが公平な報道を心がければ次第に真実が明らかになるでしょう。
 
いや、マスコミの報道の前に父親みずから、なぜイジメに気づかなかったのか、なぜ子どもに謝罪文を書かせたりしたのか、また、日ごろ子どもとどのような会話をしていたのかなどを自身の口から語る必要があります。
 
ところで、私は沢村教育長や3人の加害生徒と保護者を支持しているわけではまったくありません。
自殺した子どもの父親と、市や加害生徒と保護者らは、互いにみずからの非を棚に上げて相手が悪いと主張して、みにくい争いをしているだけです。
こうしたみにくい人たちの真っ只中で男子生徒は自殺したのです。