橋下徹氏の新党「日本維新の会」が発足しましたが、具体的な形を見てしまうと、夢から覚めたような気分になってしまいます。
そもそもは橋下氏の個人商店のような政党ですが、その橋下氏が次の選挙に出ないとなると、節操もなく寄ってきた現職議員と、公募で集まった一年生議員ばかりの集団となり、国会内でどんな仕事ができるのか疑問です。
いや、維新の会が明確な指針を持っていれば、一年生議員でも働けると思いますが、維新の会がなにをやろうとしているのかよくわかりません。
 
「維新八策」というのが維新の会の基本方針です。
 
最初に、「今の日本、皆さんにリンゴを与えることはできません。リンゴのなる木の土を耕し直します」と書いてありますが、これは完全に小泉純一郎氏が首相に就任して最初の施政方針演説で言った「米百俵の精神」のパクリでしょう。
で、中身を見てみると……中身がありません。本でいえば目次があるだけで本文がありません。
「基本方針」の中に首相公選制、参議院廃止、道州制という文字がありますが、これはいわば入れ物の形を変える話であって、中身を変える話ではありません。また、優先順位もわかりません。維新の会の候補者は、議員になってもなにをやればいいのかわからないでしょう。
 
理念がない、優先順位がわからない、実現が容易でないといったことはすでに批判されています。なぜそうなるのかというと、私が思うに、橋下氏はテレビのトーク番組(「たかじんのそこまで言って委員会」みたいな)で受けそうな政策を羅列しているだけだからです。首相公選制、参議院廃止、道州制というのは、派手だから一般受けしそうです。
 
「維新八策」の「八策」はもちろん坂本龍馬の「船中八策」から取ったものです。
「維新」という言葉も、右翼的イメージがあって普通あまり好まれませんが、今は右翼が受ける時代だからということで使ったのでしょう。しかし、橋下氏は「明治以来の統治機構を変える」ということを言っているのですから、「明治維新」の「維新」という言葉を使うのは矛盾しています。
 
そうした矛盾が「日本維新の会」の英訳に露呈してしまっているというニュースがありました。
 
「維新の会」の英訳に外国人は「???」- ゲンダイネット(20129281000分)
  橋下新党「日本維新の会」が今月12日、政党のロゴを発表したが、そこに書かれていた英語名「JAPAN RESTORATION PARTY」に、外国人から疑問の声が上がっている。
 
 「RESTORATIONと聞いて、英語圏の人がすぐにイメージするのは、英国史における『王政復古』です。RESTORATIONの本来の意味は、復古や復活のこと。橋下新党を『日本復古の会』と読んでしまう外国人も多いのではないか」(英国人記者)
 
 「維新」を広辞苑で引くと、「物事が改まって新しくなること」「政治の体制が一新されること」だが、「明治維新」は天皇親政の“復活”だったことから、「MEIJI RESTORATION」と英訳されている。そこから、日本維新の会も「JAPAN RESTORATION PARTY」と訳したようだが、米国を中心に取材活動をしているジャーナリストの堀田佳男氏も、こう指摘する。
 
 「リストア=修復という言葉の通り、『RESTORATION』だと古いものを元に戻す、というニュアンスになります。明治維新の直訳をそのまま使うのは、あまりいい訳とは言えませんね。まして、これから新しいものを作っていこうという日本維新の会だけに、奇異に感じている外国人は多いと思います」
 
  実は、維新の会にも同様の問い合わせがあるという。事務局の担当者は困惑気味に言う。
 「確かに、英語の解釈では『王政復古』の意味になるのではないか、という声が寄せられています。ただ、この名称は執行部が決めたことですので何とも……」
 
  右傾化が目立つ維新の会は、名が体を表しているように見える。
 
 (日刊ゲンダイ2012925日掲載)
 
ほんとうは「革命」とか「革新」という言葉を使うのが正しいのでしょうが、日本ではそれは左翼のイメージになってしまいます。
私の考えでは、どうせ日本の歴史から取ってくるなら、「大化の改新」の「改新」を使えばいいと思います。
「日本改新の会」あるいは「日本改新党」でいいのではないでしょうか。
 
ともかく、国民が橋下氏や維新の会に期待したのは、なにか政治理念を実現してほしいということではないはずです。
橋下氏が大阪府知事に当選したとき、最初に取り組んだのは、財政非常事態宣言を出して財政再建の道筋をつけることでした。府職員の給料カットや補助金のカットなどを、圧倒的な抵抗勢力と戦いながら実現していったその成果とその姿勢が支持されたのだと思うのです。
国政においても、国家公務員の給料カットはもちろん、財政のむだを省くいわゆる“シロアリ退治”が期待されているのではないかと思います。ですから、最初は既得権益を徹底的に排除して財政再建に集中的に取り組むということを公約にすればいいと思うのです。
民主党は「事業仕分け」をうまくやれませんでしたが、維新の会は「本物の事業仕分け」をするということで、既成政党との違いを明確化することができます。
 
それにしても、自民党新総裁になった安倍晋三氏と比べると、橋下氏は対照的なところがあります。
橋下氏は府知事就任間もないころ、確か府下の自治体の首長とバトルを演じたときだと記憶していますが、最後は半泣きになってしまいました。しかし、そうした姿をさらしてまでもがんばっている橋下氏に支持が集まり、また橋下氏自身、そうした経験を通じてたくましくなっていったと思うのです。
一方、安倍氏は自分の病気を隠し、つねに自分のいい姿ばかりを国民の目に見せていました。
半泣きの無様な姿を見せた橋下氏はたくましくなり、いい姿ばかりを見せていた安倍氏はいつまでもひ弱で、結局ストレスに負けてしまいました。
 
そういう意味では、橋下氏に期待したい気持ちは大いにあります。
識者は理念や政策がだいじだと言いますが、理念や政策よりも人間がだいじだということを改めて思います。