シリーズ「横やり人生相談」です。
日本では結婚した夫婦3組のうち1組が離婚するといわれています。おそらく多くの離婚は、小さな行き違いの積み重ねが大きな亀裂となるという過程をたどるものと思われます。ですから、小さな行き違いを甘く見ないで、正しく対応することがたいせつです。
 
今回の人生相談は、結婚前の同棲中の若いカップルのちょっとした行き違いですが、女性のほうはかなり深刻なダメージを受けています。
 
作った食事が手抜きだと言われました  とうふ 2012105 15:52
 トピを開いて頂きありがとうございます。20代女性です。来年結婚を予定に彼氏と同棲しています。
相談したいのはトピの通り、一昨日に彼氏に食事が手抜きだといわれたことが悲しくショックでした。
 
その日の晩御飯は味噌汁・ごはん・ハンバーグ・コールスローサラダでした。品数は少ないですが、ハンバーグはミンチからつくり、味噌汁もダシからとり、サラダはプロセッサーで刻み、ごはんは彼氏の帰ってくる時間に合わせて炊き立てを出しました。
帰ってきた彼がその食事を食べると「手抜きじゃないか」と言いました。そう言われて私は一瞬「・・・え?」となりました。それに加えて「今日は仕事だったの?」と彼氏にイヤミを言われ、一気に気分が悪くなりました。(私は病気で医師の指示もありパート勤めです。)
私は怒りを抑え「手抜きをしたつもりはないよ?どこが手抜きなのかな?」と聞きましたが、彼氏は「いや、手抜きだし」と吐き捨てるように言いました。
 
もう顔も見たくなくなってしまい、部屋に戻りました。そして昨日彼氏は「何を一人で怒っているんだ。」と言うのです。その発言にもブチっとなり、「私はアンタのために作ったご飯を手抜きって言われたから怒ってるの!それを言われて腹が立ったから部屋に戻ったの!人の気持ちを解れよ!」と怒りました。しかし彼は「手抜きだったからそのまま言っただけじゃないか!」と言うだけ。
 
私のキレ方はおかしいですか?これまでも喧嘩はあり乗り越えてきましたが、なんだか今回はどっと疲れてしまいました・・・。
 
先輩方、どうかご助言お願いします。
 
 
これは読売新聞系の掲示板「発言小町」に載ったものです。こうした相談や質問がトピックとして立てられ、それに誰でもがレスをつけられるという形式です。
このトピックには400余りのレスがつきました。私がざっと読んだ感じでは、7割から8割は彼氏のほうを批判するものですが、やはり手抜きではないか、おかずの品数が足りないのではないか、彼氏にとってはボリュームが足りないのではないかという意見もありました。
 
私の感覚でも、家庭の夕食としては物足りないと思います。ハンバーグのつけあわせが何か書いてないので、おそらくコールスローサラダがつけあわせなのでしょう(ハンバーグだけお皿に載っているなら別ですが)
町の洋食屋ならハンバーグのつけあわせはニンジンとポテト、定食屋なら千切りキャベツというところでしょう。ですから、この食事は、定食屋のハンバーグ定食のつけあわせがコールスローサラダになっているだけです。なんで家庭料理が定食屋と同じなんだよという気がしてしまいます。物足りないだけでなく、栄養バランスもよくありません。
 
このトピ主はこのあと自分で次のようなレスをつけています。
 
トピ主です
()
私はレスの中で「もう一品増やしてみては?」という意見を取り入れてみようと思い、昨日から毎日作った献立をノートに書くことにしました。今思えば食費を二万円以内に収めようと、食事内容をケチっていたことがあります。(もやし・豆腐・大根葉をよく使う)。彼に不満が募るのは当然ですよね…。
 
私の話を少しさせていただきます。
私の母は全く料理をしない人です。私と父は夕食のお金を渡され、コンビニや定食屋で食べてこいという食生活でした。家庭科の調理実習で、包丁が全く使えずお皿もまともに洗えなかった私を、教師は失敗例として皆のまえで取り上げました。
 
大学進学のため一人暮らしを始め、料理も始めてみました。バカでも分かる料理初心者の本を本屋で必死に探し、火傷や切り傷をしながら独学で勉強しました。だから今回の件で、非常に腹が立ったことを理解して頂けると幸いです。
 
 
こういう事情ですから、彼氏が彼女の料理に不満を持つのも当然といえるでしょう。
 
ただ、問題は彼氏の言い方です。「手抜き」という言い方をして、どう手抜きなのかを言いません。
多くの人はこの言い方に反発を覚えて、彼氏を批判するレスをしたものと思われます。
 
「手抜き」という言葉には、相手の心のあり方を道徳的に非難する意味合いがあります。
私が「手抜き」という言葉で思い出すのは、現在野球解説者の江川卓氏のことです。
 
江川卓氏は高校時代に“怪物”と呼ばれたほどの実力派投手でしたが、プロ入りするときにいわゆる「空白の1日」という手法でドラフト破りをして、むりやり巨人に入団しました。このいきさつから読売以外のマスコミは江川投手に圧倒的な反感を持ち、江川投手のデビュー戦となった阪神戦で、阪神のラインバックに逆転スリーランホームランを打たれたときには記者席から「バンザイ」の声が上がったという話があります。
江川投手は実力のわりにはホームランを打たれる傾向がありました。普通は、力のある投手がホームランを打たれたら、「失投」とか「気のゆるみ」とか言われるところですが、江川投手の場合は決まって「手抜き」と言われました。
「気のゆるみ」よりも「手抜き」のほうが非難の色合いが強くなるからでしょう。
 
ですから、彼氏から「手抜き」と言われた彼女がキレてしまったのもある程度理解できます。
いや、彼女がキレたのもよくないですが、それよりも彼氏の言い方のほうが問題でしょう。
 
「手抜き」と言われても、なにをどう直せばいいのかわかりません。それよりは、「おかずの数が少ない」とか「そんなにケチらずに、もっと食事に金をかけろ」とか言ってくれれば、お互いに話し合っていい方向に持っていくことができます。
 
私が思うに、彼氏は実質ハンバーグしかおかずのない食卓を見て、これは自分がないがしろにされているからだと判断して、腹を立てたのでしょう。そのため「手抜き」という言葉で彼女を非難してしまったのです。しかし、それは彼の誤解で、定食みたいな食事が彼女の家では普通のことでした。
ここに2人の行き違いの根本があります。
まったく別の暮らしをしていた2人がいっしょに暮らすようになると、必然的にこうした行き違いが出てきます。
 
こうした行き違いをなくすひとつの方法は、相手の実家に行ったときに、そこでの暮らしぶりをよく観察することです。そうすると、日ごろ不審に思っていた相手の行動が実家では普通の行動だということがわかったりします。
 
もっとも、それでも行き違いは避けられません。
 
そういうときは、相手を道徳的に非難する言葉を極力使わないことです。
 
私はかねてからの持論として、「家庭に道徳を持ち込むな」と言っています。
道徳は相手を非難・攻撃する道具であって、相手と仲よくしたいときには道徳を持ち込んではいけません。
たとえば、私は自民党の安倍晋三総裁を「反省がない」「ストレスに弱い心ではだめだ」と言って道徳的に非難しましたが、これは安倍総裁に退場してほしいからです。安倍総裁に期待しているならこんな言い方はしません。
 
 
相手を道徳的に非難したくなったときは、自分の心に怒りがあるのです。怒りは愛情の対極です。この原理に気づけば、怒りを抑えて愛情を回復することができます。
このことを理解すれば、離婚という事態も大幅に防止できるものと思います。