11月6日、ラオスで開かれたアジア欧州会議において野田首相は、「尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いがなく、解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」と、「尖閣」の固有名詞を挙げて中国に対して反論しました。
それに対して、というわけではないでしょうが、中国の胡錦濤国家主席は8日、中国共産党第18回党大会での政治報告で、中国は新たな段階に向けた積極防衛戦略を実行し、幅広い軍の任務を遂行する能力を高めるべきだと指摘し、海洋資源については「われわれは、海洋資源の開発能力を高め、中国の海洋権益を断固として守り、中国を海洋国家としてつくり上げるべきだ」と述べました。
そしてアメリカではオバマ大統領が再選され、当選が確定した7日のニューヨーク株式市場では金融株とともに防衛関連株が大きく値を下げました。
 
この三つの出来事が指し示すものはなにかというと、日中間軍事衝突の可能性の高まりです。
 
支持率最低の野田政権は、総選挙をやると民主党が惨敗することはわかっています。選挙で負けない方法はなにかと考えると、戦争が起こるか、戦争の危機が高まることです。
戦争に直面すると、国民は本能的に一致団結しようとしますから、政権与党が圧倒的に有利になります。選挙が始まって、いいタイミングで軍事衝突が起こると、民主党勝利の目が出てきます。というか、それ以外に民主党勝利の目はありません。
もちろん野田首相はそのことはわかっています。なにをやってもさえない野田首相ですが、こと尖閣問題になると妙に歯切れがよくなります。自分は尖閣問題を利用するしかないとわかっているからでしょう。
 
ところで、冒頭でアジア欧州会議における野田首相の発言を紹介しましたが、新聞に載っていたのは正確にはこうです。
 
「尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いがなく、解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない。我が国は戦後、一貫して平和国家の歩みを堅持してきた」
 
つまり、最後の「我が国は戦後、一貫して平和国家の歩みを堅持してきた」という部分は余計だし、つながりも悪いと私が判断して削除したのです。
しかし、よく考えてみると、この部分は重要だったかもしれません。というのは、開戦の論理というのは、「わが国は最後まで平和を求めて努力してきたが、相手国がその努力にまったく応えないために、今回やむなく開戦を決意した」というものに決まっているからです。野田首相が我が国は平和国家であるということをわざわざつけ加えたのは、戦争を意識しているからかもしれません。
 
中国においても、政府が日本に強硬な姿勢を示すことは国民の支持を得るためにも重要です。ただ、軍事衝突を望んでいるとまではいえないかもしれません。
それでも、中国人は軍事衝突に対する心理的抵抗がほとんどないだろうということは知っておく必要があります。
 
中国は1962年にインドとの国境問題で大規模な軍事衝突を経験していますし、1969年3月にはソ連と黒竜江の中州にある島の領有権を巡って大規模な軍事衝突を経験し、同年9月には新疆ウイグル自治区でも軍事衝突が起きました。また、1974年、ベトナム戦争末期に、中国は南ベトナム政府が実効支配していた西沙諸島を攻撃して占領し、支配下に置きましたし、1988年にはベトナムの統治下にあった南沙諸島を攻撃して支配下に置きました。つまり中国は国境問題での軍事衝突は何度も経験していますし、島を攻撃して占領することも経験しているのです(あと、朝鮮戦争や中越戦争やチベット侵攻も経験しています)
ですから、日本人は戦後一度も軍事衝突を経験したことがないので、攻撃を決断する心理的なハードルはかなり高いのですが、中国人はぜんぜん違うのです。
 
もっとも、アメリカの存在があるので、中国も軍事行動には出られないだろうと考える人も多いでしょう。野田政権にしても、アメリカの意志に反した行動はできないはずです。
ここで、オバマ大統領の当選が問題になってきます。
 
オバマ政権は今後、軍事費を大幅に削減していく方針です。アメリカの産軍複合体にとってこれは絶対に許せないことです。
ケネディ大統領が暗殺されたのは、ケネディ大統領がベトナムから撤兵しようとしたためだという説があります。ブッシュ大統領が「イラクの大量破壊兵器保有」という捏造をしてまでイラク戦争をしたのも、産軍複合体の利益のためだと考えられます。
産軍複合体は軍事費を削減されないためになんらかの陰謀を巡らす可能性があります。
 
イスラエルが核兵器開発をやめないイランを軍事攻撃することがあるかもしれませんが、これはすでに織り込み済みです。
しかし、尖閣を巡って日中が軍事衝突すれば、これはまったく新しい事態ですから、オバマ政権も戦略を変更せざるをえません。
というか、産軍複合体にとってはこれ以外に手がないといえます。
ということで、産軍複合体が日本と中国を巻き込んで、偶発を装った日中間の軍事衝突を起こす可能性があると思われます。
 
もちろん、以上述べたことはあくまで可能性です。
しかし、「利害関係」を考えれば十分にあり得ることです。
少なくとも尖閣問題を「愛国心」や「正義」で見ているのはまったく愚かなことといわねばなりません。