1216日投票予定の総選挙は、「一票の格差」が違憲状態のまま行われます。そのため最高裁が選挙無効の判決を下すのではないかという声もあります。
しかし、実際のところは最高裁に選挙無効判決を出すような根性はないでしょう。みんなそのことがわかっているので、野田首相は解散をしたのですし、多くの人も解散に賛成しています。
 
「一票の格差」、つまり選挙区定数不均衡が一向に改められないため、政治の世界も歪んだものになっています。たとえば、昔から農業はコメ価格維持や補助金などできわめて厚く保護されてきましたが、これは都市よりも地方の一票の価値が大きいことが大いに影響しています。現在のTPP論議にも影響しているに違いありません。
 
「一票の格差」については多くの人が問題だと考えていますが、あまり注目されていないのが「選挙権の世代間格差」です。
つまり20歳未満に選挙権がないために、若い世代がきわめて不利になっているという問題です。
 
年金制度が若い世代に不利なものになっているのは周知の通りです。これは少子高齢化が進んで、少ない若者世代が多い年寄り世代を支えるという形になってしまっているからですが、この制度を変えようという機運は一向に盛り上がりません。これはやはり20歳以下に選挙権がないということも大きな理由だと思われます。
雇用制度も若い世代に不利になっているのではないでしょうか。フリーター、派遣の若い人が増えています。
財政赤字が増え続けているのも、年寄り世代が若い世代にツケを回すのを止めることができないからです。
教育制度も、中学高校に通う人に選挙権がないので、結局おとなが勝手に決めています。これではまともな教育制度になるわけがありません。
 
選挙権年齢を引き下げるべきだという意見があって、18歳だとか16歳だとか議論されていますが、私自身は選挙権の年齢制限そのものを撤廃するべきだと考えています。つまり0歳児から選挙権を与えるのです。何歳で区切っても、その区切り方に理由はないので、撤廃するのが筋です。
あるいは、20歳未満に選挙権がないのなら、60歳以上にも選挙権がないという制度にするという手はあります。こうすれば少なくとも「世代間格差」はなくなります。
 
 
ところで、どうして選挙権に年齢制限があるのでしょうか。
日本国憲法は、選挙人の資格についてこう規定しています。
 
第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
 
ここには「年齢によって差別すべし」という規定はありません。それでも公職選挙法に選挙権20歳以上、被選挙権は衆院25歳以上、参院30歳以上などとなっています。これはなにを根拠にしているのかと探してみたら、憲法の別のところにこういう規定がありました。
 
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
○2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
○3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
○4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
 
つまり「成年者による普通選挙を保障する」という条文があるので、これを根拠に選挙権に年齢制限を設けているということでしょう。
これがもし「成年男性による普通選挙を保障する」となっていたら、これは明らかに女性差別だということになります。
ですから、「成年者による普通選挙を保障する」は明らかに子ども差別、弱年者差別です。単に「普通選挙を保障する」と書けばいいのです。
そもそも「普通選挙」とは「制限選挙」の反対語ですから、制限があってはいけないのです。「成年者による普通選挙」は形容矛盾です。
 
情けないことに、日本国憲法が子ども差別、弱年者差別を容認しているということになります。憲法改正をする際には、「成年者による」というくだりを削除してほしいものです(それと義務教育規定も削除して、代わりに学習権を設定してほしいものです)
 
しかし、「成年者による普通選挙を保障する」という表現ですから、未成年者に選挙権を与えてはいけないという意味にはなりません。ですから、憲法改正なしに、18歳以上とか16歳以上とかに変えることはできますし、年齢制限を撤廃することもできます。
 
選挙権の年齢制限を撤廃しろという主張はやりすぎだと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
旧憲法下で帝国議会が始まったとき、選挙権があるのは25歳以上の男子で国税15円以上を収めている者と規定され、選挙権があるのは総人口の1.1%でした。それからどんどん有権者人口が増えて、新憲法では女性も有権者になりました。ただ、弱年者だけまだ選挙権がないのです。
 
どんな高齢者になっても選挙権はありますし、知的障害者、精神障害者にも選挙権はあります。弱年者にだけ選挙権がないのは差別というしかありません。
昔は黒人や女性に選挙権がないのは当たり前だと考えられていました。今、弱年者に選挙権がないのは当たり前と考えるのは、それと同じです。
 
 
〈追記〉
憲法に「成年者による普通選挙を保障する」と書いてあるのに、公職選挙法で衆院25歳未満、参院30歳未満の成年者の被選挙権が認められていないのは、どう考えても憲法違反でしょう。公職選挙法は服役中の受刑者の選挙権も認めていませんが、これについては違憲訴訟が起こされています。成年者の被選挙権が認められないことについても違憲訴訟が行われてもいいはずです。