漫画家のさかもと未明さんが飛行機内で赤ん坊が泣き続けるのにキレて、着陸態勢に入っているにもかかわらず席を立って、「飛び降りる!」と出口に向かって通路を走り、またその赤ん坊の母親に向かって、「あなたのお子さんは飛行機に乗せてはいけません。赤ちゃんだからなんでも許されるわけではない」と言ったということで、この言動が当然ながら批判されて騒ぎになっています。
 
「JALクレーム騒動のさかもと未明、新幹線でも同様の騒ぎを起こしていた!?」
 
「子どもの騒音」問題についてはこのブログで何度も取り上げてきました。騒ぐ子どもよりも、それに耐えられないおとなのほうに問題があるのだというのが私の考えで、さかもと未明さんの行動はまさにその典型的な例です。
とはいえ、また同じようなことを書くのも芸のない話なので、今回はまったく違う角度から書いてみたいと思います。
 
さかもと未明さんの行動で思い出すのが、元田中角栄秘書で政治評論家の故・早坂茂三氏のことです。
1995年5月、全日空機に乗った早坂氏は、離陸時に座席のリクライニングを倒したままだったので、スチュワーデスから座席を元に戻すよう注意されたところ、「俺は太ってるからいつもこうしているんだ」などと言って言うことを聞かず、機長が説得に当たってもやはり頑として言うことを聞かず、飛行機はいったんピットに戻り、出発が大幅に遅れたという出来事があり、新聞でも報道されました。私の記憶によれば、機長に対して「俺は全日空の社長と親しいのだ。お前をクビにするのは簡単だ」という意味のことを言ったという報道もありました(これは週刊誌の記事だったかもしれません)
座席が倒れたままだと、万が一のとき後ろの人が脱出しにくいので、離着陸のときなど座席を立てるのは当然のことです。早坂氏の言動は異常というしかありません。
 
とはいえ、機内で異常な行動をとってしまうということはよくあるようです。「機内暴力」や「機内迷惑行為」で検索すると、多くのサイトが引っかかります。
国際的にもその対策の重要性が言われ、2001年には国際民間航空機関(ICAO)の総会で、安全阻害行為を犯罪とする立法モデルが承認され、それを受けてわが国では2004年に航空機内における安全阻害行為などの禁止・処罰規定を定めた「改正航空法」が施行されました。
 
ですから、さかもと未明さんの行動は「機内迷惑行為」としてとらえることもできるわけです。
 
では、どうして機内で異常な行動をする人が多いのでしょうか。
これはひとつには、高い運賃を払っているのだから、自分はそれなりのサービスを受けるべきだという思いがあるからでしょう。
しかし、それよりももっと大きな原因は、飛行機に乗るときに恐怖心があることだと思います。
 
飛行機に乗るときは誰でも事故のことが心配になるはずです。私が生まれて初めて飛行機に乗ったのは、羽田から釧路空港に行くときで、飛行機が小型だったせいか、空港建物から直接機内に行ける通路(ボーディング・ブリッジというそうです)ではなく、タラップで乗る方式でした。タラップを上がるとき、恐怖心から飛行機に乗るのをやめようかと思ったほどでした(連れがいたので、そういうわけにはいきませんでした)
それから数え切れないくらい飛行機に乗っていますが、今でも乗るたびにこれで死ぬかもしれないと思って乗ります。ただ、死ぬ確率はきわめて少なく、旅行に行く価値と天秤にかけて、乗るわけです。
飛行機の事故で死ぬ確率は鉄道や道路の事故で死ぬ確率よりも低いという説もありますが、時間当たりの死ぬ確率はやはり飛行機が圧倒的に高いはずですから、乗るときに恐怖心がそれだけ強くて当然です。世の中には怖いから絶対飛行機に乗らないという人も少なからずいます。
 
こうした恐怖心は人によって違いますが、大なり小なりあるはずです。この恐怖心が人に異常行動を取らせるのでしょう。
中には、恐怖心があるのに自分にはそうした恐怖心はないのだと思い込む人がいます。早い話が強がっている人です。
たとえば早坂茂三氏は、いかにも自分は大物であるという雰囲気を漂わせている人でした。こういう人は、自分が飛行機に乗ることに恐怖心を持っているということが認められないのでしょう。ですから、精一杯強がって、そのためスチュワーデスの指示に従うということもできなくなってしまったのではないかと想像されます。
 
おそらく機内で異常行動を取る人は圧倒的に男性が多いのではないでしょうか。
 さかもと未明さんは女性ですが、女性には珍しく保守的というか右寄りの思想の持ち主です。男性のように強がって生きている面があるのではないでしょうか。
 
人間である以上、弱さがあるのは当たり前です。人間の弱さを認めない思想はろくなものではありません。
 
もちろんさかもと未明さんの今回の行動は、直接的には赤ん坊の泣き声に耐えられなくなったわけで、なぜ耐えられなくなったかというと、さかもとさん自身が幼いころ抑圧されていたからではないかというのが私の考えです。
それに加えて機内であったということが異常行動を増幅させたということだと思います。