シリーズ「横やり人生相談」です。今回は、婚約者の異様な行動に困惑する女性からの相談です。
つきあって親密な関係になると、それまで見えなかったものが見えてきます。これは、礼儀などがはがれ落ちたことで現れるものですから、その人のより真実に近い姿ということになります。
しかし、完全な真実の姿とも限りません。それもまたつくられたものである可能性があるからです。
 
一人でいることを異様に嫌がる彼氏  邦子 20121116 11:58
 彼氏(29歳)私(30歳)で、2年前から結婚を前提に同棲を始めました。
私にはある目標があり、結婚は待ってもらっています。あと半年はかかりそうです。
 
この彼氏なのですが、一人でいることを異様に嫌がります。
普段は仕事ですが、帰宅してから少しでも私の姿が見えないと「邦子どこ?」と探し回ります。
お風呂に入っていてもわざわざ見に来て、私がいるのを確かめます。トイレもノックをして確かめます。
私が仕事で家を空けるのも辛そうです。夕飯の用意や家事云々の問題ではなさそうで、とにかく私の存在が家にいないと安心しないようです。
 
最初は子供のようで可愛いと思っていましたが、私の生活に支障が出るようになってきました。
例えば、私の仕事で2ヶ月海外に行かないといけないことがあったのですが「邦子は僕を家に一人で置いても全然悲しくないんだね」「邦子がよければ行ったら良いけど、僕は辛い」と毎日のように言われ続け、結局このプロジェクトから降りました。
幸い、私の仕事は専門技術が必要な分野なので、かろうじて今も会社に置いてもらえていますが・・・
 
家では常に私の頭皮の臭いを嗅いでいるか、私の足を触ったりにおいだりしています。
この彼氏の癖が本当に嫌で、最初は「やめて!」と私が怒ると、彼氏はキレて口をきいてくれなくなるので、最近は諦めて放っています。私の頭皮と足の臭いを嗅ぐと落ち着くのだそうです。
家にいる時は四六時中、休みの日はそれこそ「常に」のレベルです。
ちなみに、人前に出るとむしろ冷たい態度を取ります。家では正反対です。
 
結婚するために全てを受け入れなければと思ってましたが、最近は不安になってきました。
結婚を待ってもらっている理由である「目標」も危うくなってきました。
 
どうすればもう少し自立してくれるでしょうか。
家計は2:1で彼が多く負担しています。食事家事は私負担です。
 
恋人関係になると、男女を問わず、赤ちゃん言葉になって相手に甘えるというケースは少なくありませんが、そのこと自体は大した問題ではありません。子ども時代に十分に親に甘えられなかったということも想像できますが、恋人関係の中で足りなかったものを補えばいいわけです。それができることが恋人関係や夫婦関係のいいところだとも言えます。
 
この相談の場合も、相手の男性は幼児返りしているように見えます。だから、相談者も「最初は子供のようで可愛いと思っていました」と書いています。
しかし、度がすぎているようです。いや、単に度がすぎているだけではありません。「束縛」という問題が加わっています。
 
「甘える」というのは、子どもが母親にする態度です。「束縛」というのは、上の立場から支配しようとすることですから、両者は異質のことと言えます。
この相談のケースでは、「甘える」よりもむしろ「束縛」のほうが主体だと思われますが、異質のものが混在しているのでややこしいことになっています。
 
この相談は「発言小町」という掲示板からの引用です。
これに対するレスは、そんな気持ちの悪い人とは別れなさいというものが圧倒的です。この男性はストーカーになるタイプですという指摘もあります。
ただ、これを「甘え」と解釈した人からはこんなレスもあります。
 
うちも同棲当初はべたべたひっついたりひっつかれたりしていました。
けど5年くらいたったころから、少しずつ適切な距離が開き始めました。
なのでトピ主さんところも大丈夫だと思うけど…。たぶん…。
 
ともかく、これが人生相談だとすれば、別れなさいというのが回答であることは間違いないでしょう。とくにこの男性は、束縛のあまり女性の海外行きを妨害し、女性の会社での立場を悪くしています。あまりに自己中心的で、女性の幸せを考えていないことは明らかです。
 
ただ、この男性はどうしてこのような不可解な行動をするのかということが気になります。できれば、それを理解した上で対処したいものです。
この相談者(トピ主)はそのあとも書き込みをしていて、そこに有力な手がかりがありました。
 
母親との関係を指摘してくださっている方がいらっしゃいましたが、私の目から見ると、彼と母親との関係は良くもなく悪くもなく普通のものであると思います。
 
ただ気になることが2つあります。
一つは彼の弟です。彼の弟は2つ違いで今年27歳なのですが、私が彼の実家に挨拶に行くと、必ずと言って良いほど母親の後ろをついて回っています。
たまに母親に抱きついたりするので、母親が露骨に嫌がっているのを何度も見かけました。
当初、ふざけあっているのかと微笑ましく見ていたのですが、その回数の多さと母親の露骨な嫌がり方、嫌がられた後の弟の反応(部屋に閉じ籠もります)に疑問を覚えるようになりました。
 
二つ目は、彼と父親との関係です。
彼は私のパソコンやメールアドレス、ネット口座などを管理していますが、全く同じことを彼は自分の父親からされており、それをとても嫌がっています。
彼がお金をおろすとすぐに父親から「何を買った?」と電話がかかってきます。
 
しかしこの2点以外は、まるで絵に描いたような、大変仲の良い一家です。
私のことも非常に大事にしてくれているので感謝しています。
 
これを読むと、かなりわかってきます。弟の行動は婚約者の行動と基本的に同じと思われます。
27歳にもなっているのに、必ずといっていいほど母親のあとをついて回り、たまに抱きついて嫌がられているというのは、かなり異様です。
なぜこのような行動パターンが形成され、持続しているのでしょうか。
 
普通は、そんな大きな息子に抱きつかれると母親は拒絶します。そして、母親から何度か拒絶されたら、もう抱きつくのはやめます。
ですから、この母親は最初のうちは拒絶しないのでしょう。「当初、ふざけあっているのかと微笑ましく見ていた」という記述からもそう判断できます。ところが、ある一線を越えると拒絶するのです。
これは息子にしてみれば、母親に甘えようとしたら、甘えさせてくれそうになるのだが、結局は甘えさせてくれないということになります。蛇の生殺しというか、蒲焼きの匂いだけかがされて蒲焼きは食べさせてくれないみたいなものです。
おそらく息子が小さいときから母親はこうした行動をとっていたのでしょう。そのためこの兄弟は「今度こそ甘えさせてくれるのではないか」という期待を抱いては裏切られるということの繰り返しで、甘え欲求が満たされたことがなかったのでしょう。
そして、弟は今も母親に対して同じ行動をとっているが、兄は婚約者という新しい甘えの対象を見出したというわけです。
 
なぜ母親はこうした行動をするかというと、ひとつには自分も母親に甘えさせてもらえなかったということがあるのでしょう。そして、もうひとつには、夫婦関係がうまくいっていなくて、子どもが自立してしまうと孤独になるので、子どもを自立させないための“戦略”なのでしょう。
そして、父親も子どもを自立させないために「束縛」という単純な“戦略”を採用しているというわけです。
 
夫婦間にふれあいがないと、その代償として親と子のふれあいが密になります。そして、このふれあいはしばしば子どもの自立を阻むことになります。
 
こういうややこしい家庭で育ったために、この婚約者は女性に甘えつつ束縛するという行動をとるものと思われます。
 
もし相談者の女性がひじょうに愛情深い人であれば、このややこしい婚約者を十分に甘えさせ、束縛してきたらやんわりとたしなめるというやり方で、しだいに婚約者をまともにしていくということも可能ですが、この女性はまったくそういう人ではなく、自立していない点では婚約者と同じようなレベルと思われ、そのために婚約者に束縛されてしまっています。
ですから、この女性にアドバイスするとすれば、とにかく別れなさいというしかないでしょう。
 
 
さて、私としては、婚約者や配偶者に不可解なところがあるときは、たいてい実家を見れば理解できるはずだということを教訓にしてこの記事を終わらせるつもりだったのですが、実はこのあと相談者が婚約者と別れようとしたら、婚約者はストーカーと化して、双方の家族まで巻き込んで、まるでホラー小説のような展開になっていきます。むしろこちらのほうが問題が大きいので、収まりが悪くなってしまいました。
相談者はあまりにも自立心がなく、そうすると相談者の家族にも問題があるのかと想像されますが、ただその証拠になるようなことはなにもありません。
 
このあとの展開は、レスを省いた「トピ主のみ」を見てもわかります。